卵も小麦も使わない『アレルギー対応スイーツ』 自動販売機が大阪駅前に アレルギーの子供も「何でも選んでいいよ」“母の愛”がきっかけ 2024年10月06日
食物アレルギーをもつ人でも利用できる「自動販売機」が、大阪・梅田に誕生しました。
母の思いが詰まったアレルギー対応のスイーツ。これまで味わったことのない“選ぶ楽しさ”に、子供たちは…。
■卵や牛乳、小麦粉を使わない“アレルギー対応”スイーツ
9月22日。グランフロント大阪でお披露目されたのは、大きな自動販売機。ケーキやドーナツなど、おいしそうなスイーツが販売されています。
商品は全て、“8大アレルゲン”と呼ばれる食材を使わずに作られています。
8大アレルゲンとは、「卵、牛乳、小麦、そば、落花生、えび、かに、くるみ」のこと。これらの食物アレルギーをもつ人が多く、食べることでじんましんや呼吸不全などの症状を引き起こすおそれがあります。
しかしこの自動販売機の商品は、一般的にスイーツ作りに欠かせない卵や小麦などの食材を全く使っていないのです。
そんな珍しいスイーツの開発に取り組むのは、兵庫県でアレルギー対応の菓子店「Mutter(ムッター)」を経営する、武市圭さんです。
卵、牛乳、えび、ナッツ類が食べられない武市さんの子供たちが安心して外食できる場所を作るために、店を開きました。
【Mutter 武市圭社長】「大きくなっていく上で、何も食べるものがないというのが、(子供自身も)目で見て分かるようになってきた。ケーキを選びにケーキ屋さんに一緒に行っても、本当に端から端まで見て『本当に私、食べるものがないんだね。むなしくなったわ』といわれるので、子供のために『端から端まで何でも選んでいいよ』っていうお店を作ってあげたいから、『作らせて』というところからスタートしました」
8大アレルゲンの食材を使わずとも、変わらぬ味を…。
試行錯誤の末、とうもろこしの粉やメープルシロップなど、代用できるさまざまな食材を研究して、遜色ない味を出しています。
「Mutter」の商品を求めて、店には連日多くの人が訪れます。そんな中、次に取り組んだのが「自動販売機」。
【Mutter 武市圭社長】「(自動販売機の商品は)成分が分からない。これは(アレルゲンとなる材料が)入っているのか、入っていないのか。1回でも飲んだことがないものに関しては一切買わないです」
「夏は暑いのでみんなでアイスを食べようとか、あれ買おう、これ買おうとなるけど、子供たちは途中まではわーっと行くんですけど、よくよく自分たちで見て、『食べられるものないね』『じゃあやめておこう』ってすごくしょんぼりするので、母親としてはとても切ないし、『ごめんね』という気持ちになるので、そういうのを打開していかないとなって」
アレルギーをもつ人は、自動販売機で買える商品が少ない現状。自動販売機を置くことで、さらにアレルギー対応の商品を広めようと考えました。
■教育の未来を担う梅花女子大学の学生たちと共同開発
「こんにちは」「かわいい!すごい」
この日、「Mutter」のカフェを訪れたのは、梅花女子大学のこども教育学科の学生たちです。
武市さんたちは梅花女子大学と産学連携協定を結び、自動販売機を共同開発することに。学生たちと一緒に商品を選び、自動販売機のデザインを考えます。
【Mutter 武市圭社長】「クッキーサンド、それが紅茶(味)。中にキャラメルソースが入っていて。キャラメルは私からしたら乳製品のかたまり。子供たちが『キャラメルってどんな味?カスタードってどんな味?おいしいの?』って聞いてくることが疲れてくるので、『じゃあ作るね』と、作ったのが(アレルギー対応の)キャラメルです」
【梅花女子大学の学生】
「これ見て、めっちゃチョコレートじゃない?すごくいい匂いがする」
「これめっちゃおいしい!」
「パサパサしているのかと思ったら、全然そんなことなくて」
学生たちのほとんどは、保育園などで幼い子供と向き合う仕事に就くことを目指しています。これからを担う学生たちに、アレルギーについて知ってもらうことが目的です。
■大阪・梅田の「グランフロント大阪」に自動販売機を設置
武市さんたちの自動販売機は、グランフロント大阪の3階に設置されることに。
【自動販売機のサイネージ動画より】
「むーたくんは、卵と小麦粉が食べられないみたい」
「安心して!ここのお店は卵も小麦も使ってないよ」
「やった、一緒に食べられるね!」
【Mutter 武市圭社長】「こうやって見ると、かわいいですね」
自動販売機のサイネージには、学生たちが作ったアレルギーについての啓発動画が流れる仕組みになっています。
自動販売機の設置を祝うテープカットが行われました。
【購入に訪れた親子】「どれにしよう。卵と乳と小麦とナッツ類(のアレルギーがある)」
【Mutter 武市圭社長】「全部大丈夫やわ」
早速、たくさんの人が買いに訪れました。
Q.何を買いましたか?
【購入に訪れた親子】
「ショートケーキとクッキーサンドのチョコ味」
「ずっとMutterさんに行きたかったんですけど、遠いので行けなくて、ここで買えるのを知って来ました。すごいありがたいなと思って、ずっとあってほしいなと思ってます」
【購入に訪れた親子】
「なかなかこういうおいしいアレルギー対応のものはないのでうれしいです」
「小さい頃は自分で作ったりもしたけど、やっぱり『おいしくない』って言われて、食べないし。アレルギーの子たちが、こういうものが身近にあったら、お母さんお父さんにとっては力になると思います」
【Mutter 武市圭社長】「自動販売機って一つのアトラクションだと思っていて。今まで選んだことない子たちが自動販売機の前で、見て選ぶことができて、押したら何かが動いている音がして、出てくる。今日来てくれたみんなの顔を見ていると、すごくうれしくなりますし、お子さんやアレルギーの当事者もそうですけど、私のようにアレルギーの子を抱えるお母さんたちは不安なんですよね。それが一緒に分かち合える場所の一つになるのではと思っています」
この自動販売機は2024年12月1日までの期間限定ですが、武市さんたちは今後、設置場所を増やしていきたいと考えています。
※自動販売機で販売されている商品は冷凍販売
(関西テレビ「newsランナー」2024年10月1日放送)