いま若者たちに大人気「カタカナスシ」 回転ずしでも高級寿司でもなく美味しくて“映える”スシ 一方、職人の世界も…”飯炊き3年握り8年”はもう古い?3カ月で一人前の時代へ 「手に職つけて“海外移住”」 2023年02月24日
日本の国民食「お寿司」。リーズナブルな回転寿司もいいし、たまには、背伸びをした高級寿司も素敵です。しかしそんなお寿司業界にいま、新たなスタイルのお寿司屋さんが登場し、注目されています。お寿司を巡るニューノーマルとは?最新事情を取材しました。
■3000円台から…お酒もお寿司も楽しめる それが「カタカナスシ」
「かんぱ~い」
カラフルなドリンクに…光り輝くネオンの看板。これがお寿司界のニューウェーブ、”カタカナスシ”。
特に若者に大人気ということです。
大阪・梅田に2022年にオープンした「スシノトリコ」にお邪魔してみました。
【吉原功兼アナウンサー】
「店内が可愛いですね、コチラお寿司屋さんですよね? ネオンやこの照明とか、”映えます”よね」
【スシノトリコ 近藤量平店長】
「お待たせしました、”海鮮なだれ寿司”です」
【吉原功兼アナウンサー】
「なんですか、これ!すごい!これもう山みたいになっていますね。キラキラしてて、これは映えますね! 今までに見たことのないお寿司、新感覚。おいしい!見た目もド派手ですけど、味も本格的です」
他にも、かわいくて写真映えするお寿司やドリンクが沢山ありました。工夫を凝らした創作料理も人気です。
【吉原功兼アナウンサー】
「どうして、こういうお店をやろうと思ったんですか?」
【スシノトリコ 近藤量平店長】
「お寿司って回転寿司か高級店ってイメージしかないので、”中間層”って少ないなと思って、なおかつ寿司と居酒屋を掛け合わせることで、Z世代の若者たちに寿司屋に来て欲しいなって思いで作らせてもらいました」
実際にお店に足を運んでいたZ世代のお客さんたちに、このお店の評判を聞いてみました。
【お客さんは】
「お寿司の上にイクラがこぼれてるやつとか、あとサーモンのタルタルとか、映えるし美味しい!あと、親子丼!海鮮親子丼」
【お客さんは】
「そんな高くもないけど、美味しいお寿司も食べつつ、お酒を飲みながらいい感じに話せるみたいな、なんか雰囲気も良いなみたいな感じですね」
■本格的でおいしい、でも決して高くない… それが若者に人気
飲食界のトレンドなどを発信するWeb雑誌「フードスタジアム」の編集長は、”カタカナスシ”の流行について…
【フードスタジアム・大関まなみ編集長】
「ひとり3000円から4000円くらいの予算の寿司店っていうのが、今までなかったんですけれども、その価格帯で”お寿司を楽しみながら飲める”って言う寿司居酒屋が流行ってきてると思います。回転寿司はちょっと友達と飲みに行く時には使わないし、高級寿司は高い。だからやっぱりそういうところを狙っているのではないかなと思います」
ありそうで無かった…、回転寿司と高級店の中間ラインを意識しての店づくり。その作戦がお客さんのニーズを見事に捉えているようです。
続いて、私が取材に伺ったのは寿司職人を”養成”する現場です。
■3カ月88万円であなたも寿司職人になれる!それが「飲食人大学」
【吉原功兼アナウンサー】
「こちら、寿司職人を目指す学校ということなのですが、佇まいはもう学校というか、お寿司屋さんですよね。真剣な表情で作業されています、年代もけっこうバラバラです」
寿司職人の技術を学ぶ学校「飲食人大学」。
”飯炊き3年握り8年”とも言われるほど、道のりが長い寿司職人の世界なのに、たった3カ月で全ての技術をマスターできるというのです。にわかには信じがたいですが、どんな授業が行われているのでしょうか?
【飲食人大学 小林真也先生】
「短く持って!危ないから、短く持って…」
料理の経験が全くない人のためにも、包丁の持ち方から始まり、魚のさばき方や下処理の方法をイチから指導。握りはもちろん、サイドメニューの作り方まで、職人として必要な技術を、毎日一通り実践します。
これを、1日7時間週6日、3カ月間みっちりと続けるということです。
【吉原功兼アナウンサー】
「3カ月で一人前にしなきゃいけないっていう、そういうプレッシャーもありますよね?」
【飲食人大学 小林真也先生】
「そうですね、生徒の皆さん目的にしていることが明確です。『寿司職人に3カ月でなるんだ!』と。それを達成させるために、お互いに一生懸命頑張りながらやらせてもらっています」
私も”握り”の授業だけ、体験させてもらいました。
【飲食人大学 小林真也先生】
「シャリを手のひらに持ってきて…」
【吉原功兼アナウンサー】
「ちょ…早すぎて見えないですね…」
【飲食人大学 小林真也先生】
「じゃあ、やっていきましょう!」
【吉原功兼アナウンサー】
「親指でこれをひっくり返してなんだっけ…、こっち?こんな感じ?こんな感じかな?」
スピードが命の”握り”ですが、初めてだとこんなにも手間取ってしまうんです。
でも、入学して1カ月半の生徒さんはというと…
【吉原功兼アナウンサー】
「リズムが良いですね、テンポとリズム」
みなさん、最近まで未経験だったとは思えない腕前です。
全国に3カ所ある『飲食人大学』、定員が10人の大阪校は現在、20代前半から50代後半の生徒で満員とのこと。
いったい、どんな方がどんな動機で通っているのでしょうか?
【豊田さん(27歳)】
「寿司とは全然関係ない金融機関の仕事をしていて、でもその仕事しながらも、こういう仕事をしたいなってすごい思っていた。(寿司店で働こうと思うと)最初の5年、7年は『皿洗いします』ということがほとんどだと思うので、それだと27歳は正直遅いかなと。それで寿司店ではなくこの飲食人大学を選びました」
【川口さん(30歳)】
「海外に住みたいっていう夢がずっとあって、海外に住むとなるとやっぱり”手に職”というか、日本人として職人はやっぱりビザが取りやすかったりするので、その可能性は近づくかなと思ってチャレンジしてみました」
【飲食人大学 小林真也先生】
「海外に行った時の(寿司職人の)需要がすごく高くて、日本でしっかりとした技術を持って海外に行くと、給料がものすごく頂けるというのが、いま注目頂いている要因の一つじゃないかなと思います。本当に5倍ぐらいに、実感としては、問い合わせが多くなっていると思います」
修行期間が長く厳しい寿司職人は、慢性的になり手が少ない状況でしたが、海外での人気を受け、職人になりたい人が増えているとのこと。受講料は88万円と、ちょっと勇気がいりますが、常に応募が定員に達するそうです。
2カ月前に飲食人大学を卒業した野口真人さん(34)。
1月からこのお店で寿司職人としてのキャリアをスタートしました。
【吉原功兼アナウンサー】
「3カ月で学べて、その3カ月間学んだことっていうのは、実際働き始めてからいかせているっていう感じですか?」
【野口真人さん】
「そうですね、もうそれがないとそもそも働けなかっただろうなっていうのはすごく身にしみたというか。魚のさばき方もそうですし、知らなきゃ仕事をもらえないですし」
卒業生の中には、1~2年で自分のお店を開業する人もいるとか。
「修行」という考え方自体が、無くなりつつあるのかもしれません。
(関西テレビ「報道ランナー」2月23日放送)