「ジェンダーギャップの解消」を市役所と地元企業などが一緒になって、取り組んでいる地域がある。
古い地域社会にありがちな男社会のなかで、自分達の「当たり前」を見直している男性経営者に話を聞いた。
兵庫県北部にある人口約8万人の地方都市・豊岡市。
鞄のまち豊岡市最大の鞄メーカー「由利」の由利昇三郎社長(57)は、「役職につくのは男性」という刷り込みが自分にもあったと振り返る。
~ザ・ドキュメント「女性がす~っと消える街」 ザ・ドキュメント | 関西テレビ放送 カンテレ (ktv.jp)~
「由利」は、200人の従業員のうち76%が女性という会社にもかかわらず、管理職のほとんどは男性だった。
由利社長はこう語る。
「男性社会・縦社会が僕にも脈々とあったと思う。男性が遅くまで仕事、女性が食事の用意、昔の日本のそういう部分があった。僕らが会社に入ったバブルの頃は、“24時間働けますか”の世界だった…」
10代で豊岡市を出て行った女性は、なぜ男性の半分ほどしか帰ってこないのか。
豊岡市は「ジェンダーギャップが原因」と考え、「ジェンダーギャップ対策室」を設置、職場や地域で研修を重ねている。
ジェンダーギャップ対策室が企画した経営者向けセミナーでは、講師がこんな話も。
「女性は120%できないと『できます』と言わない特性がある。ある企業は女性に管理職を打診するときには、三回は打診すると言っている」
由利社長はセミナーを受けたあと、率直にこんな話をしてくれた。
「女性はキャリアアップしたくないのかなっていうふうに思い込んでいた節がある」
でも、今は考え方を変えているという。
「この部署を回している人は男性なのか女性なのかをフラットに見ると、実際には女性の方が仕切っている。なのに、役職のポジションすらない。そういう部分が見えてきた」
この7月の人事異動は、それぞれの役割を明確にし、新たにポジションも増やしたという。
セミナーで聞いた「3回の打診」。
由利社長は、今回、それを体験したという。
これまで主任になることを、“責任が重くなる不安”から断っていた女性が引き受けたのだ。
「女の人は3回いわんと役職受けへんって。それで、受けへんかった子に 3回言ったら受けたんです。嘘みたいな本当の話」と笑う。
由利社長は、早くから働き方改革を積極的に進めてきた。
会社は午後6時半に施錠する徹底ぶりだ。
どうしても残業が必要な場合は部長の承認を経て、朝に残業してもらう。
そして今、この「働き方改革」に、「ジェンダーギャップの解消」が加わった。
「根本的に働くことの改革を進めていたら、中小企業にとって苦しい。でも、それをやらなければ人が集まらない。それに耐える企業にならなければいけない。僕らは、あなたの企業は生き残る企業ですか、残ってはダメな企業なんですかというのをふるいにかけられている気がする。いま、企業が残っていくために、良い人材を確保するために、それは最低限やらないといけないマストに変わってきている」
地方都市の中小企業が生き残りをかけて取り組みはじめている「ジェンダーギャップの解消」。数年後に、経営者のその意識の差が、見える形で現れるかもしれない。
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