“高級魚”の復活プロジェクトが大阪湾で進行中 府がブランド化を進める「幻の魚キジハタ」10年で3倍の漁獲量に 関空建設の時の“護岸”が魚たちの理想の住みかに 2022年10月13日
関西空港近くの大阪湾で、“ある高級魚”の復活プロジェクトが進んでいます。大阪の空の玄関「関西空港」第1ターミナルにある港から、大阪湾に出る船に密着しました。
【記者リポート】
「船は今、関空の港を出て護岸で行われる、ある調査に向かっています」
関西空港の周辺の海に、どんな魚が生息しているかの調査です。調査員が海底から引き上げたカゴにかかっていたのは、かつて“幻の魚”とも言われていた「キジハタ」。大阪では、「アコウ」と呼ばれる高級魚です。
一時は大阪湾から姿を消していた「キジハタ」は、なぜ復活したのでしょうか。
今からさかのぼること、約70年。大阪湾は海水浴や干潟遊びでにぎわい、海の幸にも恵まれた豊かな海でした。
しかし、高度経済成長期には、工場排水などで水質が悪化。埋め立て地が増えたことで海水の流れが停滞し、さらに汚染が進んでしまいました。大阪湾はかつての姿を失い、捕れる魚も減ってしまったのです。
そこで、関西空港の埋め立て工事の際、太陽光が当たりやすいなだらかな護岸を作り、そこに海藻を植え付けて魚の住みかとなる「藻場(もば)」を確保。
禁漁区の指定を受けた「藻場」に魚が集まり定着につながるのか、調査を続けることにしたのです。
「藻場」を作ってから10年がたった、1999年。
【記者リポート】
「関西空港の南側の護岸になります。海の下にはたくさんの海藻が茂っていて、魚の種類も豊富だということです」
関空の護岸には、サザエやカサゴなどさまざまな貝や魚が増えていました。
この撮影からさらにおよそ20年がたった今年の調査では、体長30センチを超えるアナゴに鋭い歯をもつハモなど、およそ10種類の魚を確認。
関西空港ができてからおよそ30年で、多くの魚や貝が住みつくようになりました。
そして今回、最も多くカゴに入っていたのが、大阪府がブランド化を目指すキジハタです。
キジハタは、冬のフグに匹敵する夏の高級魚で、刺身にするとコリコリとした歯ごたえがある白身魚。大阪府は「魚庭(なにわ)あこう」としてブランド化を目指しています。
調査で捕れたキジハタは府の養殖研究所などに運ばれ、大阪湾全体に放流されています。その結果、大阪湾のキジハタの漁獲量は、この10年でおよそ3倍以上に増えたということです。
長い年月をかけて育まれた関空の海の資源が、今では大阪湾全域に広がり、海を豊かにしているのです。
【関西エアポート 久保治之さん】
「関空建設の時に緩傾斜石積み護岸を作り、藻場を保全していることが、大阪湾の魚の環境に適している。関空の海域環境が(大阪湾の)水産資源の向上につながっている」
大阪湾の救世主になるかもしれない、関空護岸の魚たち。これからも守り続けていく必要があります。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月13日放送)