重症化ケースも…「はしか」流行の兆し 空気感染ルートもある“最強の感染力” 「身を守るにはワクチン接種2回望ましい」コロナなど感染症専門の阪大・忽那教授に聞く 2023年06月06日
極めて強い感染力で、最悪の場合には死に至ることもある感染症「はしか」が、3年ぶりに流行の兆しをみせています。“正しい恐れ方”などについて感染症が専門の大阪大学の忽那賢志教授に聞きました。
■ はしかの発生状況は?
はしかは2019年に流行して744件が確認されましたが、新型コロナウイルスが確認された期間は10件程度と減少しました。しかし今年は、1月から5月までの5カ月間に12件、確認されています。
【大阪大学・忽那賢志教授】
「新型コロナウイルスが流行している間は少なかったです。今年は人の移動もあるために、増えてきているのだと思います」
また、今後はしかの感染が増える可能性として、次のような2つの原因が考えられています。
▼コロナ禍が収まりインバウンドが増えることで、ウイルスが持ち込まれやすくなる
▼1歳で受ける、はしかのワクチン接種率が減少している
―Q:国の接種目標が95%であるのに対して93.5%と下回っていますが、ワクチンの接種率の減少の理由というのは何があるんでしょうか?
【忽那賢志教授】
「本当の理由はわかりませんが、新型コロナの流行時期は医療機関への受診控えが起きていたので、ワクチン接種にも影響が出ているのではないかと考えられます」
【関西テレビ・加藤さゆり解説デスク】
「伸び悩む現状はあると思います。日本だけではなく、海外でも予防接種の接種控えが起きています。ユニセフなどによると、途上国でワクチンの接種率が下がっていると注意喚起しています。海外から日本に持ち込んでしまう可能性もあります」
■ 正しく怖がる「はしかの感染力」
はしかは、空気感染や飛まつ感染、接触感染など感染ルートが多く、同じ空間にいるだけでほぼ確実に感染するといわれています。はしかの感染力は1人から、12人から18人にうつるとも言われていて、1人から3人にうつるインフルエンザよりも感染力がはるかに強いです。
―Q:マスクなどをしていても防げないくらいの感染力なのでしょうか?
【忽那賢志教授】
「感染していない人がマスクをして身を守れるかというと、空気感染なのでマスクの隙間を通って感染する可能性があります。一方で、感染者がマスクを着けることで周囲にウイルスを飛ばさない効果はあります。ただ、免疫がない人であれば感染させる可能性が非常に高く、非常に感染力が強い感染症となっています」
―Q:新型コロナウイルス以上の感染対策をするべきなのでしょうか?
「いいえ、免疫のある人は感染することはない。まずはワクチン接種歴があるかを確認してもらうのが一番良いかと思います」
番組公式LINEに、視聴者からの質問が届きました。
【視聴者からのLINE質問】
「今後コロナみたいに、はしかが大流行する可能性ありますか?」
【大阪大学・忽那賢志教授】
「基本的にそこまで広がることはないと見ています。なぜなら80%後半の人は麻疹(=はしか)に対して十分な免疫があると考えられているためです。ただ一部の人は免疫がないため、その方が感染しないようにワクチン接種歴を確認してもらい、接種していなければ接種してもらうのが良いかと思います」
■ はしかになったどんな症状が出てくる?
はしかに感染した場合、「39度以上の高熱」、「全身に発疹」、「せきや鼻水」、「目の充血や目やに」、「口内に白い斑点」などの症状が出てきます。
またはしかによる合併症には、肺炎や中耳炎、脳炎などがあり、1000人に1人の割合で死に至ることもあるということです。特に妊婦の人は注意が必要で、感染すると早産や流産の恐れがあります。
―Q:重症化するリスクはどれぐらいあるのでしょうか?
【大阪大学・忽那賢志教授】
「部分的に免疫を持っている人にとっては、『修飾麻疹』といって軽症になった感染をすることがあります。免疫がない人は、6人に1人の頻度で入院が必要になったり、1000人に1人ぐらいが死亡したりする可能性があり、重症化しやすいと言えます」
―Q:また、ワクチンを打てない乳幼児を抱える親ができることは何があるのでしょうか?
「小さい子どもは出産後しばらくは、母親が持つ麻疹の免疫があります。ただ1歳になると免疫がなくなるので、1歳になるころにはワクチンを打った方が良いです」
【視聴者からのLINE質問】
「はしかと風疹はどう違うのですか?」
【忽那賢志教授】
「非常に似ていますが、少しずつ症状が異なります。例えば、風疹は首の後ろのリンパ節が腫れ、はしかの場合は手にも発疹がでてきたり、目やにが多かったりなどの特徴があります。基本的には、はしかの方が症状が強くなると一般的に言われています」
■ 予防はこれしかない「ワクチン2回接種」
ワクチンについては、世代によって違いがあります。50歳以上は定期接種の対象ではなく、33歳から50歳まではワクチン1回の定期接種の対象でした。一方で33歳以下の人は、基本的にはワクチン2回の定期接種の対象です。
―Q:33歳以上の方は、はしかにかかるリスクが高いということですか?
【忽那賢志教授】
「ワクチンを1回接種している人でも、多くの人は免疫はあると考えられていますが、中には1回だけだと不十分の人がいます。2回接種してもらうか、抗体検査をしてもらうのが良いと思います。50歳以上の人もはしかにかかったことで多くの人が免疫があるのですが、免疫があるかどうかはやはり抗体検査をすることが重要です」
抗体検査を5000円ほどで実施している病院もあります。また、6000円ほどでワクチン接種を受けることもできます。(いずれも取材した病院での金額)
―Q:抗体検査をしてからワクチン接種をする流れが良いでしょうか?
「感染したかどうかが不確かな人やワクチンの接種回数が不確かな人は、抗体検査をしても良いと思いますが、感染したことがないことが分かっている人や接種回数が分かっている人はいきなりワクチンを接種してもらってもよいと思います。2回接種していれば感染する可能性はかなり低くなります。少し前までは検査に基づかない症状だけの診断も行っていたので、実は風疹だった可能性もあります。本当にはしかだったか不確かな人は、抗体検査をしてください。それで、抗体がなければワクチン接種してください」
(2023年6月6日 関西テレビ「newsランナー」放送)