外国籍の子どもが全国で13万人超 「児童の1割が外国籍」の小学校で『ロボットでの学習支援』を実験 日本語が話せない子の教育に「難しさ感じる」と教師 2024年03月16日
近年、小学校で急増している、日本語が苦手な外国籍の子どもたち。
【大阪市立塩草立葉小学校 竹内幸延校長】「外国籍の子どもは約50人。1割になりました」
彼らの学びをどう支援するのか?
【大阪市立塩草立葉小学校 李 幸美先生】「1人(の児童)につく先生はいないので、そういうところで難しさを感じています」
そこで試されたのは、まさかの“ロボット”!教育現場の現状を追いました。
■ベトナム人の児童にロボットで学習支援
大阪・浪速区の大阪市立塩草立葉小学校。ある日の教室で珍しい光景が見られました。
【児童】「すげえ!」「かわいい!」
教室に入ってきたのは「avatarin(アバターイン)」が開発した、遠隔操作ができるロボット「newme(ニューミー)」です。
この日は、外国籍で日本語が苦手な子どもたちを遠隔で学習支援する実証実験が行われました。
小学3年生のベトナム人、レー・ディン・コック・フンさん(9歳)は、3カ月前に大阪にやって来たばかり。日本語はほとんど話せません。
【ロボット・newmeからの音声】「今、見えないです。その紙を見せて、2番の。もう少し近くに」
ロボットについているモニター越しで、日本に10年住んでいるベトナム人がサポートします。
なぜ、この実験を行ったのか?その狙いを校長先生に聞いてみました。
【大阪市立塩草立葉小学校 竹内幸延校長】「子どもたちは今500人少しいるのですが、外国籍の子どもは約50人。1割になりました。これは年々増えています。特に(2023年)4月から今まで、途中で転入してくる子がいるんですけど、20人転入してきました」
背景にあるのは、人手不足とされる分野で外国人が在留資格を得られる「特定技能2号」の対象拡大です。
これまでは「建設」や「造船」の2つの分野のみに限定されていましたが、2023年8月からはITや、自動車整備、宿泊業など11の分野に拡大されました。これらの業種は、家族も一緒に日本で滞在できるため、コロナの収束も相まって来日する外国人が増えているのです。
■外国籍の子どもが全国に13万人以上
現在、外国籍の子どもは全国でおよそ13万7000人いて、そのうち大阪市の小学校には、およそ3100人の子どもたちが通っています。
レーさんは算数が得意ですが、日本語で書かれた問題が読めないため「newme」にサポートしてもらいます。
【ロボット・newmeからの音声】「1箱にキャラメルが6個ずつ入っています」
問題を日本語で読み上げた後、同じ文章をベトナム語訳で読み上げます。
このロボットは遠隔操作でカメラの向きを変えることができます。そのため、子どもの表情を見たり、黒板の内容を把握したりして、まるでもう1人、先生がそばにいるような状態でサポートできるのです。
ロボットによる学習支援を受けたレーさんは、どのように感じたのでしょうか。
【レー・ディン・コック・フンさん】「ロボットがないより、あったほうが良かった。課題が分かるようになった。日本語で(問題が)何と書いているのか」
レーさんは手応えを感じていましたが、年々増加する外国籍の子どもたちのために、特別に時間を割くことが難しくなっているのは現場の教師たちです。
レーさんの担任・李先生は翻訳アプリを使ってコミュニケーションを取っていますが、課題もあると話します。
【大阪市立塩草立葉小学校 李 幸美先生】「日本語に訳してあげても、翻訳機を使っても、うまく翻訳できないことがあって。トラブルになった時に思いを聞いてあげられないところがやりにくいなと思う。1人(の児童)につく先生はいないので、教室に困っているお子さんが複数いたらいろんな人が周らないといけないので、そういうところで難しさを感じています」
■外国人の子どもも自分らしく生きられる環境に
IT関連の仕事をしているレーさんのお父さん(28歳)。プログラマーになるのが将来の夢だというレーさんは、毎日1時間、お父さんと一緒に日本語の勉強に励んでいます。
Q.日本に来てから好きになったものは?
【レー・ディン・コック・フンさん】「天ぷらと、刺身と、うどんと、ラーメンが…」
【レーさんのお父さん】「全部料理ですね」
【レー・ディン・コック・フンさん】「現在は日本に長くいて勉強する予定で、まだベトナムに戻りたくない」
大阪市の教育委員会は、このような外国籍の子どもたちの学習支援を学校だけで対応するのではなく、国を挙げてサポートしていく必要があると考えています。
【大阪市教育委員会 冨士浜真二主席指導主事】「外国から編入する子どもたちが増えてきておりまして、それに応じた日本語指導ができる人材の確保ですね。それが1つ課題だという風に思っております。学齢期の子供たちが学習の機会を奪われることがないように、きちんと受け入れ態勢を整える必要がある」
人手不足を解消するため、今後も外国人労働者の受け入れを拡大していく日本。同時に、外国籍の子どもたちも増えていくことが予想されます。
そんな子どもたちが自分らしく生きていくために、日本で十分な教育を受けられる環境づくりが必要です。
大阪市には現在「母語支援員」という制度があり、ベトナム語やネパール語などが話せる約200人が登録しています。
小学校に入学・編入する前に日本語の指導をしたり、区によっては放課後に小学生を集めて生活のサポートもしているそうです。
しかし、登録している人たちには教員免許がないため、学校内での学習指導はできないという課題もあります。あくまで日本語を母国語に通訳するなどのサポートのみということです。
また、岐阜県可児市では人口約10万人のうち、8600人がブラジル系やフィリピン系などの外国籍のため「日系サポーター」という制度を設けています。
日本語がほとんど話せない子どもたちがスムーズに小学校に入学できるように、ポルトガル語や英語、日本語を使って、学習や生活面での支援をしているのです。
日系サポーターである吉實よしおさんは「外国人を“単純な労働力”として見るのではなく“社会の一員”として受け入れてほしい」と話します。
自治体だけでなく、国の施策として環境整備を進めていく必要がありそうです。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月12日放送)