「奈良のシカ」保護施設で虐待? 奈良の鹿愛護会は「エサは与えている」と虐待を否定 保護したシカが死ぬ例はあるが「原因は病気やストレス」 通報した獣医師は「見て見ぬふりできなかった」 2023年10月03日
「奈良のシカ」を保護する団体の施設で、シカにエサを与えないなどの虐待が行われているという通報があったことがわかりました。保護団体は、虐待について否定しています。
奈良県と奈良市は2日、「奈良の鹿愛護会」に所属する獣医師から、「会が保護したシカに虐待が行われている」旨の通報があったことを明らかにしました。
「奈良の鹿愛護会」は、奈良公園や、その周辺に生息する国の天然記念物「奈良のシカ」の保護に取り組んでいます。 また、会の施設「鹿苑」には、奈良公園から遠く離れた場所にいたシカや、農作物を荒らすなど人に被害を与えたシカを保護する「特別柵」と呼ばれるエリアがあり、およそ240頭が収容されています。
奈良県・奈良市によると、この獣医師からの通報は、「特別柵」に収容されているオスのシカは、十分なエサを与えられておらず、通常の奈良のシカと比べて体重が軽くなっていて、毎年およそ50頭以上が死んでいる、と指摘しています。
これについて2日、奈良の鹿愛護会 山﨑伸幸事務局長が取材に応じ、「今回言われているような問題は一切ございません」と虐待の事実を否定しました。
また、特別柵では衰弱して死んでしまうシカもいるものの、その原因は病気やストレスであり、エサを与えていない事実はないと主張しました。
愛護会の山﨑事務局長は「“動物の命は尊いので一頭も殺してはいけない”との趣旨に十分に対応できないことも中にはある」とした上で、「毎日エサをあげ、掃除をして、水をやり、そういったことを日誌につけてルーティーンをもってやっている」と述べました。
一方、通報した獣医師の丸子理恵さんは2日、取材に応じ次のように話しました。
「保護されてる雄ジカは一般に目につかない場所に収容されていて、ボランティアなど一部の人しか関わらない。エサも値段の安い、嗜好性の低いもの食べている。長くて数年、短くて1カ月以内で死んでしまう。施設に来た時は健康なのに、体重が半分になったりする。改善しないといけないと思っていた。動物を扱うものとして見て見ぬふりできないので通報した。最初は内部で解決したかった。話し合いでエサを増やすことなどを合意することができたら良かったが、賛成がゼロに近かった」
通報を受けて、奈良県が調査チームを立ち上げたほか、奈良市は3日、職員や獣医師らと施設の立ち入り調査を行う方針です。
(関西テレビ 2023年10月2日)