2022年4月から、不妊治療のうち体外受精や人工授精などについて保険適用が始まりました。
こうした中、企業でも妊活や不妊治療に取り組む社員たちをサポートしようとする動きが広がっています。
文房具やオフィス家具を展開する「コクヨ」の子会社、「コクヨ&パートナーズ」の常見久美子さんに話を聞きました。
【コクヨ&パートナーズ 事業サポート部 常見久美子さん】
「コクヨ&パートナーズ」の社員およそ400人のうち、9割が女性です。
これまでに優秀な人材が妊活を理由に退職することが、何回かありました。
社内から妊活支援をしてほしいという意見もあり、「周囲のサポートがあれば辞めなくても済んだのではないか」「妊活は女性だけの問題ではないのではないか」との思いが強くなりました。
そこで、2021年8月に新たな取り組みを始めました。
LINEを活用した妊活支援を行う「ファミワン」が提供するサービスを、福利厚生として導入することにしたのです。
このサービスは、妊活や不妊治療に取り組む社員たちが、LINEを使って臨床心理士や不妊症看護認定看護師など専門家にアドバイスをもらうことができるものです。
病院選びから不妊治療の悩み相談まで幅広く対応していて、普通ならサービスの利用料金がかかりますが、福利厚生なので会社が費用を負担します。
さらに、「ファミワン」がサービスを利用する社員を把握する形になるので、社員のサービス利用が「コクヨ&パートナーズ」には分かりません。つまり、会社を通さず匿名のような状態で相談できるのがメリットの一つです。
また、「ファミワン」と協力して妊娠・出産について基礎知識を学んだり、疑問や悩みなどを解消するセミナーも開催してきました。
管理職向けのセミナーもあり、妊活や不妊治療は女性だけの問題ではないと、社内全体で理解を深めようとしています。
妊活はとてもセンシティブなことで、女性が本来サポートしてほしい気持ちを遠慮してしまって、会社側がサポートできていない状況もあると思います。
中には家族にも相談できないという人もいて、そういう人は当然、会社の上司にも相談は難しくなります。
女性だけではなく、パートナー、職場の仲間たち全員が、一人一人何ができるかを考えることが大切だと考えています。(常見久美子さん談)
■不妊治療と仕事を両立できずに離職する人も 取り組みの発展が重要
2017年の国の調査では、働きながら不妊治療をしていた人のうち16%が、不妊治療と仕事を両立できずに離職しています。また、支援制度を整えている企業はわずか9%に留まっています。
そんな中で、コクヨ&パートナーズの取り組みは、注目されるものですが、制度の導入がゴールではありません。こうした取り組みが発展し、育児や余暇生活など従業員の個人の生活を重視する会社風土の醸成につながることが理想です。
そして、一人一人の生活に合った働き方ができる社会について、議論が進むことが期待されています。
(関西テレビ記者 宇都宮雄太郎)