見た目も鮮やかで美味しそうな和菓子。
実はこれ、老舗和菓子店が開発した新商品です。
新型コロナウイルスの影響で贈答用やお土産としての需要が激減する中、新たなヒット商品を生み出している老舗和菓子店の挑戦を取材しました。
訪れたのは、創業200年を超える「あみだ池大黒」。
江戸時代から作っている「おこし」などが人気ですが、去年、従来の発想にない和菓子を一から開発しました。
【あみだ池大黒・七代目小林昌平社長】
「進物であったりプレゼント、観光土産というところの売り上げは非常に厳しい。今までの作戦というのが全てあてにならない、今の私たちは前例のないことへの挑戦なんです」
総務省の家計調査によると和菓子類の消費支出は去年、緊急事態宣言の影響などもあり例年より、大きく落ち込みました。
この会社でも売り上げが例年の半分ほどになったため、新たに会社帰りなどの地元客をターゲットに新商品の開発に着手。
目を引くため、味も見た目もインパクトを重視したそうです。
製造を任されているのは、去年入社したばかりの新人職人の茅原(かやはら)さんです。
【あみだ池大黒・茅原阿未さん(23)】
「ビックリしましたね。(新卒で)入社してまだ半年くらいしか経っていなかったので…。一番気を遣ってるんは、仕上げの工程ですかね。生ものを扱っているので、ここでちょっとでも汚れだったりとか、入ってしまうと全ての出荷がだめになってしまう」
こちらが、去年11月に発売した新商品。
まるで洋菓子のような見た目が特徴で、抹茶のあんバターと小倉のあんバターを、ふわふわの生地ではさんだ進化系の回転焼です。
週に3日、大阪の5店舗で数量を限定して販売していて、毎回完売しているということです。
(アントレマルシェ エキマエマルシェ新大阪店 火曜日・木曜日の限定発売(17時~販売))
【購入した男性】
「おしゃれですよね。なかなか和風でケーキじみたものがないので、これからヒットするような商品じゃないかな」
【購入した女性】
「見た目も高級感がありますよね」「お皿に載せてフォークで食べたいです」
その一方で茅原さんは、山口県に住む家族にまだ商品を届けられていないそうで…
【あみだ池大黒・茅原阿未さん(23)】
「早くコロナが終わって、家族に自分が作ったお菓子を食べてもらいたいなとは思っています」
進化した和菓子は、ほかにも続々と開発されています。
大阪市の老舗あんこメーカー「茜丸」が去年10月、オンラインでの限定販売として打ち出したのがこちらの商品。
創業以来初めて、パティシエを招き、抹茶やブルーベリー、マンゴーなど5つの味とあんこを組み合わせ、本格的な洋風どらやきを作りあげました。
さらに当初、社員も半信半疑だったという、トマト味も好評だったため、意外な味にも挑戦しています。
【薄田ジュリアキャスター】
「来月発売されるこのどら焼き…。中に入っているのは、コーラ味のあんなんです。いただきます。シュワっとコーラの風味が口いっぱいに広がりました。しっかりコーラ。おいしいこれは」
【茜太郎会長(74)】
「もっと他におもしろいものないかなって話があって、それならスカッとしたものないかといって、できたんですわ」
創業129年の老舗和菓子店「むか新」では、棒状の羊羹を食べきりサイズに小分けした商品も1月から限定販売。カットした際のきれいな断面が話題を呼び、期間を延長して販売しています。
さらにこの店では、外出自粛というピンチをチャンスに変えた新商品が人気なんです。
家族で楽しくおいしく!自宅で作れる“簡単和菓子”
2020年9月に限定発売した、こしあんとお餅をバラバラにし自宅で作れるようにした「お月見だんごセット」。
おうち時間が増えたことを逆手に取ったことで、生産した約300個がたちまち完売しました。
【むか新・六代目向井新将社長(43)】
「私が家ですごす時間がこのコロナで増えてしまったので、子どもとどうコニュミケーションをとろうかなという中で、ふらっと思いついた感じですね」
2月27日には「手作り桜餅セット」を発売する予定だそうですが、和菓子作りが初めての私でも、簡単に作れるのかやっていました。
【薄田ジュリアキャスター】
「まず両手はしっかり水に濡らして…餅生地を押しつぶしていきます!うわっすごい弾力。自分で作ったものっておいしいですねこれをワイワイいいながら家族で桜餅作りをするって二倍の楽しさがありますよね」
【むか新・六代目向井新将社長(43)】
「まだまだできることがこのコロナの中でたくさんあるなーと逆に知らされたかなと。いろんなものにチェレンジしていきたいなとワクワクしているところです」
老舗和菓子店の挑戦。
さらに新商品をオンラインで販売することで活路を見出す店も!
若手のアイデアで進化!先代の味に負けない魅力
創業102年を迎える京都の和菓子店「長生堂」。
看板商品は、先代が考案した「かも川」で、主に贈答用として人気です。
しかし、新型コロナの流行で創業以来最大の危機に。
来店客が激減したこともあり、「かも川」を改良した上で、オンラインで販売することにしたのです。
【長生堂・三代目中村雄作さん(52)】
先代が作った商品なので、手を加えることは抵抗があったんですけど…何か新しいことにチャレンジしていかなかったら、またお客さまにも振り向いてもらえない」
和菓子職人は中村さんただ一人だったため、開発は、苦難の連続でした。
そんな中、若い和菓子職人・木村千風優さん(25)が、長生堂のあんこの味に魅せられ、入社しました。
長年の味に新たな発想が加わり、何度も議論と試作を重ねました。
そして開発されたのが、宇治の抹茶と丹波大納言小豆を寒天で固めた「かも川プレミアム抹茶」。
すでにオンラインで300セット売れたということです。
(※通常はオンライン販売のみ 毎月17日のみ店頭販売)
【長生堂・三代目中村雄作さん(52)】
「すごくいいパートナーというかいろいろ二人で話をし、アイデアを出し、そしてあの商品に至ったと彼女がいなかったら新しい「かも川プレミアム抹茶」はできてないと思うので、感謝しています」
2人は、新たなヒット商品を生むため、試行錯誤を繰り返しながら開発を続けています。