100円均一ショップの市場規模はこの10年で1.5倍、右肩上がりとなっています(帝国データバンク調べ)。
店舗数も同じく増加中で、都市部から地方まで全国どこでも同じ物が買えるというインフラのような形になってきています。
100均がますます成長し、進化を続ける秘密を取材しました。
■今後の勝負は「より近い所にある100均売り場」か
100均の最大手、今年50周年を迎え、店舗数では業界の約半分を占める『大創産業』。
2021年、東京に300円台の商品を中心とした新たなコンセプトの店を展開。
ダイソーとは違うおしゃれな店構えで、4月には大阪と京都でのオープンが決まっています。
大創産業 広報課 後藤晃一さん:
「品揃えの幅や、商品アイテムの質の幅を上げて、より良い提案ができるということで新業態を立ち上げました。色合い等テイストみたいなものも統一感を持って商品展開しているので、お客様自身が生活環境をコーディネートして頂けるような商品構成になっています」
一方、業界で最後発と言われているのが大阪発祥の『ワッツ』。
ワッツ 平岡史生社長:
「(面積が)小さな店なのが一番ワッツらしいところ。全商品を一つの店舗に全部入れるってわけにもいかないですね。そうすると、店によって品揃えを変えていかなきゃいけない」
店舗それぞれのニーズを分析して、品揃えを変えたところ、小さい店ほど売上高が伸びたとのこと。
ただ、気になっていたのが、おしゃれとはかけはなれた“昭和っぽさ”でした。
平岡社長:
「店を綺麗にして売上高が基本的には伸びてます。平均値としては6%ぐらい伸びるかな」
実際に、リニューアルした『ワッツ エル守口店』に行くと…。
ワッツ 松野貴司さん:
「改装によって商品のデザイン性を大きく意識して変えまして。形がこだわったデザインがある商品などが大きく増えました」
若い女性も来るようになり、客層を広げることに成功。
そして、駅から近い店舗では、文具を多く取り揃えています。
トレンド専門誌の編集者は、こうした工夫で100均業界がますます成長するとみています。
日経クロストレンド 佐々木淳之副編集長:
「店舗数が、今後は多分すごいことになっていくと思っていて。イオンがキャンドゥを傘下にいれたことが大きな流れだと思うんですけれども、セブンイレブンがダイソーの売り場を作ったとか。より消費者の近いところに100均売り場を出していくっていうところが今後の勝負にはなってくると思います」
■SNS発信を見据えて商品作りに“含み”
店に並ぶ収納用品のラベルを見ると、あちこちにあるのが『イノマタ化学』という文字。
最近は、インテリアに合う淡い色のバスケットを多く出しているほか、2021年6月に発売した「マグネットスイングケース」は、既に200万個販売し生産が追い付かなくなることも。
さらに、およそ700万個販売し大ヒットしたのが、「薬味チューブホルダー」です。
イノマタ化学 営業部 森本一成係長:
「冷蔵庫のポケットですね。中に、色んな食材が入っていると思うんですが、ポケットのサイドにひっかけていただくと」
元々は、バスケットタイプのものが中心でしたが、今はよりデッドスペースを活用するものが売れるそうです。
森本係長:
「最近でいうとこの入れ物、実は卵のパックとかがちょうどいいサイズになっています」
取っ手もマスキングテープがぴったり貼れるサイズですが、あえて表記していないとのこと…。
森本係長:
「SNSの時代で、買った方が『発見』っていうものを発信してくれるんです。そういったところも考えて商品作りはしていますね」
■ニーズを丹念にリサーチ…「商品の精度良くなり売れるように」
さらに、100均の商品の中には、「みん100」と書かれているものも。
京都市下京区の会社『みん100』では、インターネット上のサイトで、こんな100均グッズがあったらいいなというアイデアを募集し、その中から厳選して商品化の橋渡しをしています。
みん100 吉見友絵さん:
「一番最近の新商品はベビーカーの車輪カバーです。お散歩に行った後とかに車輪がドロドロに汚れてしまって。それを例えば車のトランクに乗せる時にクルマが汚れないように」
ほかにも、蛇口に手の届かない子供向けに作られた「蛇口延長ガイド」など、当事者だからこそ出てくるアイデア商品がたくさん。
今開発を進めているのは、卵焼き器の蓋とのこと。
吉見さん:
「この投稿者の方は、卵焼きだけじゃなくて、ちょっとしたものも焼くけど、蒸らしをするのに蓋がないし、あるにはあるけど、高いと」
そこで、通常捨てられる間伐材や端材のヒノキを加工して、商品を作っているというメーカー『スバル』が今回試作した、卵焼き器の蓋が…。
スバル 青木孝司商品開発部長:
「送料だけでも結構お金がかかってきますから、できるだけ“かさ”のかからないように工夫したいなと。こういうネジでお客さんが買ってからはめていただいたら、どうかなと」
みん100 吉見さん:
「このちょっとした送料っていうのは、やっぱり100円っていう値段で収める中で、すごく重要なところですね」
今回は、落とし蓋か上から覆うものにするか「みん100」でアンケートをとり、作る目的を絞ることに。
ほかにも、横幅が広くなると火があたってしまう恐れもあるため、細かい幅の調整など、考えることはたくさん。
商品化されると、共同開発第11弾となります。
スバル 青木部長:
「やはり、欲しいという声が来ているので、出せばある程度の数は売れます。それプラス、アンケート的なことをやると、さらによく売れるものに作っていけるということなので、精度が良いものが仕上がっていると思いますね」
成長し続ける100均市場。
今後は、どんなニーズをくみ取った商品ができるのでしょうか?
(関西テレビ「報道ランナー」2022年3月29日放送)