8日、宮崎県南部で起きた震度6弱の地震。 気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を初めて発表しました。 この情報に私たちはどう向き合えばいいのか。関西の各自治体を取材するとそれぞれの苦悩が見えてきました。
■各地で大きな被害 地震発生直後に土砂崩れも
8日、九州・四国地方などを襲ったマグニチュード7.1の地震。 最大震度6弱を観測した、宮崎県・日南市の酒店では多くの酒瓶が割れてしまい、片づけに追われていました。
また鹿児島県の志布志市では、地震発生直後に土砂が崩れ、周辺の住民に避難指示が出されました。
【住民】「(発生時は)すぐ近くにいた。一瞬で上からドンって。あれと同じ状況で、(崩れる前は)木が生い茂っていました」
■今回の地震は「巨大地震注意」 「今後1週間程度は地震の備えを」と気象庁
各地に被害をもたらした地震。 発生直後には一時、津波注意報が発表され、宮崎や鹿児島のほか、高知県でも津波が観測されました。
今回、震源となったのは、宮崎県の「日向灘」。 この一体で起きる地震で懸念されているのが、最大でおよそ32万人の死者が想定されている、「南海トラフ地震」です。
気象庁は直ちに、専門家を招集。
【気象庁地震火山部 束田進也調査課長】「地震によって、南海トラフ地震発生の可能性が、相対的に高まったかについて評価を行うため、臨時の評価検討会および判定会を開催します」
検討会で判断されたのが、「南海トラフ地震臨時情報」です。 「南海トラフ地震臨時情報」とは、5年前に運用が始まり、南海トラフ沿いで異常な現象を観測された場合や、地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価された場合などに発表される情報です。
対象は、沖縄県から茨城県までの1都2府26県707市町村におよび、この情報を受けて、関西各地や徳島の自治体にも緊張が走りました。
【徳島県庁では…】 「班長だけ来て!班長だけ来て!」
「県民の皆さんにLINEとか流す件…」
【和歌山県庁では…】 「水や食品の備蓄など、地震への備えを、皆さん1人1人再確認をしてください」
南海トラフ地震臨時情報には、「巨大地震警戒」、「巨大地震注意」「調査終了」の3つの段階があります。
検討会の結果…
【林芳正官房長官】「今回発表されたものは『注意』であります。この後、気象庁から説明がされる」
今回、出されたのは、「巨大地震注意」。 想定震源域で大規模地震が発生する可能性が、平常時に比べて相対的に高いと考えられる状況です。 気象庁は対象となる地域に、今後1週間程度は地震の備えをするよう呼びかけています。
【南海トラフ評価検討会 平田直会長】「この巨大地震注意の時には、日頃からの地震への備えを再確認してください。高い津波が来ます、その時にすぐに逃げる必要があるので、どこに逃げるか、避難経路がどこであるか、日頃から考えていただいていると思うが、それを再確認する必要がある。一週間たった後もしばらく安全ということはない」
お盆休みにも影響が出る、今回の臨時情報の発表。 危機感を持つ関西各地の自治体を取材すると、今回の臨時情報にどう対応するのか課題も見えてきました。
■臨時情報への関西の各自治体の対応は…? 対応に苦慮した自治体がいくつもあった
8日、気象庁が初めて発表した「南海トラフ地震臨時情報・巨大地震注意」。 突然やってきた事態に、関西の各自治体は対応に追われました。
和歌山県の沿岸部に位置する新宮市。 南海トラフ地震では、最大14メートルの津波が来ると予想されていて、全国の自治体の中でも高い警戒感を持って対策してきた地域です。 しかし、初めての「巨大地震注意」の臨時情報を前に、課題が見えたと話します。
【新宮市防災対策課 栗林圭一課長】「南海トラフ臨時情報の内容については、なかなか理解できていない職員もいた。今回8月、9月あたりで職員に対して、臨時情報に関しての研修を予定していたが、する前に起こってしまった」
津波がきた時の訓練は入念に行っているものの、臨時情報の対応については、周知しきれていなかったと明かしました。
そして一夜明け取材を進めると、各自治体によって、臨時情報が発表された時の、事前の準備や対応の温度感に差があることも浮き彫りになりました。
地震が発生した後、日本で最も早く津波が到達すると予想されるエリアの一つ、本州最南端の町・和歌山県串本町。 最悪の場合、最大18メートルの津波が町を襲い、建物1万棟あまりが壊滅。およそ6000人が避難困難になると予想されています。 臨時情報の発表を受け、直ちに災害対策連絡室を設置。情報の収集や、今後の対応などを協議しています。
【串本町役場総務課 杉本隆晴課長】「(臨時情報)『調査中』であれば職員の配備態勢1号、巨大地震『注意』であれば2号、巨大地震『警戒』であれば3号配備をいくと決めていた」
串本町では、臨時情報が発表された時の対応を、事前に策定しています。
【串本町役場総務課 杉本隆晴課長】「ここが仮眠室です。段ボールベッドを用意しました。庁舎に職員が休める場所がなかったので、今回、待機するために仮眠室を作りました」
今後1週間、職員およそ40人が24時間体制で対応にあたれるよう、段ボールベッドを設置しました。
一方、同じ和歌山県の西側沿岸部に位置する印南町。
【印南町役場総務課 坂口貴志さん】「『調査中』の時の動きであるとかは、しっかりと話をできていなかったので、速やかに動いたが、準備態勢の部分で難しさあった」
臨時情報が出てすぐに、災害警戒対策会議を招集。 一方で対策本部の立ち上げには至らず、臨時情報が出たときにどのような態勢をとるかは、事前に決められていなかったということです。
関西テレビが、南海トラフ地震による津波の被害が大きいと予測される29の自治体に取材したところ、印南町と同様に、臨時情報への対応に苦慮した自治体がいくつもありました。
(関西テレビ「newsランナー」2024年8月9日放送)