開催まで500日を切った大阪・関西万博。 準備が進む一方で、たびたび世間を騒がせているのが万博にかかる「オカネ」の問題です。
■あらたに運営費について350億円の増額
博覧会協会が「支出」として見込んでいるのが、大屋根などの建設にかかる「会場建設費」と、人件費や広報宣伝費などを合わせた「運営費」です。
「会場建設費」は、国、大阪府と市、それに経済界で3分の1ずつ負担しますが、資材の高騰などの影響で上振れし、最大2350億円になることが見込まれています。
そして14日新たに、「運営費」についても、当初の計画から350億円の増額となる、1160億円と試算していることが明らかになりました。 人件費の高騰のほか、安倍元首相の銃撃事件や韓国・ソウルでの雑踏事故を受けて警備を強化したことなどによるもので、運営費はすべて博覧会協会が負担します。
【日本国際博覧会協会 十倉雅和会長】「変化の激しい時代に今の事態を予想できなかったのは申し訳ないが、人手不足がこんなに激しくなる、インフレになると想定しにくい面があった。国際的な安全保障の環境が厳しくなってきた」
博覧会協会は、「運営費」の大半をチケット収入で賄う計画ですが、最新の世論調査では、8割以上が費用が増加し続ける現状のままでの開催に不満を持っていて、チケットが想定通り売れるかどうかは不透明です。
■赤字になった場合は? 博覧会協会は「ならないようにする」
では、仮に赤字になった場合、一体、誰が負担するのでしょうか。
【日本国際博覧会協会 石毛博行事務総長】「収支結果の取り扱いは、協会運営の重要な事項。理事会の中でしっかり議論して、国、大阪府市など関係者とよく協議しながら決定されるもの」
しかし国は…
【西村康稔経産相(当時)】「事業実施主体の博覧会協会が業務執行責任を負うのは大前提。国として(赤字を)補てんすることは考えていません」
大阪府も…
【大阪府 吉村洋文知事】「(万博は)国主催の事業で国が『赤字を補填しない』と言っている運営費を、大阪府市が負担するのは明らかにおかしいので、そういったことはしない」
すでに会場建設費やパビリオンの出展などで多額の負担をしている国や大阪府・大阪市は、「赤字を補てんする考えはない」と表明。 これ以上私たちの負担が増えないための解決策はあるのでしょうか?
【日本国際博覧会協会 石毛博行事務総長】「収入の面で最大限いろんな努力を講じて、増やすことを続けていくことで、赤字の事態に陥らないようにする。(Q:赤字が生じた際の補てん方法は?)今のこの時点で具体的なものはありません」
協会は、「赤字にならないよう努力する」と繰り返し、具体的な補てんの方法については言及しませんでした。
【日本国際博覧会協会 石毛博行事務総長】「努力を強化してやってきたうえで、この数字になっているとご理解をいただきたい」
またしても明らかになった費用の増額。私たちの負担がどこまで増えるのか先が見通せない状況です。
■チケット発売から1週間 一般の購入は5.5万枚ほど
万博を巡っては、会場建設費が当初1250億円と言われていたのですが、これまでに2度増額され当初の1.9倍となる最大2350億円に膨れ上がっています。さらに、これとは別に政府が出展するパビリオン「日本館」の建設費用などとして、837億円の国の負担が明らかになっています。 そして、14日明らかになったのが運営費の増額です。当初の809億円から1.4倍となる1160億円に膨らむ見通しです。
大阪・関西万博に関しては運営費の大半をチケット収入でまかなう予定です。チケットの販売目標は約2300万枚となっています。現時点での売れ行きですが、販売開始から約1週間となる12月6日時点では、一般の方が購入したのが5万4072枚。このほかに企業からは300万枚の購入の内諾を得ているということです。 まだ前売りの販売が始まって間もない時期ですが、2300万枚のチケットがスムーズに売れるのか、不安も感じられるところです。
■赤字になったら、結局は税金が使われるのでは?
もし、万博が赤字だったら誰が負担するのでしょうか。過去の万博では、2000年に開催されたドイツのハノーバー万博で、来場者が想定を大幅に下回り1200億円もの赤字となったということです。日本総研・主任研究員の藤山光雄さんによると、赤字はドイツの政府・自治体で補てんしたということです。 大阪・関西万博に関しては、国も大阪府・市も赤字の場合、補てんはしないという考えを示しています。では、どこが補てんするのでしょうか?
【関西テレビ 神崎博報道デスク】 「最終的には協会が負担します。協会は国と大阪府と大阪市と経済界で成り立っていますので、国と大阪府・市が払わないのであれば、経済界が払うことになりますけれども、経済界はすでに300万枚のチケットを引き受けている。言葉を変えると、押し付けられている状態で、さらに負担を増やすのかとなると、経済界は建設費も払っており厳しいと思います」
「建設費が増えて、国や大阪府・市が、赤字分も全部税金での負担に行きますよとは、今の状態では口が裂けても言えないと思いますが、最終的にはやっぱり赤字になった部分は、国や大阪府・市が払わざるを得なくなるのではないかという危惧があります」
赤字を避けるためにはチケットを売ることが必須条件になってくるわけですが、日本総研・藤山さんは「チケットを売るためには、できるだけ速やかに何が万博の目玉で何が体験できるのかを発信していく必要がある」と言っています。 今回の万博の魅力や「ウリ」が、多くの人にはまだまだ伝わっていない現状があります。今後、機運醸成を図っていく中で、より具体的に、魅力をどれだけ発信することができるのか、問われています。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月14日放送)