大阪の入管職員から暴行を受けたとしてペルー人の男性が国に賠償を求めた裁判。
きょう16日、大阪地裁は職員の行動の一部について違法性を認め国に11万円の賠償を命じました。
■在留期限が切れ8年前に入管に収容 職員に「暴行受け骨折」国に220万円の賠償求める
ペルー国籍で日系3世のブルゴス・フジイさん(当時44歳)。
1991年に来日しましたが在留期限が切れ、8年前、大阪出入国在留管理局に収容されました。
フジイさんはそこで職員から暴行を受け骨折したなどとして国におよそ220万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。
訴えによると、フジイさんは、食事に不満を訴えたことがきっかけで保護室で隔離されました。
■動画には「後ろ手に手錠をかけられ職員に5人がかりで押さえつけられる」様子が
当時の入管での様子を記録した動画には、床に横たわるフジイさんを押さえつける5人の職員の姿や、フジイさんが手を後ろに回され手錠をかけられている様子が残っていました。
入管での手錠の使用は、逃走や自殺を防ぐなどのやむを得ない場合に認められていますが、前でかけるのが原則です。
【職員】「うるさい静かにしろ」
【フジイさん】「叩いて痛い、おまえ」
【職員】「言うことを聞きなさい。従うのか従わないのかどっちだ!」
フジイさんは、トイレに行くこともできず、「後ろ手錠」のまま14時間以上放置され、職員に押さえつけられた時に左腕を骨折するなどのけがをしたと訴えました。
【フジイさん(2020年)】「虐待をしないでください!外国人に動物みたいな扱いをしないでください」
一方、国側は、「暴れるのを止めるため、必要最小限の制圧行為だった」として訴えを退けるよう求め、職員の行動の違法性が争点となっていました。
ただ、フジイさんは裁判の行方を見届けることなく、2年前にがんで亡くなりました。
■大阪地裁は「8時間後は静かにしていて手錠の継続は組織的に判断せず違法」国に賠償命じるも…
遺族が裁判を引き継ぎ、迎えたきょう16日の判決。
大阪地裁は、後ろ手錠について「フジイさんが大声で叫ぶなど職員に従わないこともあり合理的判断」としたうえで、「8時間たった後は、静かにしていて手錠の継続は組織的に判断されておらず違法」と指摘。
国に11万円の賠償を命じました。 一方で、けがについては、職員が負わせた証拠がないと判断しました。
■原告側代理人弁護士「『虐待しないでください』判決は的確に答えたか疑問」
【原告の代理人弁護士】「一部勝訴なんですけれども果たしてこの判決でブルゴス(フジイ)さんの遺言にもなってしまいました、『虐待しないでください。暴力をしないでください。動物みたいな扱いをしないでください』ということに、判決が的確に答えたのかは、本当に疑問に思っています」
大阪入管は「判決内容を精査し、上級庁などと今後の対応を協議する」とコメントしています。