「数年前から住職に法要をしてもらっている」と聞いた東大阪市の僧侶。しかし、その住職は「なりすましの住職」でした。
関西テレビでは、僧侶が、なりすました男性を問い詰める動画を入手しました。
■「『住職』と名乗り葬儀や法要をしていた」“なりすまし被害”の寺
【西方寺 責任役員・僧侶 井尻雄二郎さん】「『自分が住職だ』あるいは『西方寺の関係者だ』と名乗り、葬儀や法要をしていた」
こう話すのは、“住職のなりすまし”被害を受けたと訴える東大阪市にある「西方寺」僧侶。井尻雄二郎さん(62)。
ことの発端は去年11月、井尻さんが門徒から聞いた話でした。
【西方寺 責任役員・僧侶 井尻雄二郎さん】「(門徒が)『数年前から法要をしていただいている』ということ。『西方寺の住職だと言っておられたから私たちは信じた』と」
井尻さんが門徒に「その方は住職ではない」と伝えたところ、後日「その人が通夜の読経をするから立ち会ってほしい」と依頼が。
当日、井尻さんが目にしたのは法衣を着て現れた男性。あたかも「西方寺の住職」として読経しようとしていたのです。
■「おじいさんの遺言」なりすました男性が主張
【西方寺 責任役員・僧侶 井尻雄二郎さん】「門徒さんだましたらダメです。悪いと思っているんだったら謝りなさい、まず」
【住職になりすました男性】「私が悪いだけです。説明しなかった」
【西方寺 責任役員・僧侶 井尻雄二郎さん】「きちんと謝罪しなさい。あなたが住職や副住職になった経過も、僧籍を西方寺になった形跡も一切ありません。今後一切、西方寺の名前を使わないでください」
【住職になりすました男性】「おじいさんの遺言なんです」
【西方寺 責任役員・僧侶 井尻雄二郎さん】「遺言なんてありません。関係ない人が何で寺の名前使うんですか。そして、お布施をいただいたり、法要したり、法名付けたり、門徒さんに申し訳ないと思いませんか」
遺言だったと言い張る男性は、なんと別の寺の僧侶だったのです。
男性は父が西方寺の僧侶で、12年前に父が亡くなった後は門徒を引継ぎ、法要をしていたなどと説明。
しかし、門徒の名簿は勝手に引き継いだもので、寺の電話番号として男性の自宅の番号を書いたカレンダーを配っていました。寺によると、こうした“なりすまし”は10年以上前から続いてきたとみられることが分かりました。
■約1億円の損害賠償求め寺が提訴
関西テレビは男性への取材を試みましたが、今のところ話を聞くことはできていません。
お布施は本来、寺に入るもので、男性側の利益が寺の損害にあたると主張し、西方寺はことし9月、男性側に損害賠償を求め大阪地裁に提訴。
訴状によると、10年以上の「なりすまし行為」などへの請求額は約1億円に上ります。
27日に行われた1回目の弁論で、男性側は請求を棄却するよう求めたということです。
【西方寺 責任役員・僧侶 井尻雄二郎さん】「僧侶として、これが正しいことなのか、もう一度自問自答してほしい」
■「檀家の奪い合いみたいな側面もあるかもしれない」
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「仏教の世界も、檀家さんがどんどん高齢化していったり、今『墓じまい』などもあります。そうすると檀家さんが先細る中で、お坊さんがある種生き残りをかけた檀家の奪い合いみたいな側面も、もしかしたらあるんじゃないかと思います」
今回のなりすましに関して、損害賠償の請求額は約1億円ということです。
【菊地幸夫弁護士】「なりすまし自体は、その場で認めている。裁判で認めるかどうかは分からないですけど。問題は請求額。お布施とか領収書を出さないですよね。そうするとどうやって裁判所に立証していくのか。少し難しいところなのかなと思いますね」
宗教活動で得た収入というのは税金がかからないからこそ悪質ということも言えそうです。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「お布施に関して言うと、確定申告をするわけではないので、被害総額の算定が非常に難しい。菊地弁護士が言ったように、裁判での認定も難しいことになりますね」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年11月28日放送)