いよいよ19日、兵庫県の斎藤知事に不信任決議案が提出されます。
可決が確実という状況で斎藤知事の判断に注目が集まっています。
■死亡した元局長への聴取では人事権をちらつかせる生々しいやり取り
【兵庫県 斎藤元彦知事】「やはり改善しないといけないところ、改めるべきところはしっかり対応していくことが大事だと思います。それでもなお、私としては県政のあゆみを止めずに進めていくというのが、厳しい状況ではありますけども、私としての責任の果たし方だという思いでいます」
18日も続投に意欲を示した斎藤知事ですが、いよいよあす19日、不信任決議案が提出され、大きな決断を迫られることになります。
ことの発端はことし3月、兵庫県の元西播磨県民局長が斎藤知事のパワハラ疑惑などを告発。
この訴えに対し…
【兵庫県 斎藤元彦知事(ことし3月)】「業務時間中なのに、嘘八百含めて文章作って流すという行為は公務員としては失格」
元局長は、県の公益通報窓口にも通報したものの、県は事実無根として、懲戒処分しました。しかし、その後、疑惑の一部が事実であることが判明。
調査のため百条委員会が設置され、元局長も証人として出席する予定でしたが、ことし7月、死亡しました。
告発者本人から話を聞くことが出来なくなった中で続く百条委員会。
そこでは、知事が行った犯人探しの実態も明らかに。
その中心にいたのは…
【兵庫県 片山安孝副知事(当時)】「副知事が責任をとって退任すべきだと判断した。なんで斎藤知事を支えられなかったのかと、ほんまに私は悔しくてしゃあないですよ」
最側近として知られ、「知事を支えられなかった」として、涙ながらに辞職を表明した片山前副知事でした。
【兵庫県 片山安孝前副知事】「(斎藤知事から)こういうものを入手した。これについて急ぎ調べてくれという趣旨だったと思っていますが」
百条委員会で告発文の作成者を探すよう、知事から指示を受けたと証言した片山前副知事。
さらに、取材で入手した文書には、元局長に行った聴取の生々しいやり取りが残されていました。
【片山副知事(当時)】「どういうことや、説明してくれ」
【元局長】「やってません」
【片山副知事(当時)】「全部お前が分かる話じゃない。誰から聞いたんや、聞いた者全部言え。もう1回聞くけど作ってないんかい」
【元局長】「知りません」
文書の作成を否定する元局長に対し、片山前副知事がとった手法は人事権をちらつかせることでした。
【片山副知事(当時)】「名前が出てきた者は、一斉に嫌疑掛けて調べなしゃあないからな、いろいろメールの中で名前出てきた者は、皆、在職してるということだけ忘れんとってくれよな。まあ、手始めにAあたり危ないと思うんやけどな。10級(最高幹部の部長級)にあげるっていいよったけど、どないしようかいなと。それはかめへんか」
厳しく問い詰める一方で、親交のあった職場の先輩として諭すように話す場面も。
【片山副知事(当時)】「(元局長も)昔からの仲やのに、こんな話なんかしに来たなかったわ。そやけど副知事やったら、せなしゃあないやないか。こんなもん握られたら」
■「どのように対応するかしっかりと考える」と解散にも含みを持たせる
告発文をめぐるさまざまな新事実が明らかになる中で、19日、兵庫県議会で大きな動きが。
各会派の全会一致で斎藤知事への不信任決議案を提出します。
可決の見込みが決定的となる中、斎藤知事に残された選択肢は辞職をするか、議会を解散か失職。
(Q.どの選択をする?)
【兵庫県 斎藤元彦知事】「不信任決議について提出の見込みと聞いている。どのように可決されるか含めて、どのように対応するかは、しっかりと考えていく」
解散にも含みを持たせた斎藤知事。 解散した場合には議員も失職することになるため、動きがあわただしくなっています。
■斎藤知事と共に歩んできた維新の議員は「仕事ができる」と評価し「9割がた議会を解散する」
取材を進めると、気になる今後の展開と、それぞれの本音が見えてきました。
選挙の時には、日本維新の会の吉村共同代表も応援に入るなど、斎藤知事と共に歩んできた維新。
斎藤県政をどう評価するのか問うと…。
【維新の会 門隆志兵庫県議】「仕事ができる知事だし、改革進めるにはもってこい。OBの言うこと聞かず、おかしいというところに手を突っ込んで、直したところは評価している。仲間作って、いざという時に応援してもらえるようにしないと、いけなかったのかなと。1人で突っ込んでいっても、みんな敵ですよ」
知事の手腕については、今でも評価する一方、職員らとのコミュニケーションには問題があったとした維新の議員。
さらに取材の中で、斎藤知事は議会の「解散」に踏み切るとみていると明かしました。
(Q.解散する確率は?)
【維新の会 門隆志県議】「解散されると思ってます」
(Q.9割方?)
【維新の会 門隆志県議】「うん」
解散すれば不信任を受けた知事としては、初めてとなります。
県議選挙となれば苦しい立場になる維新としては…。
(Q.知事に対して(解散しないよう)進言は?)
【維新の会 門隆志県議】「してるよ。返信来ないけど。メッセージで既読にはなってる。見てるやろなと」
(Q.維新の県議を守ろうと?)
【維新の会 門隆志県議】「もちろんありますよ。去年の4月の選挙で、全員が上位当選したわけでなく、ギリギリやった人もおるわけですよ。まだ1期目、2年目の人からしたら、(県議選挙は)厳しいかもしれへん。あえて僕は知事に『議会解散したらいいよ』なんて言わないですよ」
■「斎藤知事には会うのも難しかった」“片山副知事が就任した時”がターニングポイントと自民党の県議員
対して、パワハラ疑惑を厳しく追及してきた、最大会派の自民党の議員は…。
【自民党 長瀬たけし兵庫県議】「(議会解散の)リスクは僕個人は感じなかった」
(Q.会派としても自信?)
【自民党 長瀬たけし兵庫県議】「そうですね。大きな世論の盛り上がりの中で、県民、有権者も色んな思いをお持ちなんで。知事選挙だけじゃなくて議員も、一度、信を問うのはありだと思っています」
世論を追い風に、解散を受けて立つと話す自民側。
一方で県議会議員から見て、斎藤県政のターニングポイントだったと語る出来事が。
【自民党 長瀬たけし兵庫県議】「片山副知事が就任してから、縮まっていた議会との距離が、また開いた気がする。(片山さんが副知事に)なってから大きく変わった。本会議の開会日と閉会日には、知事、副知事、幹部があいさつ回りする。そこに片山副知事が来なくなった。気に食わないところには行かないと、そういうことだったのか。そういう状態が続いていた。その頃になってくると知事には会えない、会うのも難しかった」
会派によってさまざまな思惑が渦巻く今の状況のなかで、斎藤知事はどういった選択をするのか。その判断に大きな注目が集まります。
■斎藤知事の決断によって大きく変わる2つの“お金”
斎藤知事の決断によって大きく変わる“お金”の問題があります。
まず知事の退職金が変わります。
・19日に不信任決議案が提出
可決された場合、斎藤知事には3つの選択肢があります。
・10日以内(29日まで)に議会を解散する
・29日までに辞職する
・30日付けで失職する
兵庫県によると、知事の退職手当は、29日までに辞職した場合1561万円ほど、10日を過ぎて30日付で失職した場合は1603万円ほどとなり、1日変わるだけで40万円以上増えます。
そして議会を解散した場合でも、新たな議会が不信任決議案を再可決した場合は結局失職することになりますが、これが11月になった場合は退職手当が1646万円ほど、これに加えてボーナスに当たる期末手当が149万円ほどとなり、合わせて1795万円ほどが支払われることになります。
退職金の金額で知事の決断が変わることについて、前尼崎市長の稲村和美氏は「それはないと思うが、出直し知事選になった時の任期の問題がある」と言います。
【稲村和美氏】「まず“辞職”か“失職”かでいうと、辞職して、もし出直し選挙で再選されたとしても任期は通算になるので、来年また知事選挙になります。失職だと、もし再選されれば新たな任期が始まります。退職手当の問題というよりは、(残り任期の問題で)“失職”が選ばれるんだろうと」
Q.議会の解散という選択肢については?
【稲村和美氏】「普通に考えたら、知事自身がもう一度信を問う、県民の負託を問い直すというのが通常だと思うんですけど」
■選挙費用「知事選18億円、県議選16億円」
知事選挙にしても、県議会議員選挙にしても、選挙にもお金がかかることになります。
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「どちらの場合でもお金がかかります。(選挙にかかる費用の試算として)知事がもし失職した場合、知事選が50日以内に開かれて、18億円ほど。議会を解散した場合も県議選が行われまして、16億円ということなんです。県議会は去年の4月に選ばれたところで、任期を残して、さらにこの16億円をかけるのかということになります」
こういったことが斎藤知事の判断材料になるのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年9月18日放送)