今、自宅用に花を買う人が増えています。
去年1年間に購入した花の用途についての調査によると、「自宅用」の花を買った人の割合は、26.3%と、初めて「ギフト用」を上回る結果となったそうです。
外出を控えた分、おうちに花を飾って癒されたいという人も多いようで、そんなニーズに応えようと、街でも新たに花の販売を始めるところが増えています。
花にまつわる最新事情を取材しました。
■ユニクロが花に目を付けた理由
やってきたのは大阪・ミナミの心斎橋筋商店街。
ユニクロ心斎橋店では、9月から花の販売を始めていて、売れ行きも好調だといいます。
なぜ販売することにしたかというと…。
【ユニクロ心斎橋店 ビ・ミンギ店長】
「ライフウェアを提供する店舗として、よりお客様や人々の生活を豊かにしていくというような意味で今回花を導入しました。お花で人々の生活に彩りを加えていくという意味では共通点があるかなと感じています」
ほかにも、色々なところで花の販売サービスが広がっています。
「スポーツクラブNAS大阪ドームシティ」の出入り口に置かれた、バケツいっぱいに入った切り花。
これは生花店の「hanane」が運営するイベントで、ジムやカフェ、美容室などが定期的に場所を貸し出し、1本100円で花を販売しています。
【客】
「(買うのは)2度目です。お店をやっていて飾るので。買いやすいって本当に思います」
【NAS大阪ドームシティ 尾崎久美子総支配人】
「入口にお花が設置してあるだけで、みなさん自然と笑顔で入ってこられますし、利用客以外にも一般の方がお花を見かけられて購入する機会が増えていますので、すごくありがたく思っています。意外に多かったのが男性の方で、ご自宅に使わない花瓶があって、何か入れたいなっていうことでお買い求めいただいています」
■1本100円の価格の理由は「規格外」だから
このイベントの特徴は1本100円という価格。
そこには何かヒミツがあるはず…
ということで、イベントに花を出している神戸市北区のユリ園で話を伺いました。
【ユリを生産する藤本修さん】
「茎が曲がっている状態ですと、花はきれいに咲きますけども全体的なバランスを見たときに『これはちょっとね』ってなり、規格外になってしまいます」
花業界では、値崩れが起きないためにも、つぼみの大きさや葉の付き具合など、出荷する際に10以上の厳しい基準が定められているそうです。
藤本さんのユリも、去年15万本植えて、出荷できたのは12万本ほどだったといいます。
そこで、生花店の「hanane」がこの市場に流通されない規格外の花に目をつけ、100円で販売するシステムを実現したのです。
【藤本さん】
「ユリが咲いたところを見るとね、ため息が出るぐらいきれいなんですよ、自分で言うのもなんですけども。お金の面でもそうですけども、やっぱりこんな花でも咲けばかわいいですから僕としては助かって良かったし、咲いてくれるのが嬉しいですよね」
規格外の花はチャンスフラワーと呼ばれ、現在では全国80軒以上の花農家が参加し、東京や大阪を中心に、およそ70カ所で販売会が開かれています。
【hanane 広報 河野紗也さん】
「農家さんにとってもお花を楽しんでいただける方が増えて収益にもつながれば、両者Win-Winな関係が築けるんじゃないかなと思います。お花を買われてこなかった方がこれをきっかけに生活の動線上に(お花を)見かけるようになるってことで、気軽にお花を買っていただく方が増えているようにも感じています」
■フードパンダで花もデリバリー
一方、10月にフードデリバリーサービス「フードパンダ」で、関西で初めて花の登録をした「HANAPOCHI」。
もともとは企業や飲食店向けの生花店をしていたそうですが、コロナの影響で業績は激減。
路面店をたたみ、デリバリーサービスに目をつけました。
【HANAPOCHI 阿部盛雄課長】
「実はこれ全部、自社農園で育てた観葉植物や胡蝶蘭になっています。どうしてもコロナ禍で、自社農園で育てた観葉植物や胡蝶蘭は流通されなくても農園で育ってしまうので、フードデリバリーサービスで何か商品に組み込めないかというところから、まず始めました」
自社農園という特性を生かした商品開発を進め、配達料を含めても、お得感のある商品を売りに展開しています。
【阿部課長】
「今フードデリバリーサービスっていうのが主流になっている中で、普段お花に興味の無かった方がフードパンダさんを開いたときに『花売ってる、買ってみようかな』っていう気持ちになったら、私たちはとても嬉しいかなと」
■コロナ前と比べ売上5倍 「食べられる花」
お花に包まれたクリスマスケーキに、寒天の中に花を閉じ込めた羊羹。
近年、料理を引き立てる素材として注目されている食べられる花、『エディブルフラワー』です。
もともと、趣味として自宅でエディブルフラワーを育てていたという滋賀県守山市の山崎いずみさん。
2017年に主婦から一念発起して事業として生産を始めました。
【エディブルフラワーを生産する山崎さん】
「お花って誰かに贈るものなので、それが食のシーンでかわいく野菜みたいに食べられるっていうのはすごくテンションが上がるというか。それもあって興味がわいたのがきっかけです」
山崎さんのこだわりは、農薬を使わないオーガニック栽培。
そのため、虫に食べられ8割が出荷できないこともある中、生産を始めて4年で、関西を中心に約30カ所のホテルやスイーツ店などで取り扱われるようになりました。
琵琶湖のほとりにあるリゾートホテル『セトレ マリーナびわ湖』。
こちらのレストランのディナーコースのデザートにも、山崎さんのエディブルフラワーが使われています。
【セトレ マリーナびわ湖 パティシエ 高橋和也さん】
「かわいい、というインパクトを残してもらうために飾っています。お花1つ1つが生き生きしていて、飾っていても色も揃っているし、食感も違いますし、香りも違います」
しかし、そんなホテルや飲食店への出荷も、去年はコロナの影響でぴたりと止まり、売り上げは前の年と比べ、9割も落ち込みました。
そんな中、売り上げを支えたのが個人向けのオンラインショップでの販売です。
【山崎さん】
「お菓子系とかスイーツ系で、すごくフォロワーさんが多い方が実は買ってくださっていて、うちのお花を使っているとご紹介くださって。やっぱり有名な方ですと、ウェブサイトの訪問者数が見たことないぐらいになって、買っていただく機会も増えてすごく助けていただきましたね。商社さんが興味を持ってくださって、今は商社さんを通して海外にも」
SNSの影響で、おうち時間での個人消費が伸び、特に保存の効く乾燥させたエディブルフラワーの需要が急増。
その波は海外にまで広がり、コロナ前と比べ、売り上げは5倍になったそうです。
【山崎さん】
「何気ない日常にももっとお花が近くになった感じはしますね。ちょっとお菓子作る時にお花を使うとか、きれいとか、おいしそうって言っていただけるところの裏側にいられるのは、すごく幸せを感じます」
生活に彩りを与えてくれる花。
今その存在が、より身近なものになっているようです。
(関西テレビ「報道ランナー」2021年11月17日放送)