「異次元の少子化対策」の財源や具体策が11日に示されました、その中で注目されたのが大学などの入学金・授業料の無償化です。公表された「異次元の少子化対策」の中身について、そして財源面を含め大阪大学大学院教授の安田先生の解説です。
今回のプランは基本理念として「切れ目のない支援」となっています。子供が生まれる時の「出産費用」の保険適用に始まって、子どもが成長していった際の住宅支援や児童手当の拡充などの支援策です。
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】 「少子化対策に限らず、政策が効果を発揮するためには、
1. 対象が広い 2. 公平・納得感 3. イメージしやすい
この3つの条件が重要だという風に思います。 まず基本理念の“切れ目ない支援”という点はそれなりに良いかなと」
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】 「ところが大学の無償化は条件として“扶養している子供が3人以上いる”となっていて、対象が非常に狭いです。公平・納得感に関しては、お子さんが2人いる家庭と3人の家庭でそんなに違うのか?というところに不公平感があります。扶養から外れると、その先は無償化にはならないという点も気になります。
イメージのしやすさに関して、生まれたばかりの子供が大学に入るとなると、15年~20年先の話じゃないですか。『将来、大学の授業料が無償化になるから子供を増やそう』と考える人がどれだけいるのか?ってことですよね、もう少し早いタイミングでもらえるならまだしも。この政策が20年後もきちんと維持しているかどうか、不確実性がかなりあります。『大学の授業料が無償化されると思って3人産みました、だけど政策がなくなりました』となったらどうしてくれるの!という話になってしまいます」
今回の案がどこまで維持できるのか、その点で気になるのが財源です。およそ3.6兆円必要ということですが、子供未来戦略会議では「財源確保のための増税は行わない」と言っています。3.6兆円の内訳を見てみますと、予算活用に1.5兆円、歳出改革1.1兆円、そして新たに支援金制度として1兆円です。新たな支援金制度の中身ですが、公的医療保険に月500円程度を上乗せして国民から徴収する方針です。 これだと「増税は行わない」と言っているのに国民負担になるのでは?という話なんです。
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】 「ステルス増税と書きましたけど、見えない増税に極めて近い。『支援金』って書かれるとなんとなく取られる感じはしないですが、結局、社会保険料の値上げということは、我々の負担は増えるわけです。最近だと『国民負担率』というキーワードを聞かれる方も多いかもしれません。これは税金プラス社会保険料を合わせてどれぐらいの負担かという数字で、日本でも、もう50パーセント近くまで上昇していると言われています。今回この医療保険の値上げでいうと『社会保険料は上がるけれども税金は増えてないよ』と表面上は増えてないようにみえます」
いわゆる現役世代と言われる人たちや独身の方はなかなか恩恵が受けられず負担になるということなんですね。加藤デスクは財源についてどう思いますか?
【関西テレビ 加藤さゆり解説デスク】 「政府のシナリオとしては、まず賃上げが行われるだろうとみています。月500円の負担はあるけれども、そこは(賃上げで)相殺されると言っています。でも、その賃上げだって不確定です。本当に賃金が上がるかどうかも分からない。だったら最初から『月500円程度の負担をお願いします。なぜなら2030年までに少子化を反転させないといけない。今がもうラストチャンスです!。でないと日本はもう成り立ちませんよ、だから今お金が必要なんです』と岸田首相が説明すればいいと思うんです。そういう説明が足りないのではないかと思います」
安田先生、少子化対策の財源をどう確保すべきだと思いますか?
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】 「一言で言うと国債を発行して賄えばいいのでは…と思いますが、一方で国債は将来に負担を先送りにする懸念があります。けれども、こういった少子化対策こそ一番そういう国債に向いていると思います。なぜかというと、この対策が効果を発揮すれば子供が増えるわけです。その子どもたちが将来働いて納税してくれる。だから後になって返ってきます。 今回は“異次元”の少子化対策をうたっています。社会保障費は2022年度で130兆円超も使っていますから、それを考えたら今回、場合によっては国債を使ってもいいような政策だと個人的には思います」
(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月12日放送)