虐待死か、心臓突然死か 心肺停止の原因争う「今西事件」二審 頭蓋内出血の時期を巡る証言 検察側の法医学者と弁護側の小児科医が法廷で対立 2023年12月01日
2017年、大阪市東淀川区の自宅で、2歳の娘の頭に何らかの暴行を加えて死亡させた罪などに問われ、一審で実刑判決を受けた父親の二審の第4回公判が30日に大阪高裁で開かれました。心肺停止の原因をめぐって、検察側から法医学者、弁護側から小児科医が証言しました。
今西貴大被告(34)は、2017年12月、大阪市東淀川区の自宅で、当時2歳4カ月の義理の娘・希愛(のあ)ちゃんの頭部に何らかの方法で暴行を加え、死亡させた傷害致死罪などに問われ、一審(2021年)で懲役12年の判決を受けています。
一審から主に争われているのは、希愛ちゃんの死因が、揺さぶりなどの強い外力(すなわち暴行)によるものか、それとも心臓突然死などによる病死だったかです。
希愛ちゃんは自宅にいた時に急変し、救急搬送の時点で心肺停止状態でした。希愛ちゃんの頭部には目立ったけがの痕はありませんでしたが、病院のCT検査で硬膜下血腫や眼底出血などが確認され、7日後に死亡しました。今西被告は、搬送時から一貫して「娘がウッと言って突然倒れた」と話しています。
検察側は、頭部に暴行が加えられた結果として、頭蓋内で出血するなどして心肺停止状態に至ったと主張。一方、弁護側は、「心筋炎」などによって生じた心肺停止が先で、心肺蘇生後にもろくなった頭蓋内の血管から出血したと主張しています。
一審判決は、強い外力(暴行)によって心肺停止になったと認定。決め手となったのは、解剖結果などから「脳の深部にある脳幹が損傷して心肺停止に至った」との検察側医師の証言でした。こうした症状は、強い力で振り回したり、揺さぶったり、布団の上に投げつけたり、放り投げたりするなどして、「交通事故並みの」衝撃が頭に加わった結果であるとの証言が採用されました。
30日に開かれた二審の第4回公判では、脳の中枢部分から切り出された部分の顕微鏡写真などから、心肺停止前の出血だったと診断できるかどうかについて、2人の医師の証人尋問が行われました。仮に、心肺停止前の出血だと診断できなければ、心肺停止後に頭蓋内出血が生じたという弁護側の説明を否定できないことになります。
最初に証言台に立ったのは、病気の原因を明らかにする病理診断の経験が豊富な小児科医(弁護側)でした。小児科医は、「脳の顕微鏡写真等を検査したが、出血として指摘されている部分は、色や形状等からみて心肺停止後だと鑑別できる。解剖写真や顕微鏡写真からは外力の根拠となる所見は一切見当たらなかった」と証言しました。
一方、解剖経験が豊富な検察側の法医学者は、顕微鏡写真での出血の広がり具合などから「死亡数時間前の出血ではなく、それ以前の出血だった」と指摘し、出血原因については「まずは外力の可能性を考える」と証言しました。
続いての反対尋問で弁護人から「心肺停止前の出血だったのか、それとも後だったのか」と質問されると、「心肺停止後の出血だとすれば、なぜなのかということになりますよね」などとはっきり答えず、再度の質問には「端的に言うと心肺停止より前」と証言しました。しかし、さらに弁護人から追及されると「(心肺停止の前か後か)区別ができない部分があってもおかしくないと思う」と最後には証言を後退させる場面も見られました。
公判終了後、会見を開いた川崎拓也弁護士は「検察側証人は、出血が心肺停止の前か後かについて何度質問しても、巧妙にごまかしていたと思う。でも、最後には心肺停止後の出血の可能性も認めたように受け取れた。粘り強く聞いて良かったと思っている」と振り返りました。
弁護団によると、今回の公判で証拠調べは終了となる予定で、次回(期日は未定)は論告弁論が開かれる見込みだということです。
(関西テレビ 2023年11月30日)