性別による格差についてお伝えしている、シリーズ「♯わきまえないとだめですか♯きっと変えられる」。
3月に発表された世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数で、日本は156カ国中で120位でした。先進七か国の中では最下位という結果です。これだけ順位が低い、大きな理由の一つに、政治の世界の男女格差があります。
国会議員の女性たちに本音を聞きました。
【加藤勝信 官房長官】(3月31日)
「先進国の中では最低レベル。これは各国がジェンダー平等に向けた努力を加速しているところを、相対的に我が国の取り組みが遅れているという事を示しているものだと」
衆議院の場合、定数465人のうち、女性は現在46人です。(4月9日現在)
圧倒的に男性が多く、女性は一割を切っています。
今回、関西テレビではすべての女性衆議院議員にアンケートの協力を求め、22人から回答を得ました。
まず驚かされたのが、この質問に対する回答です。
「有権者や同僚議員などからハラスメントなど、不平等な扱いを受けたことはありますか」
【自民・稲田朋美議員】
「女性は癒し系でないとだめだと言われて、余計なお世話と思った」
【匿名】
「支部長時代に20歳ぐらい上の地方議員に抱きつかれキスをされたことがある。これまで誰にも言わずに我慢してきたが、気持ち悪かった記憶は消えない」
【立民・岡本あき子議員】
「女が社会に出てくるから保育所や介護が必要になって税金を使わないとならなくなる。だから家に帰っていろ」
【立民・池田真紀議員】
「ニコニコしていればいいんだと肩くみ写真コーナーを作る」
アンケートからは国会における少数派ゆえの苦労やハラスメントの実態が浮かび上がります。
現在2期目、京都を地盤とする自民党・木村弥生議員は、専業主婦を経て、40代で看護師になり、その後国会議員となった経歴の持ち主です。
【木村弥生議員】
「あまりにも(女性が)少ない、自分しかいなかったり、そういう場合は立ち位置をキープするのに精いっぱいで、どこかで(男性に)同化しないと生き延びられない。そんな苦労は、男性議員は感じたこともないと思う。これがせめて2人、3人になったところで、やっと自分達らしい主張をできるようになる」
女性議員が少ないという問題は長年、指摘されてきました。
2018年には、国会や地方議会の選挙で男女の候補者の数をできる限り均等にするよう目指す法律が施行されています。
しかし直後の参議院議員選挙でも、積極的に擁立を進めた野党に比べ、与党の女性候補者の数は伸び悩びました。
どうすれば女性議員が増えるのか?変えるべき点を聞きました。
【公明・古屋範子議員】
「過酷な選挙・議員活動の改善、子育てしながら続けられる環境の整備」
【立民・尾辻かな子議員】
「都道府県議に女性を増やす。(女性に議席や候補の一定比率以上を割り当てる)クオータ制の導入」
【自民・稲田朋美議員】
「政治は男がやるものという意識を社会全体で変える。女性議員が少ないことが民主主義をゆがめていることの認識を広める」
立憲民主党の辻元清美議員も社会の意識を変える必要があると話します。
【立民・辻元清美議員】
「社会全体にはびこっている男尊女卑の考え方、それが変わっていない。高度経済成長期はモーレツ社員で、男性が家庭のことは妻に任せて、企業戦士として働くということで、日本を戦後、引っ張ってきたことは事実なんですね。そういう意味では、社会全体のこの意識が変わらないといけない」
女性議員が少ないことで、どんな政策が進まないのでしょうか?
アンケートでは、「女性の非正規雇用や低賃金」「性被害への取り組み」「少子化対策」「選択的夫婦別姓」などの記述がありました。
回答のなかには、自民党・高市早苗議員の、女性のために提案した政策がうまく進まなかったという、以下のような体験談もありました。
「ホルモンバランスの変化による女性の生涯の健康対策を政策にしようとした時に 男性議員の理解が得られなかった経験はある」
女性議員が少ないことで進まない政策について、立憲民主党の辻元議員・自民党の木村議員は以下のように指摘します。
【立民・辻元清美議員】
「介護現場、保育の現場、女性の仕事と言われてきたところは賃金が低いでしょ。でもいま介護とか保育は非常に大事な仕事になっているにも関わらず、女性が補助的に家計を助けるために働いてきたという流れがあるから今でも賃金が低いまま」
【自民・木村弥生議員】
「少子化になるという事は20年くらい前からわかってきたことなのに、無策だったとはいわないけど、いつもどこかそこじゃないという政策がとられていたように思う。それは霞が関にしても、永田町にしても男性が多かったから本当の意味での女性が求めている政策とずれてきたんじゃないか」
女性議員が少ないということは、女性にとっての不平等解消や身近な事柄の法整備が進みにくいといえるのかもしれません。政治分野における男女格差が注目されるようになり、自民党のなかでも焦りが生まれています。
【自民党・下村博文政調会長】(3月31日)
「(ジェンダーギャップ指数120位について)率直に言って恥ずかしい数字だと思っていまして。声掛けだけでは女性の議員を増やすのは難しいと思っていますので、3割の候補者のクオータ(割り当て)制をぜひ自民党は導入すべきだと」
【自民・木村弥生議員】
「ポスターがあって男性女性があった時にどちらを選ぶかというときに、女性が女性を選ぼうとしないのもあるのかもしれない。手上げしづらい、候補者としてなりにくい、有権者も女性政治家を選ぶ風土が育っていない」
【立民・辻元清美議員】
「子育てと仕事の両立がしやすい社会を作っていく。そのためには制度を変えていく、制度を変えるのは国会とか地方議会、そこに女性を増やさないと当事者としての声が届きにくい。今までは悪循環だったんだけど、これをなんとか好転させたい」
与党・野党を問わず、女性議員から寄せられた政治の世界の男女格差の問題。
法律を作り、社会の制度を整えることを仕事にしている人たちの世界での格差解消が進まない限り、社会全般の状況も前へ進みません。
男女格差の問題があるという認識は、多くの政治家が共有しています。
今後の取り組みが待たれます。