「誰がそんな相撲取れって言ってるんだよ!」土俵に響く父の怒声 大相撲目指す小学生 元力士の父親 息子が相撲界の厳しさに耐えられるよう厳しさの裏に「優しい親心」 2024年11月03日
小学6年生の“相撲男子”が、元力士の父と二人三脚で目指すのは、「大相撲」です。
■大相撲の力士だった父の厳しい指導
【窪田清盛さん】「誰がそんな相撲取れって言ってるんだよ!それで勝てんのかよ、試合」
稽古場に響く、父の厳しい声。そして、限界まで自らを追い込む息子。
2人が目指すのは…。
【窪田悠希くん】「大相撲に入って、関取になって、家族に恩返ししたいです」
窪田悠希くん(12歳)。小学校6年生ながら、身長168cm、体重88kgと、堂々とした体格です。
相撲を始めて6年。今は多い時は1日300回、家で毎日、四股を踏んでいます。
悠希くんが住む滋賀県に、少年相撲クラブはたった1つ。家から遠く、実際に土俵で稽古できるのは、月に平均1度しかありません。
【窪田清盛さん】「動きが固いんだよ。体重移動してスムーズに」
そんな悠希くんを指導するのは父・清盛さんです。
清盛さんは大相撲の元力士。15歳で入門し、最高位は幕下28枚目。関取に上がることなく、23歳の時に、膝のけがが原因で引退しました。
【窪田清盛さん】「『基本が大事』ってよく言うけど、辞めてから気づく。自分は“基本”が大嫌いだったので」
【窪田悠希くん】「最初は相撲やるの嫌いでした。怖いし、痛いし…」
2年前までは体も大きくなく、試合や稽古場でも、勝てない日々が続きました。
小学生で相撲は終わり。そんなことを考えた時期もありました。しかし…。
【窪田悠希くん】「相撲が好きになった。石崎先生に憧れて」
「コーチとして来てくれて。胸出してもらったら、ビクともしなかった」
石崎さんは新大関・大の里と大学の同級生。教師を経て、今年、高砂部屋に入門しました。
【窪田悠希くん】「体つきが筋肉質で、立ち合いが鋭いところが(かっこいい)。超えたい気持ちはあります。お父さんと石崎先生。もうこれ以上、負けたくない」
「大相撲に入って、関取になって、家族に恩返ししたいです」
【窪田清盛さん】「大相撲に行きたいって言って。まあ、正直うれしい気持ちと『無理、無理』っていう気持ちの半々で。まあ、『やめとけ』って言いました。やっぱり厳しい世界だし」
「やるからにはもう、厳しくするよと。ちょっとでも情けないこと言ったら、もうやめろって。相撲いつやめてもいいよって。その代わりやめたら勉強しなきゃだめだって。自分の夢を叶えるために努力するか。結局、形が違っても何かで努力しないといけないんで」
■大相撲直伝の「ちゃんこ」で体作り
大相撲という目標ができてからは、メキメキと成長。大会でも結果を残せるようになったのです。
そのワケの一つは、体作り。大相撲直伝の父の手料理です。
【窪田清盛さん】「(相撲)部屋のちゃんこを再現している」
野菜も肉もふんだんに入った、塩ちゃんこ。
大好きだったお菓子やジュースをやめて、食生活を徹底的に見直しました。
相撲は食べることも稽古。満腹になってからでも、食べ続けてきました。
その甲斐あって、2年前には、40キロだった体重も、今では88キロまで増えました。
相撲に関してはストイックな悠希くんも、普通の小学生。姉と妹と一緒にゲームをする時は、楽しそうな笑顔を見せていました。
そして3年生の妹の前では、心優しいお兄ちゃん。そんな悠希くんは、小学校でも人気者です。
■“理想の相撲”を目指して 中学生相手に「全勝」
この日は月に1度の相撲教室での稽古。朝6時に起きて出発です。
父・清盛さんの運転で、片道1時間半かけて長浜市にある道場へ向かいます。
【窪田悠希くん】「横綱にもらったまわしです」
「気持ちがなんか、特別感というか」
今年の6月、伊勢ケ浜部屋の合宿稽古に参加した時に、横綱・照ノ富士にもらったまわし。
この日の稽古の相手は、中学生です。
【窪田清盛さん】「右の手、何してんだよ!」
土俵の外に寄り切り、 勝つには勝ったのですが…。
課題に掲げた「前に出て相手を押し切る」という理想の相撲を取れず、厳しい言葉が飛びました。
【窪田清盛さん】「誰がそんな相撲取れって言ってるんだよ!勝ち負けじゃねぇって言ってんだろ。それで勝てんのかよ?試合。自分の相撲がどういうのか言ってみろ。今、何してんだよ。まわし取りにいってるんじゃねぇか、突けよ!」
「悠希の立ち合いは上に立ってんだよ。上でこんなことして、効くわけない。ガツンと頭で当たって、手伸ばせよ」
清盛さんの“げき”が効いたのか、悠希くんは、立ち合いで強く当たって前へ出る“理想の相撲”ができるようになりました。
【窪田清盛さん】「いい相撲取れるじゃねえか。それだよ。忘れんなよ。今の良かったよ」
この日とった相撲は全部で10番。去年までは勝てなかった中学生相手に、全勝です。
しかし、1カ月ぶりの実践稽古ということもあり、体力が続きません。
■小学生として最後の地元・関西で行われる大会へ
大相撲を目指す親子ですが、 相撲を離れれば、仲良しです。
【窪田悠希くん】「普段は優しいです。普段の私生活とか、めちゃくちゃ緩い」
【窪田清盛さん】「緩い?厳しくした方がいい?」
【窪田悠希くん】「いや、そのままがいい」
「デザートとか余ってたらくれる」
【窪田清盛さん】「それ、あまり優しいって言わなくない?」
10月27日、大阪・堺市の大浜公園相撲場。
【窪田悠希くん】「一番、一番、集中して、優勝目指してがんばります」
悠希くんにとって小学校生活最後の地元・関西で行われる大会です。全国から集まった男女およそ300人が、学年別に分かれて頂点を目指します。
去年、5年生の部で3位だった悠希くん。目指すは優勝です。
【窪田清盛さん】「慌てるなよ。やばいと思ったら止まって、落ち着け」
初戦を突破し、迎えた2回戦。
前へ前へ…。気がはやってしまい、相手の引きにはまってしまいました。
悔しさに、涙を流す悠希くん。
【窪田悠希くん】「悔しいです。“自分の相撲”が取れなかった」
【窪田清盛さん】「心優しいのはいいんですけど、それが相撲に出ちゃうと勝負にならないですよね。だから、あえて厳しいことを言って、心を鍛えています」
夢の大相撲へ。父子二人三脚で、自分たちが目指す“相撲道”を突き進みます。
(関西テレビ「newsランナー」2024年10月29日放送)