『価格を超える満足度を』 宝石やバッグなど20万点が集結 「質流れ品大バザール」 阪神百貨店の敏腕バイヤー 人生最後の情熱仕入れに奔走 2024年03月08日
「質流れバザール」を取り仕切る、阪神百貨店の連藤誠一郎バイヤー、64歳。百貨店でおよそ30年、高級ブランドに携わり、宝石鑑定の権威「米国宝石学会鑑定士」の資格を持つ大ベテランです。
連藤さんは2週間後の「質流れバザール」開催に向けた追い込み準備のため、東京を訪れていました。
■連藤バイヤーのこだわり①「関西では入手できない商品を探す」
【連藤誠一郎バイヤー】「関西で手に入らない商品とか、東京でしか発売されていないブランドの商品とかもたくさんある。この質流れバザールで最後。長年させていただいているが、一つの区切りなので気合入れてます」
ことし4月で引退する連藤さんにとって、今回が人生最後の「質流れバザール」。過去最多の20万点の出品を目指して、半年前から全国の質屋さんに足を運び、交渉を続けてきました。目玉となる商品が直前に入荷することもあり、最後まで気が抜けません。
【連藤誠一郎バイヤー】「すごくいいですよね。こんなん春色ですよね、春夏の」
連藤さんが最初に目を付けたのは、42万3500円のルイヴィトンの限定モデル。質屋さんと交渉に取り掛かります。
【連藤誠一郎バイヤー】「このへん特別の目玉で何とかいきましょか。何とか頑張ってもらって」
【質屋】「値段は厳しいしか言えない」
【連藤誠一郎バイヤー】「39万8000円」
【質屋】「簡単に言わないでくださいよ、難しいですよ。皆さん『いけるでしょ』みたいに言うけど、僕らは一個一個ぎりぎりの値段でつけてますのでね。一番苦しいところですよね」
【連藤誠一郎バイヤー】「…。39万8000円で」
【質屋】「分かりました、せっかく楽しみにしているお客さまがいらっしゃいますので」
さすが関西の敏腕バイヤー。出品の約束だけでなく、値切り交渉も押し切って、抜け目がありません。店内でいち早く“春色のバッグ”に目を付けた連藤さんですが、実は東京に着いたとき、銀座で道行く人をチェックして、すでに狙いを定めていました。
■連藤バイヤーのこだわり②「街で人間観察⇒常にトレンドに応える」
【連藤誠一郎バイヤー】「お客さまの持ち物は気になりますよね」
連藤さんが普段からついついやってしまうという「人間観察」。質屋さんに向かう道中でも観察が続きます。
【連藤誠一郎バイヤー】「2月末ですけど暖かくなっているので、服装に合わせて(バッグを)変えてるなと思いますね。白っぽいプラダのバッグとか、春色になっておしゃれやなと思いますよね。われわれ(質流れバザール)も3月に開催なので、時期特性も重要視して品ぞろえを考えていかないとあかんなと」
連藤さんが「品ぞろえ」にこだわるようになったきっかけは約7年前。質流れバザールのリーダーを任された時のことでした。
【連藤誠一郎バイヤー】「これだけお客さまが入っているのに、手ぶらで帰ってるとか。わざわざ電車賃払って梅田に来ているのに『買うものがない、残念や』という声もありましたので、いちからもう一度、中身を企画段階からやり替えていったのがきっかけですね」
「全てのお客さんに『質流れバザール』を楽しんでもらいたい」。連藤さんは、毎年、新たな質屋さんを開拓し、幅広い商品を店頭に並べられるよう奔走してきました。
■連藤バイヤーのこだわり③「関西の客から需要の高い“レア商品”を探す」
今回、連藤さんが特に力を入れるのは「レア商品」。ここ数年、特に関西の客から「レア商品」の需要が高まっているそうで、珍しいコラボ商品を多く扱う質屋さんを訪ねました。
【質屋】「コラボレーションのモデルでしたらこういったもの(ルイヴィトンのバックを出してきて)。原宿のポップアップストア限定で販売されていたもの」
【連藤誠一郎バイヤー】「東京でしか手に入らない商品?」
【質屋】「そうです。すぐに完売してしまったものです」
関西では手に入らないレアなものばかりで、何としても質流れバザールに並べたい連藤さんです。
【連藤誠一郎バイヤー】「とにかく最後の1週間の荷造りまで、できるだけたくさん集めてもらえたら。最後なので、私の顔も立ててもらって、できるだけ商品を投入してもらって」
「今年で引退」を口実に、多少のむちゃぶりもご愛嬌です。
【連藤誠一郎バイヤー】「とにかく(商品を)詰め込んでくださいね。よろしくお願いします」
最後の追い込みは、大阪の阪神百貨店で。「関西人がほしいものは関西人が持っている」とのことで、特設ブースで開催されたのは「ブランド品買取フェア」です。お客さんが持ち込んだブランド品を、複数の質屋さんがその場で査定。一番高い値段を付けたところが買い取り、その多くが質流れバザールに出品されます。家に眠っていた「レアな商品」が売りに出ることも多く、連藤さんも目を光らせます。
(Q珍しい商品が売りに出ている?)
【連藤誠一郎バイヤー】「あります。特に今回そういう(珍しい)商品がたくさん来ている。コラボ商品とか」
その中の一つが、草間彌生さんとルイヴィトンがコラボした限定バッグで、草間さんらしい水玉が特徴的な一品。すでに店舗での販売は終了していて、めったにお目にかかれないレア商品です。
【連藤誠一郎バイヤー】「想像以上にいい商品が、各ブランド集まってきているので、何とか最後の追い込みで(目標の)20万点に達すると思う」
■連藤バイヤーのこだわり④「充実した品ぞろえ⇒満足度アップ⇒リピーター増やす」
充実した品ぞろえで満足してもらうことで、リピーターを増やす。質流れバザールを成功させるために、連藤さんが参考にしてきたのは、長年通い詰めている「ディズニーランド」だといいます。
【連藤誠一郎バイヤー】「(スマホの写真を見せて)ことしの40周年のやつ」
実は連藤さん、ディズニーランドの大ファン。オープンした年から40年、毎年欠かさず家族で訪れています。
【連藤誠一郎バイヤー】「(ディズニーランドを)ぶらぶら歩いてるだけでいいんです、楽しい。エレクトリカルパレードが一番好き。『もうおみやげ買わへんぞ』と思ってるのに、毎回手に持たれへんぐらいいっぱい持って帰ってくる。恐ろしいぐらいお金使ってる。 それを百貨店の質流れバザールに置き換えたら、いいものがたくさんあって、次回も絶対来たいから次いつとか。『満足度』が共通点だと思います」
■いよいよ「質流れバザール」 前日から当日まで大忙しの連藤バイヤー
質流れバザール開催前日。売り場に続々と商品が並べられていきます。連藤さんは一つ一つブースを回り、商品の数や状態を確認します。
【連藤誠一郎バイヤー】「めっちゃかわいいやん、ロエベのコラボやん。かわいい」「ようけあるがな~。すごい」「間違って家持って帰るかもしれへんわ」
さて連藤さんが東京の質屋さんでお願いしたルイヴィトンの限定モデルも登場です。1ドル=150円という円安の影響で、海外ブランド品の価格が高騰する中、連藤さんの希望通り40万円を切る値段になりました。
【質屋】「持ってきました!」
【連藤誠一郎バイヤー】「これこれこれ」
【質屋】「せっかく東京までお越しいただいたので、ご希望通りの値段(39万8000円)で」
商品は目標としていた過去最多の20万点を集めました。
3月1日「質流れバザール」当日。連藤さんがスタッフにげきを飛ばします。
【連藤誠一郎バイヤー】「笑顔でね。笑顔で対応して、お客さまに『また来ようかな』『次いつですか』と言っていただけるようにしたい。よろしくお願いします」
いよいよスタート。開店と同時に待ちに待っていたお客さんで大にぎわいです。
【高校生】「最近のやつというより、昔流行したやつを持ってる子がSNSでいて、そういうのがかわいいなって」
【女性】(Q毎年何か買う?)「頑張ってご褒美に買ってます。何か1個でも買って、また明日から仕事頑張れるかなと」
連藤さんが力を入れた「レア商品」。10年以上探し続けた時計に出会えたという男性もいました。
【男性】「ランゲアンドゾーネというブランド。亡くなった祖父がしていたので、同じのが欲しいなと思っていて、ようやく買えました」
奥さんへのプレゼントになんと540万円の超レアバッグもお買い上げしたお客さんもいました。
【女性】「主人が見つけてくれたので」
【男性】「普段頑張ってくれているので」
【女性】「これはお買い得」
商品の魅力だけでなく、この場の雰囲気が好きだという人もいました。
【女性】(Q質流れバザールは好きですか?)「すごくいいと思います、気持ちが安らぎます」
■連藤バイヤーは引退しても、情熱は引き継がれていく
【連藤誠一郎バイヤー】「最後の最後までベストを尽くしたつもりで、商品の品ぞろえとそれに対してお客様の『満足度』。満足いただけているなと思っているので、安心しています。(引退後は)ゆっくりしたいなと思ってます。何もかも忘れて(ディズニーランドで)ミッキーとミニーと写真を写したいと思ってます」
価格を超える『満足度』で、多くの人をひきつける阪神百貨店の「質流れ品大バザール」。連藤バイヤーの情熱はこれからも引き継がれていきます。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月5日放送)