約1カ月、大阪湾の周辺を迷い続けたクジラが、19日、死んでいるのが確認されました。
19日午後に大阪府は対策会議を開き、死骸を地中に埋めて処分することを決定しました。
■迷いクジラの対策会議「処分方法は埋設が適切」
午後4時過ぎから大阪府が急きょ開いたのは、クジラの対策会議。
【大阪府 吉村知事】「けさの11時に、堺泉北港のクジラが死亡したのは残念に思います。(処分方法は)『埋設』が適切であろうと思います」
19日、死んでいることが確認された大阪湾の”迷いクジラ”。
【記者リポート】「大阪湾に迷い込んだクジラの死骸が、大阪府の船に引っ張られ移動していきます」
1月12日、神戸の六甲アイランド沖で最初に目撃され、29日以降は、大阪府堺市の堺泉北港にとどまっていました。
【地元漁師】「見たの、みんな初めてだから、びっくりしてて、潮吹いた時はよろこんでた。この1カ月ほど(クジラが)いる間は、暗いうちは出るのをやめて、目視できる時間帯に出船していた。安全を優先していたので」
■クジラの死因は「餓死」とみられる
しかし、18日、海上保安庁に「クジラが動いていない」と通報が…。
19日朝、大阪府が海洋生物の専門家とともに調査を行ったところ、死んでいることが確認されました。死因は、餓死とみられるということです。
調査に参加した専門家は。
【大阪市立自然史博物館 鍋島靖信外来研究員】「完全に口が、ガバッと開いてまして、それと息をしない。体の表面から泡と血液とか、脂がにじみ出てたりしてた。そういうところで死んだと判断しました。2月上旬に、上からの体形を見ると、普通のマッコウクジラよりも、かなり細かった。これは1カ月から2カ月ぐらいは、エサ食べてないだろうという状況だった」
大阪府は19日の会議で、死んだクジラを近くにある、堺市の産業廃棄物の最終処分場に埋設して処分することを決めました。
【大阪府吉村知事】「地元・漁業関係者との調整も済みで、人の立ち入りも禁止されていて適地。埋設によって、数年後、骨格標本として自然史博物館に提供できる。学術的な意味があると踏まえると、この方法が適切なのかなと」
埋設の作業は、早ければ今週中にも完了する予定だということです。
■死んだクジラは岸に係留 表面はボロボロで時々ガスのようなにおい
現地にいる記者と中継を結びます。
クジラが死んだことが確認され、いまはどのような状況なのでしょうか。
【高橋記者】「堺泉北港からお伝えします。船に乗ってクジラの近くまで来ています。体長は約12メートルのオスのマッコウクジラとみられていますが、近くで見てみるとかなり大きいという印象です。体の表面にところどころ、白い所があって、脂がしみ出ているのか、ボロボロに見えます。出血も見られます。においはほとんどしませんが、近づくと時々ガスのようなにおいがします。先ほどまでクジラはもう少し沖合に浮かんでいましたが、港に出入りする船などにぶつかる恐れがあるということで、引っ張ってきて岸に係留されている状態です。実際に処分が始まるまでは、この場所につなぎ留められる予定です」
大阪府は処分の方法を「埋設」を軸に検討しているということですが、なぜ、「埋設」に行きついたのでしょうか?
【高橋記者】「大阪府はこれまで『埋設』以外にも、『焼却』と『ほかの海域に移動させて沈める』という方法も検討してきました。しかし『焼却』は、この大きさのクジラが入る焼却炉は無いので、細かく切断する必要があり、労力と費用がかかってしまいます。また、淀ちゃんの時には紀伊水道沖まで運んで沈める方法を取ったのですが、約8000万円という高額な費用がかかった上に、沈める海域や移動ルートについて、海上保安庁や地元の自治体・漁協などと調整が必要になります」
「一方で『埋設』という方法はコストや労力が少なくて済みます。加えて、迷いクジラの死骸は学術的な価値も高いのですが、「埋設」はその後、地中から取り出して標本にもできます。まずは、この場所のすぐ近く、一般の人の立ち入りが禁止されている埋立地に一度埋められて、1年から2年後をめどに取り出して、大阪市自然史博物館が引き取る方針だということです。埋設は早ければ、今週中をめどに進められる予定です」
■クジラの迷い込みには「海水温と黒潮の蛇行が影響か」
クジラの迷い込みが、去年に続きなぜ連続しているのでしょうか、またこれを防ぐために何かできることはあるのでしょうか。
まずは、原因です。
大阪市立自然史博物館の鍋島研究員によると、「海水温と黒潮の蛇行が関係しているのでは」ということです。
本来は黒潮の水温が21度ぐらいなのに対して、近海は17度ぐらいで水温に差があります。なので、仮にクジラが黒潮から離れて沿岸の方へ泳いできたとしても、「あれ?冷たいぞ」と気付くことができます。
しかし、いまはどうなっているかというと、黒潮が大きく南側へ蛇行している状況です。合わせて、近海の水温が19度で、温度が暖かくなってきています。
また、黒潮の蛇行によって普段は発生しない、紀伊半島側への分岐流が発生することがあります。
そして、この分岐流にクジラが乗ってしまった場合、水温が高いので黒潮からそれていることに気付くことができません。
この結果、紀伊水道などを通って、大阪湾まで流れ着いてしまうのではないかと分析されています。
■対策のために「まずはクジラの解剖を」と専門家
クジラが迷い込まないようにするための対策についても聞きました。
国立科学博物館の田島さんは「まずは死んだクジラの解剖を行い、原因を調査するべき。そして、今後は紀伊水道沖などで巡視を強化、さらにクジラが嫌がる音を発するスピーカーを設置するなども必要ではないか」と言います。
すでに海外では、こうした対策を行っている国もあるそうです。
自治体からすると、国が早く対策を講じてくれないと、毎回多額の費用がかかってしまいますし、再発防止のためにも、まずは今回のクジラを解剖して、原因の究明が待たれます。
(関西テレビ「newsランナー」2024年2年19日放送)