さよなら映画館!32年間ありがとう…この大阪・梅田の片隅で、ミニ・シアター『テアトル梅田』が惜しまれつつ“閉館”。ラスト上映は同館で最長ロングラン映画「この世界の片隅に」…ファンらの拍手で“閉幕” 2022年09月30日
■32年の歴史に”幕”…大阪・キタのミニシアター『テアトル梅田』
1990年4月のオープン以来、32年以上にわたって関西そして大阪のミニシアターの代表としてキタで上映を続けてきた『テアトル梅田』が、9月30日夜、最終上映を終えました。
【「最終上映」直前、満席のシアター1】
午後4時10分からの最終上映は、片渕須直監督のアニメ映画「この世界の片隅に」。エンドロールが流れ終わると、満席の劇場(シアター1)からは温かい拍手が送られていました。上映終了後には、片渕須直監督が『テアトル梅田』にお別れも含めたトークショーが催され、午後7時すぎ…梅田の片隅で“キラリと光った”映画館は幕を下ろしました。
【最終上映後、トークショーする「この世界の片隅に」片渕監督】
■1990年(平成2年)にオープンした…梅田・茶屋町のミニシアター
『テアトル梅田』は、1990年(平成2年)4月19日に開館。阪急・梅田駅から徒歩5分ほど、ロフト梅田の地下1階に位置し、2つのスクリーンでオープン。
【「東京テアトル」社報・表紙より(*コピー)】
いわゆるメジャーではなかなか“かからない”上質な洋画や、まだ若手監督の作品やインディペンデントな作品など様々な映画のラインナップで関西を中心に多くの映画ファンを楽しませてきました。
【「東京テアトル」社報より】
■これまで”のべ2000本以上”もの作品を上映…興行収入トップ3は?
これまで上映された作品は32年間あまりで、のべ2000本以上…
【のべ2000本以上の映画を上映】
同館の興行成績1位は「アメリ」(2001年、ジャン=ピエール・ジュネ監督*公開は同館での公開年、以降の作品公開年も)でした。
【© 2001 UGC IMAGES-TAPIOCA FILM-FRANCE 3 CINEMA-MMC INDEPENDENT-Tous droits reserves】
2位は「トレインスポッティング」(1997年、ダニー・ボイル監督)で、当時まだ無名だったユアン・マクレガーの出世作でもあり、関連商品が”よく売れた”貴重な写真も残っています。
【ロビーでの特設売り場のようす 1997年】
3位は邦画で連続上映日数287日と同館で最長ロングラン上映にもなったアニメ映画「この世界の片隅に」(2016年、片渕須直監督)でした。
【© 2019こうの史代・コアミックス /「この世界の片隅に」製作委員会】
館内には、その「この世界の片隅に」「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(2019年)でヒロイン・すずの声優を務めた女優・のんさんのメッセージとかわいいイラストも。
【ロビーに残る、のんさんのサインとイラスト】
■約5年支配人務めた「最後の支配人」の思い
2017年12月に『テアトル梅田』支配人として東京から赴任、“最後の支配人”となった木幡明夫支配人は、閉館などについて「なじみのお客さんからは『大学の時から通っていた。無くなるのは寂しい…』などの声がありました。ある意味、梅田・茶屋町の一つの“文化発信基地”としての役割を担っていたと思います。32年間ご愛顧頂きありがとうございました。」と話していました。
【最後の支配人となった木幡明夫さん(44)】
■おおぜいのシネマファンから「惜しむ声」…“親子3代”で来ていたファンも
最終上映に来た東大阪市の自営業・林さん(47)は、「1994年に『ギルバート・グレイプ』を観に来た時“立ち見”でビックリした。以降、映画にハマるきっかけになった映画館でした。1990年代に学生だったんですが、その時から続く映画館が少なくなっていく中、昔を思い出す映画館がまたなくなり、さみしい思いです」。また、箕面市の主婦・長村さん(58)は「母が映画好きで、私も映画好きに…ちょうど結婚した年に開館した映画館で夫婦でよく来てました。一番の思い出映画はフランス映画の『浴室』でした。娘もこの映画館が好きで29日に会社帰りに観に行ったそうです。私を映画好きにした母が去年、他界…きょう、一緒に来たかったです」など、思いを語ってくれました。
【最終日 にぎわうロビー】
■ラスト上映の片渕監督「この劇場で観た映画…“忘れないで”」
ラスト上映の「この世界の片隅に」の片渕須直監督は大団円の上映に選んでいただき、再び感謝とした上で「32年間にわたって、ここでご覧になった映画は、皆さんの中にずっとあるんだな…それこそが『テアトル梅田』が成し遂げたことだ。これから先も『テアトル梅田』は続くんだな…と思います」と語りました。
【ラスト・トークショーで『テアトル梅田」への思い語る片渕監督】
『テアトル梅田』は閉館となりますが、今後、テアトルグループでは、大阪駅北側にあるスカイビル内の『シネ・リーブル梅田』に一本化されるということです。
1990年頃に、新人監督として頭角をあらわしたスパイク・リーや北野武は今や「大巨匠」、そしてゴダールも亡くなった2022年。
記事を書いている私は大学2年で20歳だったのが、今52歳に…
…さようなら、そして「ありがとうテアトル梅田!」