東京地検特捜部は、安倍派と二階派それぞれの事務所の家宅捜索に乗り出しました。捜査の理由やポイントなど、家宅捜索に関する気になる疑問を元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士に聞きます。
■今回は派閥事務所への家宅捜索
派閥の事務所への家宅捜索というのは、具体的に何をするのでしょうか?
【元東京地検特捜部検事 郷原信郎弁護士】 「事務所の中にある、書類、あるいは電子データの入ったパソコンなどの、事件に関連するものを幅広く収取するというのが捜索・差し押さえの目的ですね。事件に関連する証拠物というのは、ちょっと見ただけでは、関連するかどうか分からないものも多いので、幅広く収集することになるのが普通です」
きょう1日で捜査は終了するのでしょうか?
【元東京地検特捜部検事 郷原信郎弁護士】 「通常の広さの事務所であれば1日あれば十分操作が終わると思います」
今回の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑について、改めてお金の動きを説明します。 安倍派は、個人や企業などから得た政治資金パーティーのパーティー券の代金について、ノルマを超えて集めた分の資金は、議員側にキックバックしていました。しかし、このキックバックしていたお金を収支報告書に記載していなかったことがわかり、裏金になっていたのではないかという疑惑がもたれています。
安倍派の議員は、「派閥から政策活動費と言われて受け取ったが、収支報告書に記載しなければいけないと気付いていた」と話しました。 本来、政策活動費は政党から受け取るものですが、違法性があると認識していたともとれるこの議員の発言で立件しやすくはなりますか?
【元東京地検特捜部検事 郷原信郎弁護士】 「違法性の認識を認めているという話ではあると思いますが、問題は収支報告書に記載しないという部分。政策活動費として受け取り、収支報告書に記載しなくていいお金として受け取ったということは、裏金としてどの収支報告書にも記載しなくていいと考えたということです。そうすると先ほど言った、どの収支報告書の不記載・虚偽記入になるのかという問題点はこの供述ではクリアされません。違法だという認識を持っていたというだけでは、裏金を受領した側の議員の立件が容易になったとは言えないです」
■事務総長クラスの議員の責任は問われない?
また、裏金は何に使われたか?というのも、立件できるかどうかを左右するポイントになるのでしょうか?
【元東京地検特捜部検事 郷原信郎弁護士】 「裏金の使い方によっては、それ自体が犯罪になることもありえます。例えば、選挙の買収に使ったとかだと、別の犯罪になります。ただ今回の一連の捜査の中で、裏金の使い道が具体的に犯罪というところまで立証できるというのは、そんなに多くはないと思います。1つ考えるのは、きょう新聞で報じられていましたけれども、このノルマを超えた分の裏金だけではなくて、参議院選挙の年には、ノルマ分も含めて還流されていたという話が出てきています。そうだとすると、このお金は選挙のために裏金として提供されたと言うことになります。それは公職選挙法上、選挙運動費用収支報告書に収入として記載しないといけなかったとか、別の問題が出てきます。他の法律の関係で。そういったものの中で、何かで立件できるものがあれば、裏金を受領した議員側の犯罪事実として徹底して解明していこうということになる可能性があります」
【元東京地検特捜部検事 郷原信郎弁護士】 「今回の国民の怒りを、もし国民が期待している通りに処罰ができないとすれば、抜本的な政治資金規正法の改正に結びつけることが、絶対必要だと思います。不透明な金の流れが、事実上許容されているような政治資金規正法のもとで政治に対する信頼が回復できるわけないと思います」
■特捜部は本気の体制だが、その結果でどこまで処罰できるのかは「よく分からない」
視聴者から質問が来ています。
‐Q:検察の捜査は本気ですか?それとも体裁だけですか?
【元東京地検特捜部検事 郷原信郎弁護士】 「捜査態勢もこれまでにない大規模体制だということからしても、本気であることは間違いないと思います。しかし、その事実解明の結果、どこまでの処罰ができるかっていうのは、これまた現時点ではよく分からないと思います」
安倍派の会計責任者に関しては立件も検討されているということですが、裏金を受け取った議員と会計責任者に共謀が成立するのかというのがポイントになるということですか?
【元東京地検特捜部検事 郷原信郎弁護士】 「共謀の問題もさることながら、そもそもの前提として、政治資金規正法の大穴である、どこに帰属するのかがわからないという事がクリアされないと、そもそも共謀の問題にまでたどり着かないです。そこが大きな問題だと思います。安倍派の場合はそうですし、まだ二階派の場合は、個人が裏金をもらったという事実も出てきていませんし、派閥単位で収支報告書の虚偽記載があり、過少に記載されたということは、どこかにお金が行ってしまったという話ですから、それが事務局のあたりで使い込みをした人でもいるのか、あるいは派閥の裏金に回っていたのか、まだこれから解明されると思います」
本格化した裏金疑惑の捜査ですが、徹底した捜査と再発防止が望まれるのではないでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月19日放送)