政治資金問題をめぐり、議員80人以上の処分を検討している自民党。安倍派の幹部に加え、政界の重鎮、二階元幹事長に対しても、重い処分を行う案が浮上しています。
パーティー収入の一部がキックバックされ政治資金収支報告書に記載されていなかった問題については、いつどのようにして始まり、金が何に使われてきたのか、いまだに経緯が分かっていません。
■二階氏に「重い処分」行う案が浮上
自民党内では安倍派と二階派で不記載があった80人以上の議員全てを処分の対象とする案が検討されています。自民党幹部は、塩谷元文部科学大臣や高木前国対委員長などの安倍派の幹部を念頭に、「責任ある幹部は重い処分になる」と明言。選挙で公認しない、あるいはそれ以上の処分を行う案などで調整が続いています。
また、二階派の会長で不記載の額が大きかった二階元幹事長に対しても、重い処分を行う案が浮上しています。ただ、自民党の要である幹事長を長く務めていたことから、重い処分には否定的な意見があるほか、「処分前に自ら出処進退を申し出てもらうべきだ」との声もあがっていて、慎重に対応を検討しています。
これに対し、野党は…
【立憲民主党 岡田克也幹事長】「事実解明が全く不十分なまま(政倫審が)終わってしまった。事実が明らかでない中でどうやって処分するのか、説得力ある処分ができるのか、岸田さんに問いたい」
■野党は「証人喚問」要求
また野党は、塩谷元文科大臣など安倍派の幹部5人と、一連の裏金事件で国会議員として唯一逮捕され起訴された池田佳隆被告の6人の証人喚問を正式に求めることで一致しました。
国会の証人喚問は、うその証言をした場合、偽証罪に問われる可能性があり、立憲民主党の安住国対委員長は「偽証が罰せられる証人喚問を改めて行わないと真相解明ができないと判断した」と述べました。
自民党の政治資金問題、どのような処分が考えられるのでしょうか。自民党の規約では、処分は8段階あります。重いものから、除名、離党勧告、党員資格の停止などです。2021年に新型コロナの緊急事態宣言中に、深夜まで東京・銀座のクラブに滞在していた議員3人に離党勧告の処分が下されました。
■二階氏に関するリーク 「情報戦」なのでしっかり見ていく必要が
関西テレビ「newsランナー」コメンテーターのジャーナリスト・鈴木哲夫さんに聞きました。 注目されるのは、二階元幹事長に対する処分ですが。
【鈴木哲夫さん】「気を付けた方がいいのは、二階さんに重い処分が…という情報がきのうあたりから出ていますが、これは見方によってはリーク。わざとその話を流しているという見方もできます。
二階さんほどの人を処分するというのは、賛否があります。それに二階さんは、自分がもし処分されたら何でもブンブンしゃべるぞという話もあったりして、難しい。しかし、こういう話を出すことによって、二階さんが自分から辞職するとかね。そういう流れを作るためにわざとリークしているのではないかという話もあります。情報戦になっているので、しっかり見ていく必要があります」
■岸田氏の「やってる感」 事実関係は明らかになっていない
80人ともいわれる処分については。
【鈴木哲夫さん】「自民党の議員たちを回って取材したところ、3つの次元がある。1つ目は、まず全員をまず処分するということ。ただ、金額などで差がありますので、低めのところで抑える。党の役職停止とか戒告とか、そういうレベルです。これがまず1つ目」
【鈴木哲夫さん】「2番目は、監督責任があったり、ベテランだったり、事務総長だったり、そういう人たちも対象にいるわけですね。この人たちについては、『選挙で非公認』あたりがどうなの、という話が出ていました。これは、党籍が残るんです。自民党籍は残るが、次の選挙では公認しないということです」
【鈴木哲夫さん】 「3番目は、岸田さん自身が自分を処分するんではないかということです。岸田派の中で、元会計責任者が略式起訴されましたので。岸田さんは、政倫審に出ろと言ってみたり、派閥解散と言ったりしてきた。そして今回は、歴代初めて、選挙非公認の総裁ということになるのか、ということになります。そんなことで、言葉は悪いですが、『やってる感を見せるんじゃないか』というような話は出ていました。ただ、事実関係は何も明らかになっていません。何に使ったかも分からないのに処分するなんておかしな話で、そっちが先でしょう。処分したからと言って、すごいことしたな、と見ないで、事実関係が分かるまで、私たちはウォッチしなければならないなと思います」
■森元首相の証人喚問は「かなり難しいと思います」
また野党は、安倍派の会長を長く務めていた森元首相の証人喚問も要求も検討しているということです。証人喚問を要求するかどうかは、自民党による森元総理の聴取結果を聞いてからになるということですが。
【鈴木哲夫さん】「僕はかなり難しいと思います。自民党は出さないと思います。自民党の中で、事情を聞くということはあるかもしれませんが。野党も、一気に証人喚問を求めて『やらない』となれば、それで終わってしまうので、じわじわと『どうぞ、自民党がやるならやってください』という風に言っています。この問題を長引かせるのは野党にとってはプラスなので。だから森さんに関しては、もうちょっと後になるのではないでしょうか」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月20日放送)