1月1日に起きた「能登半島地震」。
石川県内でフランス料理店を営むシェフが、京都市で“チャリティーディナー”を開催しました。料理に込めた思いとは。
■石川の食材を扱う31歳のフレンチシェフ
京都府出身でフランス料理人の糸井章太さん(31歳)は、石川県小松市で県内の食材を使ったフランス料理店「オーベルジュ オーフ」を営んでいます。
糸井さんは、新時代の若き才能を発掘する国内最大級の料理人コンペティション「RED U-35」で、史上最年少の当時26歳でグランプリを受賞。
国内外の三ツ星レストランで修行をした経験も持つ、新進気鋭の料理人です。
1月1日、能登半島で最大震度7の地震が発生しました。
糸井さんは炊き出しをするため、すぐに能登半島へ。小松市の店は被害がなかったものの、客足が遠のく日々が続きました。
【糸井章太さん】「今、自分ができることを考えた時に、石川から県外に出て、でも石川の食材・生産者・僕たちが向こうで作っているような料理の風土を少しでも感じてもらえたら、『石川また行こう』と少しでも思ってくれたら」
そこで2月26日、糸井さんが出身地である京都の下鴨神社で開いたのが“チャリティーディナー”。その名も「今だから石川の美味を味わう会」です。
使うのはもちろん、石川県産の食材。
Q.石川県の魚ですか?
【糸井章太さん】「そうです。これは能登の漁師さんから直接送ってもらったマグロですね」
鹿やイノシシのジビエも能登産を使います。
【糸井章太さん】「能登のジビエはめちゃくちゃおいしい。僕が最近やっているのは、炭と薪の両方使う。炭は火力が強く、一気に来る。乾いた加熱をしてくれるイメージ。薪は何といっても香り。香りは薪のほうがいいので、かけあわせる」
■「能登の元気につながるようなことができたら」
この日集まったのは、常連客など18人。
【糸井章太さん】「元日に石川で大地震があって。(自分の店は)キャンセルだったり、新規のお客さまが入らないという時期が2週間ぐらい続いたんですね。僕なりに石川県で働いていて、このまま待っていても仕方ないなと。『石川県元気だよ』『また石川県に遊びに来てくださいね』というメッセージも含めたディナーにできたらと思っています」
「できたてのベストな状態を食べてもらいたい」という思いから、仕上げはお客さんの目の前で行います。
振る舞うのは全9品のフルコース。
【女性客】「鹿肉いただきます。全然臭みがない」
【男性客】「すごくおいしい。薪の味がしっかりついてる」
【糸井章太さん】「能登のイノシシです。炭火焼で。部位が3部位あって、ロースとバラ、あとは心臓ですね」
【女性客】「甘みがある」
【男性客】「イノシシなのに全然臭みがない、うれしい」
皆さん、笑顔で1品1品を楽しんでいました。糸井さんの腕にかかった石川県の食材を、存分に味わってもらえたようです。
【女性客】「とってもおいしかったです。もう一度、明日も来たいぐらい満足しました」
【男性客】「石川県の愛が非常に伝わったような品がいっぱい出てきまして、いろんなバリエーションを非常にクリエイティブに組み合わせてくださっていたので、それが楽しかった」
「これからも石川県の食材で最高の料理を仕上げたい」と語る糸井さん。震災を経験し、決意を新たにしました。
【糸井章太さん】「今回のイベントもしかり、何かをしたら能登が戻る、復興につながる、これで全てOKっていうことはないと思うんですね。今後5年、10年と継続的に自分の中で意識しながらやっていけたら、それが石川の、能登の元気につながるようなことができたらいいのかなと」
このチャリティーディナーの売上金の一部は、能登半島地震の復興と被災者支援に活用されます。
石川県の食材を食べることも、被災地支援につながる一つの形だということを示してくれました。
(関西テレビ「newsランナー」2024年2月28日放送)