命の危機だった赤ちゃんカンガルー「コゴロ―」がデビュー 母の袋から出て『人工哺育』…10人のお母さんに見守られて 神戸どうぶつ王国 2023年02月06日
2023年1月、神戸どうぶつ王国でデビューしたのは…アカカンガルーの赤ちゃん「コゴロー」です。
飼育スタッフのエプロンのポケットからひょっこり顔を出しています。生後6カ月の男の子です。
人気マンガ「名探偵コナン」に登場する「眠りの小五郎」にちなんで名付けられました。
【飼育員】
「よく眠っちゃうことからコゴローってつけました」
1カ月前までは母親に育てられていましたが、命の危機に直面したことから今はスタッフの手で人工哺育されています。
いったい何があったのでしょうか?
■赤ちゃんカンガルー「コゴロー」なぜ人工哺育?
2022年7月、母「みつば」はコゴローを出産しました。
カンガルーの赤ちゃんは、2センチほどの未熟な状態で生まれてきます。袋の中には大きくなるのに必要な環境が整っているため、生後5カ月ほどは外に出てくることはありません。
しかし…12月15日の朝、みつばの袋から出て獣舎の床に横たわるコゴローが発見されました。
最初に見つけた飼育スタッフの江崎さんは…
【飼育スタッフ 江崎幸子さん】
「あっ転がっている!誰の子!?ってなって、みつば(母)の子だった。結構体が冷たくなってしまっていたので、もう死んじゃって袋からお母さんが出したのかなと思っていたら、ぴくぴくって動いていたので、『生きている!』って慌てて…」
運ばれてきたコゴローをみた獣医師の田邊さんは、助かる見込みは五分五分だったといいます。
【獣医師 田邊哲哉さん】
「まずは体がとても冷たかったので、(ドライヤーで)温めた。いつからミルクを飲めていなかったのか、何時間前から落ちていたのか、というのが分からなかったので、脱水とかを避けるために、皮膚の下に温かい点滴を打ったり。あとは落ちた衝撃なのか、お腹に傷もあったので、そちらの治療も開始しました」
献身的な治療により、なんとか一命をとりとめたコゴロー。その後、飼育チームはコゴローを母親の袋に返そうと試みますが、上手くいきませんでした。
【飼育スタッフ 江崎幸子さん】
「何回かチャレンジしたんですけど、袋に入れてもすぐ出てきちゃって。もうこれ以上続けても体がまたどんどん冷たくなってきちゃっていたので、人工哺育に切り替えようという判断をしました」
■人工哺育の難しさ 10人のスタッフが母親代わりに
江崎さんを中心とした10人が交代しながら、コゴローの母親代わりに。コゴローは本来であれば、まだ袋で守られている時期のため毛が生えておらず皮膚も繊細。
衛生面には最新の注意を払います。保育器の中の温度と湿度もしっかり管理。できるかぎり母親の袋の環境に近づけています。
特に難しいのが授乳です。
【獣医師 田邊哲哉さん】
「ミルクの成分が普通の哺乳類とちょっとだけ違う。犬猫のミルクをやってしまうと、すぐに下痢をしてしまうのが大変なところで」
カンガルーは子どもの成長に応じて母乳の成分が変わっていくため、いろんなミルクをかけ合わせながら、慎重に与えてきました。
命の危機にひんした1カ月前は680グラムだった体重が、いまは1680グラムにまで増えました。
【飼育スタッフ 江崎幸子さん】
「でかくなりましたよね」
【獣医師 田邊哲哉さん】
「大きいですね。(お腹の)傷もよう分からん。大丈夫です!」
■命の危機乗り越え…「コゴロ―」一般公開デビュー
そして…ついにお客さんの前にデビュー!コゴローを一目みようと、たくさんの人たちが集まっています。
【飼育員】
「コゴローくんでーす」
コゴロ―くん、早速、みんなの人気を独り占めに!しかし…
眠りの「コゴロー」くんは、公開中も思わずウトウト。
【来園した子ども】
「ねえ、なんで(袋の中に)潜っているの?」
【飼育員】
「今、お昼寝しているね、眠たくなっちゃったって」
【コゴロ―を見に訪れた子どもたち】
「かわいかった~!」
「めっちゃちっちゃかったし、いつも動物園で見るのはめっちゃ大きかったけど、あんな小さいのを見るの初めてやったから、めちゃかわいかった」
「なんか眠たそうにしていた、目が半分閉じていた」
■ハードルまだあるが、人とカンガルーの“架け橋”に!
命の危機を乗り越えた「コゴロー」。でも、これからも乗り越えなくてはいけない壁がたくさんあります。
【飼育スタッフ 江崎幸子さん】
「他のカンガルーを全く認識していない状態なんですよね。大きくなったらこのカンガルーファームで生きていかないといけないので、他のカンガルーたちと仲良くやっていけるかっていうのが大きなハードルの一つになると思います」
神戸どうぶつ王国では2022年、コゴロー以外に3頭の赤ちゃんが誕生していて、仲間の元で元気に成長中です。
しかし、コゴローは、まだ人間の助けを必要としています。
【飼育スタッフ 江崎幸子さん】
「カンガルーの世界に慣れるかどうか心配っていうことの反面、人で育てたので、やはり人に慣れやすい存在ではあるので。コゴローには、その最前線で、お客様とカンガルーとを近づける存在になってくれたらいいなと思います」
たくさんの人の愛情を受けながら、コゴローはすくすくと成長していっています。