診療報酬を引き下げるのかどうかを巡って、政府と医療界が激しく対立しています。 一体何が起きているのでしょうか?
【日本医師会会長】
「“医師であるあなた方は、休日診療で働いて、その分儲けたからいいじゃないか”と。頑張ったところから召し上げるというのは、通常の医療とコロナ対応で頑張った、医療従事者のまさに心が折れる建議であり大変遺憾です」
日本医師会が怒りをあらわにしているのは、診察や治療などの対価として医療機関に支払う費用、「診療報酬」をめぐる政府の提案です。 「診療報酬」は患者の自己負担と医療保険が財源となっていて、経済状況などに応じて2年に1度、改定されます。
■診療報酬の引き上げを政府が提案
2024年度からの改定に向け、財務省の審議会が11月提案した案、それが… 「診療所の診療報酬を5.5%引き下げ」 財務省が行った調査では、昨年度、病床が20床以上の「病院」は赤字経営だったのに対し、規模の小さい「診療所」は黒字。 経常利益率は、他の産業の平均と比べても倍以上となっていて、「過度な利益が出ている」と主張しています。 マイナス改定によって、現役世代の保険料の負担が軽減され、年収500万円の人では、保険料負担が年間5000円程度少なくなると試算しています。
【財務省の諮問機関 増田寛也分科会長代理】
「収益状況が良い診療所の収益を守るのか?一方で、勤労者の手取りを守るのか?といった、このような形での国民的な議論をぜひお願いしたい」
これに納得がいかないのが街のかかりつけ医です。
【葛西医院 小林正宜院長】
「コロナで頑張った分の上乗せの診療報酬で(収益が)上がっているように見えるから、“落とせばいい”と。それは、地域医療をないがしろにしているとしか思えません。物価も上がっている、(薬の)納入価格も上がっている、人件費も上がっている、だけれども強制的に売り上げは下げられる、そして価格転嫁できない」
診療報酬では人件費だけでなく、医療機器の整備費用などもまかなうため、マイナス改定によって医療サービスの質が落ちてしまうおそれがあると話します。
【葛西医院 小林正宜院長】
「看護師や事務員の数が減ることで、待ち時間が長くなったり、土曜日や夜間に仕事が終わってから診療所に行くことができたのが、(時間短縮で)それができなくなってくるとか。実際の社会の中で、影響が避けられない」
■診療報酬の引き下げによるデメリット
これに対し患者は…
【60代後半 女性】
「しわ寄せ行くところが違うんちゃう?っていうのはあります。(自己負担が)増えるのも困るしね。私らも年金生活なんで、これ以上増えたりしたら、病院にも通えないんで」
【90代 女性】
「もう何十年とお世話になってるからね。(Q.ないと困ります?)そう、困りますわ」
かかりつけ医の未来、しいては私たちの生活にも影響するかもしれない診療報酬の改定。今後の議論はどうなっていくのでしょうか。
■報酬単価の引き下げは実現するのか?
診療報酬を上げるのか、下げるのかをめぐって医療界と財務省での綱引きが続いています。医療界は物価高騰の影響や、賃上げの対策の必要性を訴え、診療報酬を上げて欲しいと訴えています。一方で、財務省は個人の診療所は儲けが多い、単価を上げると国民負担が増えるとして、診療報酬を下げたいとしています。
私たちの生活にどう影響するのかを見ていきましょう。 報酬単価が5・5%引き下げられた場合
【メリット】
・診療所での窓口負担が減ります。
・保険料の負担減(年収500万円の場合、年間で5000円程度)。
【デメリット】
今回の引き下げを提案した、財務省の審議会の小黒一正臨時委員によると、
・地方の体力のない診療所は淘汰される可能性がある、医療の質の低下も考えられる。
医師会と財務省が双方の言い分がぶつかっているわけですが、実現の可能性についてはどうみていますか?
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】
「診療報酬の改定というのは2年に1度行われているので、2年に1度の年末の風物詩みたいなことも言われてるぐらい、攻防はいつも起こるんです。ただコロナ禍以降、少し事情は変わってきているとは思いますが、最終的には政治決着なんですよね。医師会は自民党の有力支持団体なので、自民党が最終的に根本的解決になるような決断ができるかどうか、というところがまだ疑問が残ると思います」
社会保障については課題が山積しています。政局や、国民へのポーズだけではない、実のある議論を期待したいと思います。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年11月28日放送)