無人駅で“ボランティア”の駅長 元JR職員が「名誉駅長」に就任 駅周辺の清掃や利用客の見守りで「地域とのパイプ役に」 厳しい赤字ローカル線では多くが“無人駅” 全国では5割 2023年07月20日
兵庫県香美町にあるJR山陰線の無人駅で、利用客の見守りなどを担う名誉駅長が誕生しました。
利用者が減り、無人駅が増えるローカル線で課題となっているのが「地域とのつながり」。これをどう維持していくのか関心が高まっています。
■元職員が「名誉駅長」に 清掃や見守りを実施
7月18日、兵庫県香美町にあるJR山陰線の佐津駅では、元JRの職員で駅の近くに住む八木崇行さん(74)が、JR西日本から名誉駅長に任命されました。
佐津駅は100年以上前に開業し、地元の人や民宿の利用客に親しまれてきました。しかし、利用客が減り続け、40年ほど前から無人駅に。
JR西日本は、無人駅での地域とのつながりを維持しようと駅の清掃や利用客の見守りをボランティアでする「名誉駅長」の制度を設けていて、八木さんの任命は兵庫県では4駅目、山陰線では今回が初めてです。
名誉駅長として働く時間は決まっていませんが、八木さんは空いている時間に駅の掃除や通学で駅を利用する学生の見守りをしたいとしています。
【八木崇行さん(74)】
「佐津駅は、昔はにぎやかで私にとっては遊び場でした。無人化されてからは寂しかったですね。駅に駅長など誰もいなくなって。名誉ある駅長に指名していただいて責任重大だと思うので、地元とJRのパイプ役として、良くなるようなことを進めていきたい」
佐津駅を含む区間のJR山陰線の城崎温泉-浜坂駅間は、人口が減り続けているのに加えて、高速道路の整備も進み、利用客が過去25年で6割以上減少。
この区間ではほとんどが無人駅となっていて、JR西日本は維持が難しい赤字の路線の1つとして公表しました。
JR西日本は「地元の声を届けていただき、(名誉駅長と)一緒になって地域を盛り上げたい」としています。
■全国で増える無人駅 国がガイドライン策定
国土交通省によると、無人駅の割合は2020年3月時点で全国の約48%となっていて、年々増える傾向にあります。
そのため無人駅がある地域からはサービスの低下や安全性を懸念する声もあがっていて、特に車いすの人や視覚・聴覚障害がある人が利用する場合に、無人駅では「券売機や改札の位置がわからない」、「点字ブロックが整備されていない場合、声かけが必要」などの意見が国に寄せられていました。
これらを受け、国は去年7月に無人駅の利用に関するガイドラインを策定し、無人駅での環境整備や地域との連携などの取り組みを進めていくよう、鉄道事業者に示しています。
鉄道事業者は利用者の減少などで経営体制の見直しが迫られる中、駅の無人化がやむを得ない場合でも、可能な限りすべての人が不便なく鉄道を利用できるよう、無人駅の運営をどう進めていくか検討を続けることが求められます。
(2023年7月20日 関西テレビ記者 鈴村菜央)