大阪市北区の百貨店「阪神梅田本店」で、新型コロナウイルスの集団感染が発生しました。
8月5日現在で133人の従業員が感染する大規模なクラスターとなっています。
この「百貨店クラスター」をめぐって8月5日、大阪市の松井一郎市長は、大阪市政の担当記者たちを前に、次のようにやや踏み込んだ発言をしました。
「お客様からの感染という可能性の方が高いんじゃないか」
感染の規模は大きく、保健所による調査の難航が予想されていましたが、感染経路について、おおよその見込みがついているかのような口ぶりでした。
ただし松井市長は、次のようにも発言しています。
「きちっとしたエビデンスがあるところまでいっていないが、保健所で様々調査をした結果、当初はバックヤードで従業員同士の感染拡大を疑っていたがその可能性は低い」
松井市長が、会見でこの説明をする前日、大阪市保健所の吉田英樹所長が、クラスターを調査する専門家とともに、阪神梅田本店に赴いて状況を確認しました。
大阪市保健所の久野恭伸副所長によれば、所長らが現地を確認した結果分かったのは、次のことだったといいます。
・当初、感染が拡大した場所だと疑っていた9階のバックヤード(従業員用の食堂など)で感染が広がっていたとすれば、フロアに関わらず、まんべんなく従業員が感染するはずだが、感染者が集中していたのは1階と地下1階だった。
・9階のバックヤードでは感染対策が徹底され、感染が広がる可能性は低い。
・7月末の4連休で1日あたり3~4万人ほどの客が来店していた。
吉田所長は、これを松井市長に直接説明しています。
松井市長は、この説明を受けて、客からの感染の「可能性が高いのではないか」と述べたのです。
8月5日、松井市長の会見に同席した久野副所長は、市長の説明について記者から問われると、次のように述べました。
「そういうような感染経路も否定できない。選択肢の1つということかなと考えている」
市長の発言に比べて、「客からの感染」という点でトーンダウンした表現でした。
記者が質問を重ねると、久野副所長は続けて以下のように述べました。
「感染拡大もあって、来られている客の中には無症状陽性者がいる可能性があると。そういう方がマスクを鼻まで下げてしゃべったり、手にウイルスがついている部分で何かに触ったり、そういう可能性も考えられると市長に説明した」
翌日、改めて「客からの感染の可能性が高いのでは」という市長の発言について、久野副所長に聞くと「市長は(所長から)説明を受けてそう思ったのではないか。可能性がどれくらい高いかというと、はっきり分からない。あくまで可能性の1つ」と説明。
市長の発言が前のめりではないかと重ねて問うと「一般市民に危機感を持ってほしいという思いがあったからだと思う」と述べました。
大阪府内で、以前に百貨店でのクラスターが判明したことはありません。
阪神百貨店のクラスター問題は、感染拡大が再び進む中での大規模商業施設の営業の在り方にも、波紋を広げる問題です。
クラスターの原因究明は容易ではありませんが、引き続き科学的な調査を進めることが求められます。
(関西テレビ 大阪市政担当記者 稲垣伸)