北海道・札幌市で「違法な改造車」とみられる車のタイヤが外れ、近くを歩いていた4歳の女の子に直撃し、いまも意識不明の重体となっている事故が起きました。事故を起こした車は違法改造車とみられています。どうしてそんな車が堂々と公道を走っているのか、取り締まりは行われているのかなど交通事故鑑定人・中島博史さんに聞きます。
■改造車は「車検を通すときに適正使用になっていればOK」?
やはり車を不正に改造すると安全性が揺らぎますよね?
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「メーカー側が作っている時に想定していた負荷とは違う負担がかかります。今回の事故だとスペーサーを使ってタイヤを横にはみ出させるような改造をしていますので、そうするとタイヤの回転する軸が変わるので、部品にかかる負担が変わるということで、操作感覚も変わりますし、何かあった時の安全性というのは下がってしまいます」
そもそも違法改造車が車検を通ることができるのかと思いますが、抜け道があるということです。
取材した車販売・修理業者によりますと、車検を受ける前に適合仕様にいったん戻して、車検に出し、OKをもらった後、また改造車に戻すそうです。業者の方によりますと「車検を通すとき元に戻っていればいいという解釈の人が多い」ということです。
実際にこのようなことをする人はいるのでしょうか?
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「そうですね実際にいますし、車検の時だけ適合状態に戻すというのは昔からずっと行われてきている、違法な改造しているところでは、常識として取っている方法です」
修理業者は車検後に改造するということを分かっていて、車検で通すこともあるのでしょうか?
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「分かるといいますか、想像したとしても、例えば『今まで改造していたのが違法だったので車検の時に元に戻してこれで改めました、もうしません』って言われたら業者としては信じるしかないですよね。後を追跡できないので、そういう言い訳が可能である以上、もしかするとこれはまた後で改造し直すかもしれないと思ってもそこで止めることはできないです」
難しい問題なのですね。
■改造車の摘発は難しい
【番組コメンテーター 菊地幸夫弁護士】
「持ってきた車が車検に適合していれば、適合という判断をするしかないです。ですからその後、改造した後に街の中で走行している場面でとらえて摘発するしかないと思います。例えばパトカーとすれ違う場面もあると思うので、今ドライブレコーダーとかがありますので、そういう証拠を使って、ナンバーが映っていれば、これはどこの車だというのは分かりますし、そういう警察のやる気にかかっているのではないかと思います」
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「警察のやる気にかかっているという所はそうだと思います。しかし違法な改造しているからといって、今この時点で事故を起こしているわけではないです。実際に事故が起きてしまっているところなどのもっと緊急性の高いところに人員の配分は重点を置かざるをえない。今、ここで事故が起きていない状態で、それを取り締まるというのは人手と時間がかかりすぎて難しいんだと思います」
【関西テレビ 神崎博報道デスク】
「例えば、明らかに違法な改造されている車がある人の家のガレージに停まっていたとしても、『公道を走るためではなくてトラックで運んでサーキットを走るためだけに改造してる』と言われたら、それを取り締まるわけにもいかないです。違法改造した状態で公道を走っているところを摘発しないといけないということで、警察としてはかなりマンパワーが必要になってくるところです」
例えば私たち一般の人がスマホで動画を撮影して、それを警察に提出するなどはどうでしょうか?
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「警察官ではない人が撮った写真などは証拠としてなかなか難しいです。仮に動画であったとしても、今回の車のようにタイヤが車の幅よりはみ出しているようなものは、目視しやすいですが、例えば、爆音を鳴らしながら走るような車の場合は、実際の音が本当に大きすぎるのかという判断が難しくなります。なのでやはり警察としては、自分たちできちんと証拠を集めた上で取り締まりを責任をもって行うために必要な手順なんだと思います」
■厳罰化することで違法な改造は抑止できるか?
視聴者からのLINE質問です。
‐Q:改造の部品の販売をやめさせることはできないの?
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「改造そのものは違法ではありません。実際に趣味としてサーキットでレースをするような人が改造するのは違反ではありませんし、きちんとトラックで運んで、公道は走りませんということであれば、その改造は違法ではないのです。公道を走った時に違法になるので、公道を走ったら違法になる“部品”を販売するのを禁止というのは、レースをする人にとっては全く不合理な話になってしまいます。なので部品の段階での取り締まりは難しいと思います」
‐Q:改造車を保有・運転した時点で免許停止処分できないですか?
現在は道路運送車両法によって不正改造等の禁止が定められていて、違反すると6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。厳罰化は検討されているのでしょうか?
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「実際に危険なことが起きたことで、あおり運転等での妨害運転罪の設置がされたこともあったので、何らかの対策をするための法整備というのは考えられていると思います。ただ実際に公道を走らない限り違法ではないので、保有したことで処罰というのは難しいです。走行している場合でも、暴走族などについては一斉に摘発するなどはやっているので、可能な範囲で警察の取り締まりをしていると思います。厳罰化したからといって、どれだけ法を守るつもりがあるかという問題になるので、罰則規定だけでは難しいと思います」
厳罰化することによって抑止につながる側面もあるのではないかと思いますがどうでしょうか?
【番組コメンテーター 菊地幸夫弁護士】
「方法としてはベストではないですけれども、考えられる一つかと思います。ただ即効性があるかっていうとなかなか。厳罰があったとしても、やるやつはやるという面は否定できないと思います」
改造車による事故が続いていますから、どうにか取り締まりが行われないかと思うのですが…。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】
「非常に残念なことなのですが、犠牲が出たり、大きな事故になると世論が動いて、法律改正が進むということが今までありました。今回の件を受けて違法改造について法規制を含めて見直す動きになることを願います」
ここまで違法改造車の事故について見てきましたが、実は、これからの時期は改造車じゃなくても脱輪事故に注意が必要です。
■タイヤ交換直後は脱輪事故が多い
大型車の脱輪事故発生件数を月別で見ると、冬タイヤに交換するこれからの時期に多発していることが分かります。また、脱輪事故のうち53%がタイヤを交換した後、1カ月以内に起きています。どうして1カ月以内に脱輪が発生しやすいのでしょうか?
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「タイヤを交換する時にはタイヤは新品かもしれないですけれども、タイヤを固定するボルトやナットは新品ではない場合があります。当然、クリーニングしてきれいにしてから止めるのですが、わずかにホコリとか砂とかが紛れ混んでしまって、きちんとした締め付けの力で締めつけたとしても、そこに挟まっているものがあるとわずかに緩む可能性があります。走っている時の振動等でそれが削れていって、それがわずかな緩みになり、それが続くことで大きく緩んでしまうことがあります。ですのでタイヤを交換したら100キロ前後走ったところで増し締めをしましょうということです」
ボルトを締め直すということをしないと脱輪してしまう可能性が出てくるということですね。
もし脱輪してしまった場合、道を歩いている人の背後からタイヤが迫ってくることがあれば気が付けるものでしょうか?
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「タイヤはゴムですので転がっているときは、特に舗装道路だとほぼ無音です。市街地を走るぐらいの速度域だと音で気付くということは、まず不可能だと思います。見えていたとしても、タイヤが転がってくるなんてことは普通に想定できていないので対応が難しいところを、後ろからというのは音でも気づけないので、身構えずに衝突してしまうことになります。それで余計に重大な結果につながりやすいです」
■違法改造車での事故は保険対象外?
視聴者からのLINE質問です。
-Q:違法改造車で事故を起こした場合、保険適用される?
【交通事故鑑定人 中島博史さん】
「程度にもよりますが、明らかに危険を生じるような改造してしまっていると、保険会社の方で補償しませんよというようなことまでありえます。ですので違法な改造する人たちが、どれだけ事故を起こした時に補償する気持ちがあるのかというところも問題になります。不正な改造をしていると、万一事故を起こした時には、保険も使えない可能性もあるので、そのような改造はしないでほしいです」
車は走る凶器になることもあります。安全性が損なわれる改造は絶対にやめていただきたいと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2023年11月16日放送)