きれいでおいしい野菜の世界 SDGsなアレンジメントから最先端の高糖度トマトまで “土のいらない栽培法”で「宇宙農園」も夢じゃない? 2022年06月23日
梅雨も明け、夏野菜がおいしい季節!
今すぐ知りたくなる、食べたくなる、野菜のニューノーマルを調査しました。
■野菜の摂取量を測定できる「ベジチェック」
みなさんは、「自分に野菜が足りているか」ご存じですか?
カゴメが開発した「ベジチェック」。
手のひらを数十秒間乗せるだけで、1日にどれぐらいの量の野菜を摂取しているか測定できる端末です。
野菜を食べることで皮ふに蓄積していくベータカロテンやリコピンなどの色素を、LEDセンサーで読み取るという仕組みです。(大阪では阪急うめだ本店の「カゴメグリーン」で体験可能)
試しに、「農家のおばあちゃんの影響で、今も野菜を食べる習慣がある」という、竹上萌奈アナウンサーが測定してみると、250グラムという結果に…
厚生労働省が推奨する1日の摂取量は350グラムなので、少し足りませんでした。
厚生労働省の調査では、成人の平均摂取量は1日290グラムと、多くの人が「野菜不足」の状態です。
今回は、「今すぐ食べたくなる」野菜の最前線を取材しました。
■「おいしい」が「美しい」に ロースト野菜の宝石箱
“野菜の宝石箱”があると聞いて伺ったのが、大阪市福島区の「ハタイロキョウト」。
「美しいものはおいしい」をコンセプトに、野菜をメインにしたお弁当が人気のお店です。
【ハタイロキョウト 畑マエ子代表】
「コロナでおうち時間が増えたことによって、自分自身の健康とか体の大切さに着目される方がすごく増えました。ただ、『健康だから食べる』というよりは、『おいしいから食べられる野菜』として、すごく需要が高まっています」
素材の良さを極限まで生かすため、たどり着いたのが「ロースト野菜」でした。
1種類ずつ、それぞれに適した温度と時間で焼き上げることで、本来のうまみを引き出すことができるそう。
早速、吉原功兼アナウンサーが試食してみました。
【吉原アナ】
「シャキシャキ感が失われずに、油分でしっかりとうまみが凝縮されて、ジューシーに仕上がっています。お酒が進みますねえ」
味だけでなく見た目も人気の理由ですが、最初から“映え”を狙っていたわけではありません。
【畑代表】
「艶とか見た目を重視して作ったというよりは、味にこだわって作った結果、美しいものに仕上がりました。直感的に、見た目がいいものを食べると、自己肯定感もすごく上がりますし、心も体も整うのだと思います」
■鑑賞後は食べられる! SDGsなベジタブルアレンジメントの世界
さらに、“映える野菜”をもう一つご紹介。
フラワーアレンジメントのようですが、全て食べられる野菜でできているのです。
その名も、「ベジタブルアレンジメント」。
髪飾りにすることもできるんですよ。
作っているのは、神戸市北区の農家・鈴木広史さん、彩さん夫妻。
ホワイトパンプキン、バナナピーマン、茎を食べるレタスなどの珍しい野菜を中心に、年間400品種を栽培しています。
「食べられる」と聞いて吉原アナが手にしたのは、甘い香りのする赤い花です。
【吉原アナ】
「ん…感じたことのある味だぞ…。ワサビだ! ワサビの風味がきました!」
【広史さん】
「『ナスタチウム』っていう花なんですけれども、ワサビのような味がする、不思議なお花です」
【吉原アナ】
「すごくいい香りが口に広がって…見た目と全然違う味わい」
鈴木さん夫妻のこだわりは、商品の出来上がりを考えて、“あえて小さく”育てること。
【吉原アナ】
「“大きくしない”野菜づくりっていうのは大変ですか」
【広史さん】
「小さく作る=小さいうちに収穫するわけではなくて、実は普通の野菜と同じぐらいの期間生育しています。それでも、小さく保たせる、凝縮させるというところを見極めていくのは、やっぱりすごく難しくて。妻と一緒に試行錯誤しながらやっているところです」
フラワーショップで働いていたことがあるという広史さん。色あざやかな野菜ブーケには、当時鍛えたアレンジ技術が生かされています。
形が良くなくて売れない野菜も、普段は取り除くようなブロッコリーの葉も、アレンジメントなら生かすことができるので、「環境に優しい」というメリットも。
【吉原アナ】
「お花だとそのまま枯れちゃいますけど、野菜だったら、食べてゴミが出ない。SDGsでもありますよね」
【広史さん】
「『野菜ってこういう楽しみ方もあるんだ』とか。野菜の新しい価値も生まれていくんじゃないかと」
映えて、おいしくて、SDGsな野菜ブーケ。インターネットで購入することができます。
■進むトマトの高糖度化 甘さ2倍の「霧のトマト」
話は変わって、大人にも子どもにも1番人気の野菜は「トマト」だと、ご存じでしたか?
実は今、そのトマトが、“ニューノーマルな進化”を遂げているのです。
【タキイ種苗 トマト育種担当 中山育治さん】
「ブランディング=付加価値を付ける一つの方法として、栽培技術で『高糖度トマト』を作っていくという流れが、今、結構あると思います」
さまざまな野菜の品種開発を行っているタキイ種苗によると、トマトの“高糖度化”が進んでいるそう。
その最前線を調べるために向かったのは、兵庫県西脇市にある「いけうち高嶋農場」です。
「驚くと思いますよ」と言われた「霧のトマト」を試食してみました。
【吉原アナ】
「甘いとは聞いてますが、言ってもトマトですよね?…甘い! 甘い!! ちょっと酸味がきて、また甘い。ちょっとの酸味が、また甘さを引き立てています」
甘さを表す糖度は、8~10度。通常のトマトの2倍近い値です。
高い糖度のヒミツは、この装置の中にありました。
【『いけうち』アグロ事業部 三野航司朗さん】
「こちらを見ていただきたいんですが…」
【吉原アナ】
「あれ、なんかモクモクしていますね。何ですか? これ」
【三野さん】
「『セミドライフォグ』という非常に細かい霧です」
セミドライフォグとはノズルメーカーの「いけうち」が開発した、水滴が直径100分の3ミリという非常に小さい霧のこと。
養分を含んだ霧を根に直接吹き付ける栽培方法で、土は必要ありません。
【三野さん】
「根っこからすると、霧で水を取るのは結構大変。この霧をキャッチしようと、根っこが非常に細かい目をどんどん増やした結果が、このような大量の根になります」
細かい根が広がることで、霧状の養液を効率よく吸収できるようになります。
さらに、与える水の量を最大90%もカットすることで、適度なストレスがかかり、糖度と栄養価の高いトマトができるという仕組みです。
■土のいらない栽培法で農業に革命を 目指すは宇宙!
“甘いトマト”が作れる栽培技術。
これだけでもすごい発明ですが、「土がいらない」、「少しの水で栽培できる」という強みは、食糧問題を解決するかもしれません。
実際に、アラブ首長国連邦のアブダビでは、砂漠にある農場で、「霧のトマト」の栽培・出荷に成功しています。
この栽培技術は、トマトだけでなくキュウリや葉野菜などにも転用が可能だということです。
また、宇宙開発の『JAXA』も目を付けていて、すでに『いけうち』との共同研究が進められています。
月面での“宇宙農園”の実現も目指しているそうです。
トマトを甘く、おいしくするための“ミクロな技術”は、世界を変えるかもしれない、“大きな一歩”になっていました。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年6月23日放送)