ジャニー喜多川前社長による性加害 「思春期少年に対し、頻繁かつ常習的に繰り返していた」と認定 外部専門家チームの踏み込んだ内容にジャーナリストも被害者も驚き 「藤島ジュリー景子社長は辞任すべき」との指摘も 2023年08月30日
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長による性加害問題を巡り、外部の専門家チームが、8月29日午後4時から会見を行いました。調査の結果、多数のジャニーズJr.に対し、長期にわたって性加害を繰り返した事実が認められたと発表しました。
【再発防止特別チーム座長 林真琴弁護士】
「本日、再発防止特別チームはジャニーズ事務所に対して、ジャニー喜多川氏の性加害問題に関する調査報告書を提出しました。ヒアリング結果を踏まえ、特別チームはジャニー氏が自宅や合宿所やまた公演先の宿泊ホテル等において、ジャニーズJr.を含む多数の未成年者に対し、一緒に入浴したり、一緒に寝たり、キスをしたり、体を愛撫したり、また性器をもて遊び口腔性交を行ったり、あるいは肛門性交を強要するなどの性加害を行っていたことを認めました」
「ジャニーズ事務所においては1970年代前半から2010年代半ばまでの長期間にわたり、多数のジャニーズJr.に対し、広範に性加害を繰り返していたことが認められました。ジャニーズJr.の間ではジャニー氏から性加害を受ければ優遇され、これを拒めば冷遇されてしまうという認識が広がっていたという供述が得られました。一連の性加害は、ジャニー氏がこういった被害者の心情に付け込んで行っていたものと評価しております」
ジャニーズ事務所は、元検事や精神科医など外部の専門家による再発防止特別チームを今年5月に立ち上げ、被害を訴える人など41人にヒアリングを行い、3カ月間調査してきました。29日、ジャニー前社長の性加害はあったと明らかにした特別チームは、被害者のヒアリングから少なく見積もって数百人の被害者がいるという証言を複数から聞いたと報告書にまとめました。
【再発防止特別チーム 飛鳥井望精神科医】
「ジャニー氏が20歳ごろから80歳半ばまでの間、思春期少年に対する性加害を間断なく、頻繁かつ常習的に繰り返していた事実が、ジャニー氏には顕著な性嗜好異常、いわゆる“パラフィリア”が存在していたものと認めます」
今年5月、動画で謝罪をした藤島ジュリー社長。ジャニーズ事務所は長らくタレントのプロデュースをジャニー喜多川前社長、会社運営の全権を姉のメリー喜多川さんが担っていたことから、性加害については「知らなかった」と釈明していました。特別チームはジャニーズ事務所がとるべき対応も指摘しました。
【再発防止特別チーム座長 林真琴弁護士】
「ジャニー氏の性加害が事実であることを認め、真摯に謝罪することが不可欠であります。ジュリー氏が経営のトップのままでは、今後、社員・役職員の意識を根底から変えて、ジャニーズ事務所が再出発することは極めて困難であると、私たちは考えます。したがいまして、ジャニー氏の性加害の事実を巡る対応について、ジュリー氏において取締役としての任務の怠りがあったということも踏まえ、今後ジャニーズ事務所が解体的な出直しをするためには、経営トップである代表取締役社長を交代する必要があると考えます」
■外部専門家チームの会見を“生”で聞いたジャーナリストに聞く
ジャニーズの性加害問題について取材していて、外部専門家チームの会見も現場で聞かれたジャーナリストの松谷創一郎さんに聞きました。
まず29日午後4時から始まった会見を聞いて、どんな印象を持ちましたか?
【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「正直非常に驚きました。われわれが想像していた以上に、かなり具体的に、しかも古い時代から細かく、踏み込んで発言・提言をしていたことに非常に驚きました」
29日の外部専門家チームによる会見を、5つのポイントに分けて整理します。
[ポイント1]
“調査の規模”が明らかになっています。
・調査期間は5月26日から8月29日までの約3カ月
・ヒアリングの対象は合計41人 内訳は被害者23人、ジャニーズ事務所関係者18人(ジュリー社長、チーフマネージャーなど)
ヒアリング対象の人数についてどうみますか?
【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「ジャニーズ事務所の関係者はヒアリングしやすいです。しかしヒアリングした被害者が23人というところに非常に驚いています。なぜかと言うと、私が把握している範囲内ですと被害者は10人程度だったからです。まだ私たちが把握してない段階、名乗りを上げてない人たちにも広範に調査をしているということが『23人』という数からも分かります。ですから短い3カ月の期間に、かなり調査に力を入れたんだろうとうかがえます」
■性加害の“事実認定“ ジャーナリストも驚くほどの「踏み込んだ言及」
[ポイント2]
性加害があったのかどうか“事実認定”についてです。
・ジャニー氏がジャニーズ事務所において、 1970年代前半から2010年代半ばまでの間、 多数のジャニーズJr.に対し、性加害を長期間にわたり繰り返していたことが認められる。
・広範囲に性加害が行われ、少なく見積もっても数百人の被害者がいるという複数の証言が得られた。
専門家チームの性加害の事実認定について、かなり長期間であることや、多くの被害者がいることが判明しました。
【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「われわれは予想していたんですけれども、証拠がなく、証言しかない中で、ここまで踏み込んで言及をしたということに関して驚きました。少なくとも数百人ということです。会見の最後の方で、『これからも救済をするための組織を作って、そこに声をあげてくる人がいるので、最終的にどのぐらいの被害規模になるかは、専門家チームも想定できない』と。被害規模を把握した段階で救済を始めるのではなく、今の段階でこのぐらいはいるだろうという想定まで踏み込んで発言したということは、今後救済の道を開くためにも必要だったので、踏み込んだなと思います」
[ポイント3]
性加害が拡大した理由です。
ジャニー氏について、20歳から80歳代半ばまで間断なく、頻繁かつ常習的に繰り返されたのは、ジャニー氏の個人的性癖としての性嗜好異常(パラフィリア)に他ならない、としています。
【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「『20代から80代半ばまで行われた』ということで、ジャニー氏が20歳の時に加害行為をしている被害者の方にもおそらく調査をしています。これはジャニーズ事務所の問題ではなく、事務所が設立される前の問題です。ジャニー喜多川という人物がどういう人であったのか、ということを専門家チームがちゃんと確認をしようとしたからこそ、そこを調査したということです。ここに踏み込んだということは、専門家チームはかなりやる気を持っていたことがうかがえて、ここまで踏み込んだということに驚きました」
またジャニー氏の4歳上の姉、メリー氏については、外部に対してジャニー氏を守り切るために徹底的な隠蔽を図ってきた。このメリー氏の対応が“被害拡大の最大の原因”になったとしました。
【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「ないないに私は一部つかんでいました。特にメリー氏が、ジャニー氏を非常に溺愛して、守ろうとしていたという話は聞いていました。ただこれを調査結果としてはっきり報告書に書いたということ自体は驚きました。本当に専門家チームが調べた結果として、やはりそう専門家が認識をして、認定したということですね」
「メリー氏は、ジャニー氏と二人三脚でジャニーズ事務所を運営されてきた。彼女が徹底的にジャニー氏を守るための策を、内部にも外部にも、非常に強圧的に行っていたということは、私とかは指摘していたので分かっていたことです。けれどもこれをある種ジャニーズ事務所が頼んだチームが認定をした、言及をしたということは、私なんかも本当に驚いてます。つまり今回そこまで踏み込んで、専門家チームが本気でやると思っていませんでした」
■ジャニーズ事務所関係者は“見て見ぬふり”か
[ポイント4]
ジャニーズ事務所関係者やジュリー社長は性加害の事実を知っていたのでしょうか。
・事務所関係者について 証言によると「事務所スタッフが『デビューしたければ我慢するしかない』」と発言していたとして、マネージャーやスタッフが性加害の事実を認識している者が相当数いたと考えられるとしました。
・ジュリー社長について 1998年の暴露本そして1999年の週刊誌で性加害の疑惑を認識していたと認められる。しかし積極的な調査はしてこなかったとしました。
【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「ここはちょっとニュアンスが細かくあります。うすうす知っていたけれども、積極的に自分たちで調査をしようとはしなかったというニュアンスなんですね。一言で言うと、見て見ぬふりをしていた。ジャニー・ メリー独裁体制のような会社組織でしたので、そこに対して何か意見をするということが非常にしにくいんです。それはジュリー現社長がメリー氏の娘だからといって言及しやすい体制ではなかったということはあります。もちろん知らないっていうのは議論になるところですが、知っていたとしても知らなかったとしても当時の幹部である以上、そこを見て見ぬふりをしていれば責任は問われるべきです」
今年5月にジャニーズ事務所が公式ホームページで動画を配信し、藤島ジュリー景子社長自らが、「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」「会社運営に関わる重要な情報は全社で共有されることはなく、2人(ジャニー喜多川氏、メリー喜多川氏)以外には知ることのできない状態が恒常化していました」と説明していました。
ここは専門家チームの会見と相違があり、今後ジャニーズ側が会見を開くとも言われていますので、その場でどう説明されるのでしょうか?
【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「本人(ジュリー氏やジャニーズ事務所幹部)たちにとってはすごく厳しいでしょうね。『事実としては知らなかったけれども、うわさとしては知っていた』みたいな言い方をするんじゃないでしょうか。ただ知っていなかったとしても、幹部である以上はそこに責任が生じると考えられます。ですから、知らなかったか知っていたかということに、そんなに強く捉われるべきではないと思います」
[ポイント5]
そして今後のジャニーズ事務所についても言及がありました。
・ジュリー社長はこれまでの性被害を「なかったこと」にするという意識を改めることがなかった。
・ジュリー社長がトップのままでは、再出発を図ることは極めて困難。解体的出直しをするためにはジュリー社長は辞任すべきであるとしました。
■性被害を訴える元ジャニーズJr. 専門家チームの会見を受け「正直驚いています」
【元ジャニーズJr. 二本樹顕理さん(40)】
「特別チームが切り込む形で、提言を行っていただいた印象に、正直私自身驚いています。性被害があったという証明の難しさであったり、事務所の役員とかスタッフが性加害が起こっていたことについて知らなかったと“しら”を切り続けると言いますか、そうしたことをずっと懸念していたので、全てこの項目に分けて(報告書に)あげてくださった。それに対しては本当に被害者たちの視点をきちんと組んでくださっているのかなといった印象を受けております」
(Q.藤島ジュリー社長の辞任提言についてどう思うか?)
「ただ辞任してしまえばいいというものでもないと思います。やはり組織のトップとしての説明責任を最後まで果たして、その上で被害者たちの救済にどのようにあたっていくのかというのを、しっかりと取り組んでいただいた上で、決定していただきたいという思いはあります」
■Qタレントへの影響は?→Aジャニーズ事務所が強硬な態度だとメディアが許さない
ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問です。
「Q.ジャニーズのファンです。タレントへの影響が気は?活動制限されたりする?」
【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「ジャニーズ事務所が、来週だと思いますが、記者会見をして今後の対応を発表します。その対応次第でチャイニーズ事務所のタレントを起用しているメディア企業、スポンサー、広告会社とかが判断をすることになると思います。もしそこでジャニーズ事務所が非常に強硬な意見、例えば物証はないとか時効があるということで法的に認められない可能性を盾に突っぱねていくようなことがあれば、おそらく彼らを起用するメディア企業がさすがにもう許さないであろうと思います。加えてそういう会社にタレントたちが残らない、タレントが離反していくと思います」
もう1つ質問です「Q.性加害問題の補償などどうなりますか?」
【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「補償に関しては、今回の提言の最後の方で、また新たに補償するための組織を作って、今後もある程度恒常的に補償していかなければいけないと提言しています。補償の内容なんですけれども、一律にどうこうとはならないと思うんです。求めているものとか被害の程度というものは個人によって違います。それによってケースバイケースとしか言えないんですね。ただもしジャニーズ事務所が、例えば『300万円で補償します』みたいな、非常に不遜な態度をとるようなことがあれば、次はまた別の訴訟等に発展する可能性があると思います」
ジャニーズ事務所側は現時点でまだ性加害の事実を認めてはいませんが、これを認めて、そして謝罪、さらにその後の補償という段階までしていくのかどうかというところで、まずは今後行われるとみられるジャニーズ事務所側の会見が注目されます。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月29日放送)