環境に優しい“未来の車” 電気だけじゃなく水素をエネルギーにした「燃料自動車」や二酸化炭素×水素の「人工ガソリン」も クラシックカーを電気自動車に!? 2023年07月29日
最近、街中で電気自動車を見かける機会も増えてきました。その一方で、また違った方法で環境に優しい車もあるようです。
未来の車の姿を取材しました。
■世界で一番売れている電気自動車「中国のBYD」 日本では軽が人気!
ことし大阪で開催されたイベント「大阪オートメッセ」。多くの自動車メーカーや部品メーカーがブースを出展する中、中国の電気自動車メーカーも出展し、多くの人でにぎわっています。
中国の新興自動車メーカー「BYD」。BYDによると、2022年の販売台数は186万台、「世界一売れている」電気自動車です。
「BYD ATTO3(アットスリー)」は本体価格440万円から(国の補助金活用で355万円)。この値段でも、電気自動車としてはかなり安い価格です。ことし、日本に進出してきました。
【試乗した来場客たち】
「家の車はエンジン音がすごいけど、これはめっちゃ音がしない」
「電気自動車でこの値段というのを考えると、非常に質感は高いかなと感じます。日本車も頑張らないと大変」
では、迎え撃つ日本のメーカーは、日産自動車の、軽の電気自動車「サクラ」。2022年6月の発売以来、1年間でおよそ3万8000台売れています。
【兵庫日産 高倉台店 森田美穂さん】
「(国内で)去年一番、電気自動車で売れた車です。たくさん好評いただいてうれしい限りです。5月にかなりうちのお店でもサクラが売れた。他の軽自動車よりもサクラの割合の方が多かったです」
実際に、記者がサクラに試乗させてもらいました。
【鈴木記者】
「『坂道』を感じない。軽自動車って坂道を『頑張って上る』、『ウーン』って上るイメージがある」
【兵庫日産 高倉台店 森田美穂さん】
「それが本当に覆る車だと思います」
電気自動車は重たいバッテリーが床にあって重心が低くなります。そのため、車高が高くても乗り心地が安定しています。
【鈴木記者リポート】
「軽自動車とは思えない静かさとパワー、なんか高級車に乗っているような感じがしました」
フル充電した場合の走行距離は180キロ。一般的な軽自動車の5分の1ほどと、短めに感じますが…
【兵庫日産 高倉台店 森田美穂さん】
「一般的に軽自動車を持っている方で1日の走行距離はおよそ50キロ。(旅先で)お土産見ている間に充電しようかとか、ご飯食べている間に充電しようかっていう、意外と思ったより有効に時間は使えるので、マイナスなイメージっていうのはあまりないのでは」
サクラは本体価格254万円からと、軽自動車としては高いですが、国の補助金を使えば200万円を切ります。
■水素をエネルギーに!燃料電池自動車 神戸市長が公用車に使用
神戸市役所にやってきた1台の車。降りて来たのは…
【鈴木記者】
「おはようございます。この車ってどういう車なんですか?」
【神戸市 久元喜造市長】
「これは燃料電池自動車、トヨタのミライ。燃料電池自動車なので、水素エネルギーを使っています」
神戸市が市長の公用車として、2021年に導入した燃料電池自動車。
水素を入れると、化学反応を起こして電気エネルギーを発生させ、モーターを回して走ります。そのため、二酸化炭素は全く出ません。出るのは水だけという、究極のクリーンエネルギーなのです。
【神戸市 久元喜造市長】
「水素エネルギーの導入っていうのは、これはもう地球規模で進めなければいけない。国際都市・産業都市でもあり、また消費都市でもある神戸としては絶対にやらなければいけないことなんですね」
神戸市ではことし4月から、水素を使う燃料電池バスも導入。また、使い道のなかった石炭の一種「褐炭(かったん)」から安く水素を作る技術が確立され、さらにその水素を日本に運ぶ専用の船や基地もできました。
これらがそろう神戸市は、まさに水素の先進都市なのです。
■次世代エネルギーとして期待! 二酸化炭素×水素で「人工ガソリン」
さらに、環境に優しい水素を使った、驚きの研究も。石油の会社ENEOSの研究所にやってきました。この建物の中に秘密があるそうなんですが…
【鈴木記者リポート】
「危険物を扱う施設ということでテレビカメラが入れません。特別なタブレットを借りて撮影します」
中に入ってみると、おびただしい数の配管がありました。その一角に、何やらタンクのようなものが見えます。
【ENEOS中央技術研究所・大内太さん】
「こちら『反応器』とよばれるもので、こちらに触媒が詰まっております。こちらで化学反応が進行致しまして、炭化水素=合成燃料が作られます」
「合成燃料」とは、すなわち「人工のガソリン」。これが、夢のエネルギーとして注目されているのです。
【ENEOS中央技術研究所・早坂和章さん】
「原料は二酸化炭素と水素。それ以外の一切の不純物を含みませんので、エンジンでこれを燃焼した場合も、二酸化炭素と水以外の環境を悪化させるガスは発生しない。環境にも非常に優しい燃料と考えています」
もちろん燃やすので二酸化炭素は排出されますが、それを集めて原料として使うので、トータルの二酸化炭素の排出はゼロ。
トラックの軽油や飛行機のジェット燃料も作れるそうです。まだ大量生産はできません。経産省の試算では、今はガソリンの4倍以上、1リットル700円ほどのコストがかかります。
これを200円程度まで下げて2030年ごろに販売するのが目標で、ENEOSはことし5月、通常のガソリンと混ぜて車を走らせる実験にも成功しています。
【ENEOS中央技術研究所・早坂和章さん】
「現在の石油製品の規格を満足するようなものを作りますので、今までお使いいただいている自動車、エンジン含めて、既存のモビリティ(乗りもの)へそのままの適用が可能です」
■今あるガソリン車を大切に乗るのも…選択肢の一つ
今までのガソリン車が生き残るかどうかで運命が大きく変わる会社が、大阪市内にあります。
【日本精機・高橋祐子社長】
「電気自動車になったら、私たちはお役御免になりますね。全く必要じゃないですから。本当に極端な方には『いつまでお商売されるんですか?』みたいに聞かれたりするんですけど」
こちらの日本精機は、エンジンでしか使わない「バルブ」という部品を作っていて、世界のおよそ70カ国と取引しています。
丈夫な日本の車は、部品を交換しながら長い間使えるといいます。
【日本精機・高橋祐子社長】
「30年前、40年前の車の部品に対しても今でも供給するんですよね。ていうことは40年間乗り続けられるっていうことの証明なんですよ。だからSDGsでいったとき、どっちがSDGSになるのかなあっていう…だって私らのこの部品、『換えたら走る』っていうんですもん。私はすごいと思いますよ」
環境に優しいガソリンがあるならば、今ある車を大切に使い続けることも、1つの選択肢になるかもしれません。
■クラシックカーをエコカーに! 既存の車を電気自動車に
そして、ちょっと変わった選択肢もあります。次に紹介するのは、古いフォルクスワーゲン。この車、エコカーというより、クラシックカーですが…
【オズモーターズ・古川治代表】
「実は電気自動車に改造してあるんですよ」
【鈴木記者】
「改造ってどういうことですか?」
【オズモーターズ・古川治代表】
「この車は元々後ろにエンジンがある車なんですけども、その部分に今、モーターが載っています」
エンジンルームには…エンジンではなく電気モーターが!その名も「コンバートEV」、どんな車でしょうか?
【鈴木記者】
「不思議な感覚です…」
【オズモーターズ・古川治代表】
「(ガソリン車のままだと)ノーマルで4人乗せたら、時速20キロでしゃべれないですよ、うるさくて。エンジンの音で。後ろのエンジンから熱が上がって室内が暑くなってくる」
電気だからエンジンの音も熱もなく、快適そのものです。車に合わせた大規模な設計が必要で、1台500万円からという新車が買える値段ですが、全国から問い合わせが絶えません。
この日も、はるばる神戸からやって来た車・「富士重工・スバル360(1958~1970)」が電気自動車に変身していました。
【オズモーターズ・古川治代表】
「1990年代以前の車は、非常にデザインが個性的なものが多くて。多くの人を魅了するデザインの車が多いかと思います。コンバートEVの利点としては、本来捨てられるべき車体をもう一度使えるってことですよね。電気自動車に興味がある方は、環境への配慮を考える方が多いので、そういう形での喜びも生まれてくるかと思います」
未来の車は、環境に優しい車。そのアプローチは様々です。多様性に富んだ、夢のある車に乗りたいものです。
(関西テレビ「newsランナー」7月24日放送)