元宗教2世の専門家「エホバの証人」問題を“実体験”解説 教団は『聖書の教え』で“むちで叩く”や“輸血拒否”…「ハルマゲドンは来る」 弁護団「虐待やネグレクト』と非難 2023年02月28日
宗教団体の信者の子供、いわゆる”宗教2世”の問題です。
キリスト教系の宗教団体、「エホバの証人」からの被害を訴える人を支援する弁護団が2月28日に設立されました。
エホバの証人は、アメリカに本部を置くキリスト教系の宗教団体で、教団によると、日本にいる信者はおよそ21万人とされています。
■今もある”宗教虐待”「輸血の拒否」と「むち打ち」
弁護団が特に問題にしている教団の教えは、「輸血の拒否」と「むち打ち」です。
教団は聖書の教えとして輸血を受け入れるべきではないとしていて、内部資料には「親は『血を避ける』ことを固く決意し、子供のために輸血を拒否しなければならない」と記されています。
さらに親が子に持たせるという身元証明書には、信仰上の理由で「無輸血の治療を希望する」と書かれています。
また、教団のホームページには聖書の言葉として「むちを控える人は子供を憎んでいる。子どもを愛する人は懲らしめを怠らない」と一文が紹介されています。
弁護団には、“むちで叩かれた”とする虐待相談が77件寄せられたといいます。
厚労省は去年12月にガイドラインを策定。
輸血の拒否については、「医師が必要と判断する医療行為を受けさせないことはネグレクトに該当する」と明記しました。
むち打ちについては「児童を叩く、鞭で打つなど暴行を加えることは身体的虐待に該当する」と定めています。
エホバの証人は、「モラルに従って生活するよう教える責任を真剣に受け止めている」と声明を出しています。
しかし、元信者の男性は、教団の態度は不誠実だと訴えます。
【元2世信者・ちざわりんさん(仮名)】
「今のところ責任の所在は自分たちの親にしか与えていない、自分たちに責任はないというスタンス。一人の人間として私たちの訴えに対して真摯に向き合っていただきたい」
今も繰り返されているという“宗教虐待”の実態と対策について、「エホバの証人」の元宗教2世で、自助グループを開催している京都府立大学の横道誠 准教授に話を聞きました。
エホバの証人はキリスト教系の新興宗教で1800年代後半にアメリカで設立されました。
教義として「聖書」の教えを厳格に守るいわゆる“原理主義”があり、横道准教授によると「聖書の中の『血を食べてはいけない』や『血を避けなさい』という内容を“輸血を禁止”という解釈をしているということです。
–Q:旧統一教会で問題になった高額な「献金」は基本的にないのですか?
【京都府立大学・横道誠 准教授】
「過度な献金は基本的にありません。しかし、私は『時間の献金』と呼んでいますが、エホバの証人ではキャリアの形成を否定していて、大学に進学しない方がいいとか、正社員にならずにパートで働くことで“布教に時間を割きなさいという教え”があります。ハルマゲドン(世界の終末)が近づいてきているのにキャリア形成は意味がないとしています。例えば、60年前に20歳だった人は今80歳、もう亡くなっているかも知れませんが、かなり人生を狂わされていると(私は)思います」
「新興宗教というとお金を集めるイメージがあるかもしれませんが、エホバの証人は献金する宗教を否定しているため、善良な宗教と言われることが多かったです」
–Q:「むち打ち」は横道教授自身も経験があるんですか?
【京都府立大学・横道誠 准教授】
「私はガスホースで叩かれていました。結構固いので、痛いんです。教義を教え込むために洗脳するようにやっていることなので、一般的なしつけのための体罰とは次元が違うように思います」
–Q:他にはどんなご経験がありますか?
「例えば、真冬にベランダに放り出されて何時間も(部屋に)入れてもらえないとか。当時5階の団地に住んでいたので何度も飛び降りるか悩んでいましたね」
–Q:お母さんは宗教の教えを守るためにされていたと考えられていますか?
「そうですね。このような体罰は、集会に行ってから親にとって望ましくない行動をした時にあったので・・・」
–Q:ほかにもクリスマスや誕生日などのお祝い事は禁止ということですが、先生はこれも経験されていますか?
「聖書に書かれていないことは悪魔の教えと考えられているため、現在も祝うことはダメだとされています」
「小学生の時に『母の日』を知って、(母に喜んでもらおうと)妹と一緒にカーネーションを買って母に渡すと、言葉にできないような悲鳴を上げて逃げ回りました。悪魔の側に子どもが染まって自分にカーネーションを持ってきたと思ったのだと思います」
–Q:ご両親との関係は断っているのでしょうか?
「子どもの頃にネグレクトを受けると、複雑性のPTSD(心的外傷後ストレス障害)になるといわれますが、私自身もフラッシュバックが毎日のようにあり、子どもの頃の気分に毎日戻されるわけなんです…生き地獄を味わってる感じ。親自身は脱会するつもりがないので対話が難しいです」
宗教2世として悩む人が多くいる中で、横道教授は必要な支援として大切なことは社会問題として「宗教問題を知ってもらうこと」だと話します。
【京都府立大学・横道誠 准教授】
「例えば、薬物や援助交際に関する啓発のポスターとかは子どもの時に見たことがありましたが、『宗教のことで困っている人はいませんか』などのポスターはありませんでした。啓発ポスターなどがあれば、相談していいのだと気づけたと思うのですが、相談していいことだと当時は気づくことができませんでした」
(関西テレビ「報道ランナー」 2023年2月28日放送)