スーツケースを持ってホテルに到着した中学生。
「Hello sir, how can I help you?(お伺いしましょうか?)」
「I’d like to check in please(チェックインしたいのですが)」
英語でチェックインをしています。
海外留学の一場面ように見えますが、実はここは大阪。
行われているのは“国内”での留学プログラムです。
新型コロナウイルスによる影響を受ける中、今実現できる留学の形として『学校』と『外国人の就労支援施設』がタッグを組んで始めました。
今回、国内留学に参加したのは、大阪府・大東市にある四條畷学園中学校。
1996年からニュージーランドの姉妹校と交流を持つなど、国際教育に力を入れています。
例年3年生は、授業の集大成として、グアムに海外研修に行き、海の家での接客や現地の大学生との交流を行ってきました。
しかし、今年度はコロナですべて中止に。
【生徒】
「(グアム)研修なくなったのは残念です。」
【四條畷学園中学校・小椋伴厚先生】
「子供らは(海外で)触れ合いたい、外国の人と実際に自分の英語でトライしたいとか、インタビューしたいとか、交わらないと感じられないものがあると思うので、だいぶ我慢している現実は否めないと思います」
そんな時に知ったのが、外国人のための求人サイトを運営する会社・YOLO JAPANが企画する「国内留学プログラム」でした。
会場となるのは、大阪市浪速区にある「YOLO BASE」。
「YOLO JAPAN」が運営する、外国人就労訓練施設です。
日本で働くために来日した外国人が、施設内のホテルやレストランで仕事をしながら、様々な職業訓練を受けることができる国内でも珍しい施設です。
しかし、去年4月からホテルが休業するなど、施設も苦境が続いていました。
また、YOLO JAPANのサイトには世界約226か国、約17万人の外国人が登録していますが、コロナの影響で求人が減っていました。
このコロナ禍で、豊富な人材と施設を活用できていないことが課題でした。
【YOLO JAPAN・加地太祐代表取締役】
「留学に行けない学校の先生から、YOLO BASEで外国語体験できないかご相談いただいたのがきかっけでした。子どもたちにとっても様々な国籍の違った言葉の違った人と出会うことはとても貴重な経験」
そこで、学校の声から生まれたのが国内留学プログラムでした。
■国内で“英語漬け”の3日間のはずが…なかなか日本語が抜けない生徒たち
留学プログラム当日。
【アメリカ人講師・アイザック先生】
「Good morning everybody」
生徒たちを出迎えたのは、日本で暮らすアメリカとジャマイカ出身の3人の先生。
【アメリカ人講師・アイザック先生】
「English Only. We want you to feel like you are in another country.(日本語禁止です。みんなに外国にいるような気分を味わってほしいので。)」
生徒たちは、英語漬けの3日間を過ごします。
会場には、留学のシーンを再現したセットが準備されていました。
スタッフ手作りの飛行機では、客室乗務員とのやりとり。
さらに入国ゲートでは、手続きを英語で体験します。
国際教育に力を入れている学校だけあって、生徒たちは用意された台本をすらすらと読めますが、講師から話しかけられると…
【アメリカ人講師・アイザックさん】「Can you fly a plane?(飛行機操縦できる?)」
【生徒】「…」
雑談になると、話したいことはあってもなかなか言葉が出てきません。
生徒はもどかしさを感じていたようです。
【生徒】
「先生が小さい飛行機を操縦できるという話をしてたんですが、僕すごく飛行機好きなんで話したかったんですけど、早すぎて何言ってるか分からなかったので、話したかったです」
昼のご飯どきになると、注文は難なく英語でこなせますが、テーブルに着くと生徒たちはついつい日本語に…
先生を会話にうまく巻き込むことができませんでした。
国内留学初日は、なかなか留学モードになりきれず終了です。
■生徒たちの気持ちに変化が…“国内”留学で感じたことをスピーチで発表
講師を務めるアメリカ出身のアイザック先生の自宅を訪ねました。
日本の古民家に憧れて来日し、自分でリフォームをしながら暮らしています。
コロナで英会話の仕事が減り、家にこもりきりだったといいます。
【アメリカ人講師:アイザック先生】
「ほんまにここで毎日リフォームだけしていたらクレイジーになるかと思った。一人でいるような気持ちになって、人に会いたいと思って。生徒たちに会いたいです。会いたいし話したい」
そして迎えた国内留学2日目。
この日から英語のスピーチに挑戦します。
初日の反省もあり、生徒たちに少しずつ変化が表れ始めました。
思うように話せなかったという生徒は、自ら席を立ち先生にアドバイスをもらいます。
アイザック先生のミドルネームを真似て、自分でミドルネームをジャクソンと名付けた生徒もいるようです。
話すことをためらっていた生徒たちが、自ら質問し、先生らと一緒にスピーチを組み立てました。
最終日の朝、いよいよスピーチ本番。
直前まで、必死で練習を続ける生徒たち。
3日間で感じたことを自分の言葉で表現します。
【生徒のスピーチ】
「Hello everybody my middle name is Jackson. I will use the skills I learned at English camp to study English harder because I was motivated very much. (私のミドルネームはジャクソンです。この留学プログラムでとてもやる気が出たので、ここで学んだことを活かして、英語をさらに一生懸命勉強します)」
プログラムの全日程が終わり、生徒たちからは…
【生徒】
「2日目くらいから飛行機の話で盛り上がって、ジャクソンのところでも仲良くなって」
【生徒】
「もともとめっちゃ(英語が)苦手で、なんやねんこれって感じやったけど(今回は)充実しすぎやろってくらい充実してた。もっとコミュニケーションとって翻訳者みたいになりたいって思った」
講師のアイザック先生も、充実した3日間を過ごしたようです。
【アメリカ人講師・アイザック先生】
「みんなが打ち解けてくれて嬉しかったです。将来、ここで学んだことを生かして、外に出て英語を話して、みんながより良い生活が送れることを願っています。ありがとうございました」
今、できる留学の形。
海外には行けなかったけれど、学びのきっかけとなる交流がそこにありました。
(カンテレ「報道ランナー」3/2放送)