岸田首相が爆発物を投げつけられた事件。逮捕された木村容疑者は、政治への強い関心をうかがわせる言動をしていたことが、取材で明らかになりました。事件の計画性、そして動機について検証します。
【記者リポート】
「事件発生から3日たち、現場では朝から警察が、海の中に爆発物の破片などがないか、捜索を始めました」
18日、和歌山市の雑賀崎漁港では、数十人体制で捜索が行われました。捜査関係者によると、現場で爆発した筒状のものが、40メートルほど飛んでいたことが分かっていて、警察は爆発物の殺傷能力の有無を調べる方針です。
■犯行の計画性は? 前日に知らされた岸田首相の演説にタイミング合わせ襲撃
逮捕された木村隆二容疑者(24)。どこまで犯行は計画的に行われたのか。取材で集まってきた情報や映像から、少しずつ分かってきたことがあります。
今回、岸田首相が行った選挙の応援演説。現役首相が応援演説を行うのは、安倍元首相の銃撃事件以降、9カ月ぶりでした。自民党関係者によると、岸田首相が漁港にやって来ることを一般に知らせたのは、事件前日の14日午後2時ごろ。木村容疑者もそのタイミングで知り、爆発物の製作を始めたとすると、わずか1日足らずで完成させたことになります。
自宅の捜索では、金属パイプや粉末が見つかっていて、爆発物をあらかじめ製作した上で、襲撃のタイミングをうかがっていたのでしょうか。
犯行現場に向かう木村容疑者を捉えた映像を見てみます。細い路地から出てきた木村容疑者は、携帯で地図を確認することもなく、まっすく演説会場の方へ向かっていることが分かります。
さらに犯行時も終始落ち着いていて、取り押さえられる直前も、次の爆発物に火を付けようとするしぐさを見せていました。
■犯行の動機は? 容疑者「市議会議員になりたい」と話していた
そして犯行の動機はいったい何だったのか。それをうかがわせる行動も明らかになってきました。
【木村容疑者】「市議会議員になりたい。被選挙権を引き下げてほしい」
兵庫県選出の大串正樹衆議院議員によると、去年9月、兵庫県内で開かれた“市政報告会”で、木村容疑者とみられる人物から「市議会議員になりたいが、被選挙年齢の25歳に満たないので、法改正してほしい」という主旨の話をされたということです。
【自民党 大串正樹議員】
「被選挙権の年齢の問題をかなり熱心に話された。特に若い男性でああいう会に来られるのは珍しいというのと、事件現場の映像を見て、おそらく彼であろうということが、おそらくでありますけど、記憶に残っていた」
また、この市政報告会の3カ月前、去年6月には、参議院議員選挙に立候補できなかったのは憲法違反だとして、国を訴えていたことも分かりました。弁護士には依頼せず、自ら書面などを準備する「本人訴訟」で争っています。
訴状などによると木村容疑者は、被選挙年齢が30歳であることや、立候補の際に必要となる供託金制度について違憲だと主張。さらに、裁判の準備書面には、「岸田内閣は安倍元首相の国葬を世論の反対多数の中で強行した」と批判していました。また、「安倍元首相が政治家であり続けられたのは、旧統一教会のような組織票を持つ団体と、癒着していたからだ」と一方的に主張していました。
一審で神戸地裁は、請求を棄却していて、木村容疑者は大阪高裁に控訴しています。
選挙に関心を示し、選挙制度に強い主張を持っていたとみられる木村容疑者。国政選挙の応援演説という場で、なぜこのような事件を起こしたのか。警察が動機の解明など調べを進めています。
(関西テレビ「newsランナー」2023年4月18日放送)