大阪府の吉村知事が掲げる高校授業料の「完全無償化」案について、私立高校と知事との、初の会合が9日午後4時半から開かれました。この会議で大阪府と私立高校側は、府が8月に提示した修正案で合意しました。
会議後の記者会見で、大阪府の吉村知事は私立高校側と合意できたことについて次のように述べました。
【吉村洋文知事】
「高校教育の授業料の完全無償化を目指すことに、大きな一歩を歩むことができたことを本当に嬉しく思いますし、これが大阪の子供たちの未来になれば、という思いでこれからも進めていきたいと思います」
授業料完全無償化の案をめぐっては、今年5月に大阪府が素案を発表。この素案は、現在所得制限を設け国と府の補助と学校の負担で行っている授業料の無償化について所得制限を撤廃し、親の所得に関わらず、すべての生徒について60万円を超える授業料を学校が負担するというものでした。
しかし、私立高校の負担が現在より合わせて7億5千万円ほど増える案だったため、私立高校や保護者団体は教育の質が低下するなどとして、反対の声を上げてきました。
■ 反対の声を受け…吉村知事が修正案を提示
こうした声を受け、吉村知事は今月4日、補助する授業料の上限を60万円から63万円に引き上げ、さらに教員の人件費などにあてる経常費助成を2万円ほど増やす修正案を発表しました。大阪府の試算では、この修正案によって現在の制度に参加する96校のうち94校が現在よりも負担が少なくなるとしています。
吉村知事は4日の会見で、「財源については増税も借金も増やすことなく生み出せる、その範囲内で設定した」と話していました。
一方で府内すべての私立高校でつくる団体は、新たな案について前向きに検討するとしていますが、府と協議を継続する方針を示していました。
【興国高校・草島葉子校長】(4日)
「大阪から1つの教育を発信したいという知事のお気持ちにどこか寄り添っていける部分はないかと」
【金蘭千里高校 辻本賢理事長】(4日)
「(授業料の)価格統制ですよね。それについての問題は残ったままなんですよ」
■ 知事と私立高校側との初会合 修正案の合意なるか
そして9日、大阪府内全ての私立高校でつくる団体と吉村知事との初会合が午後4時半から開かれました。初めての顔合わせとなりましたが、私立学校側は、「知事の気持ちに寄り添う」姿勢を示しました。
興国高校の草島葉子校長は会議で次のように発言しました。「現行の学校全て、推進校の中に入るという形で、総会を経て、今この場に来ておりますので、知事の気持ちに寄り添えたかと思います。合意ができたということで、私たち約100校ぐらいある私学は、日本で初めて完全無償化に踏み込んでいくという大きなステージに進めるのではないか」
吉村知事からは今後も年1回程度、こうした私立高校側との意見交換を実施したいという発言がありました。 終了後の記者会見では吉村知事、私立高校側双方が合意を歓迎する言葉を述べました。
【吉村洋文知事】
「基本的なところ(制度案)は9日、フィックスしたとご理解していただいて結構です。8月中にきょうの案をもとに成案化します」
【金蘭千里学園・辻本賢理事長】
「この問題は理念の問題。吉村知事がおっしゃっている、所得制限なしの完全無償化については、まだまだ私どもとしては考え方があるということ。本当に知事にいろいろ考えてもらったということによりまして、高校としてはそういう方向です」
【興国高校・草島葉子校長】
「経常費の補助金のところなんですが、『お金』ではなくて、知事の考え方の中に私学に通う子供たちみんなに良い教育をしてやってほしいと。この観点は今までなかった。本気で教育日本一を目指されるのだなと」
大阪府の高校授業料「完全無償化」は、一つの関門をクリアし、次の段階に移行することになります。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月9日放送)