苦境が続く航空業界。
関西空港を拠点とする格安航空会社ピーチが逆風の中、新たなサービスを次々と打ち出しています。
コロナが終息した後を見据えた、ピーチの狙いを取材しました。
■異例の戦略尽くし…遊覧飛行や、路線拡大、定額運賃も
ピーチの機体に乗り込む、地元の小中学生約40人。
去年11月に参入した、チャーター機による遊覧飛行事業のテストが行われました。
九州や四国の上空を回るおよそ2時間半のフライトです。
機内では、パイロットや客室乗務員が仕事の内容を解説。
【パイロット】
「パイロットのお仕事について、飛んでる時に何してるかというのをお伝えします」
便数を減らしたことで、余った機体を有効活用し、修学旅行などの需要を取り込もうという狙いです。
【参加した中学生】
「CAさんやパイロットさんも仲良く接して下さって、一般(のフライト)では味わえないような感じでした」
「めったにできない体験だと思うのですごく楽しかったです」
【ピーチ・森健明社長】
「今回のチャーターフライト、これも新しい領域です。この状況下においてあらゆることに取り組んでしっかり収益を回復して生き残っていく」
新型コロナウイルスの影響で、逆風が吹く航空業界。
関西空港では、今年度4月から12月までの国際線の旅客数が前年の1%未満にまで減り、国内線も約31%に減少しています。
一機あたりの運航本数を増やして、低価格を実現し、収益をあげてきた格安航空会社も大きな打撃を受け、エアアジアは去年11月、破産手続きを開始しました。
そんな中、ピーチは21路線だった国内線を、33路線に拡大する異例の戦略を打ち出したのです。
【ピーチ・森健明社長】
「ピーチは事業の40%が国際線ということで、なかなか今国際線の事業を展開するのは厳しい状況です。そういった国際線に使用する機材や乗員を積極的に国内線にシフトして、少しでも収益を改善させようというのが、今我々の大きな使命です」
関係者によると、国内線の全路線を対象に、約2万円で1カ月間乗り放題になる定額サービスの導入を検討。
生き残りをかけ、攻めの姿勢を見せています。
■航空事業だけじゃない…ピーチが手掛けるバッグやぬいぐるみも?
第2ターミナルの国内線ゲートの中では、去年12月、直営ショップのオープンのための準備が行われていました。
担当するのは事業戦略室の井上理マネージャーです。
【ピーチ事業戦略室・井上理マネージャー】
「飛行機以外でも、お客さまとの接点を作りたいと思って、旅出発して飛行機に乗る前にもピーチを感じていただきたい」
ピーチは、航空事業以外の収入を増やそうと、新たな戦略を立てました。
バッグやキーホルダーなど、オリジナルグッズの品ぞろえをこれまでの4倍に増やそうというのです。
井上さんが元客室乗務員のスタッフとともに訪れたのは大阪・難波のレストラン。
ピーチはロスを防ぐために機内食を廃止する方針で、事前に直営ショップで買って持ち込んでもらうための、オリジナルの軽食を開発することにしたのです。
【軽食を開発したレストラン担当者】
「サンドイッチですが、ちょっとパサパサしてたところは改良しまして、パンをしっとりさせた形にはなってると思います」
【元客室乗務員】
「全然パサパサ感ないです。おいしい、卵も甘いです」
【軽食を開発したレストラン担当者】
「ピーチさんに合わせて、ピーチ味のフレンチトーストを作りました」
【元客室乗務員】
「女子受けしそうな中のピーチジャムが嬉しいです。機内の販売にもつながりそう。絶対コーヒー飲みたくなります」
毎朝手作りするサンドイッチに、甘いものが欲しいという声に応えたフレンチトースト、百貨店にも卸している有名店が手掛けたピーチ限定おにぎりなど、9カ月かけ13種類の軽食を完成させました。
仕掛けるのは、直営ショップだけではありません。
■コロナ後を見据えた戦略は『笹だんご』
観光客激減の”地元の名物”をオンライン販売
この日、井上さんが向かったのは、新潟県。
地元の名物「笹だんご」の工場です。
【にいがた匠の杜・枝並宜男代表取締役】
「私どもの笹だんごの特徴は笹離れがいい」
【ピーチスタッフ】
「全然くっつかないですね」
【ピーチ事業戦略室・井上理マネージャー】
「ヨモギの味がすごい感じられる」
ひとつひとつ職人が手作業で包む笹だんご。
実は、ピーチは去年7月から、観光客が減った運行先を応援しようと、地元の名物をインターネットで販売するオンライン物産展を始めました。
【にいがた匠の杜・枝並宜男代表取締役】
「(店頭販売では)賞味期限が全部ついていて、賞味期限が近くなると全部引き上げざるを得ない、納品はゼロだけど、(すでに出した商品が)帰ってくる、マイナスなんです」
「(お客様に新潟へ)来てくださいとも言えない状況で、観光業にとってみると辛い状況です」
【ピーチ事業戦略室井上理マネージャー】
「私たちもお客様を運ぶだけでなく、オンライン物産を通じて、地元に興味を持っていただきたい、そしてそのあと、地元に行くという動きにつなげていけたらと思っています」
コロナ収束後の需要拡大にもつなげるこの取り組み。
オリジナルグッズだけを販売していた時に比べて、ネット通販の売り上げは2倍以上に伸びています。
今年2月、直営ショップのオープンを迎えました。
感染拡大により、スタッフの移動が制限され、2カ月以上遅れました。
さらに、1月に出た緊急事態宣言の影響により、29路線で減便。
厳しい中でのスタートです。
【ピーチ事業戦略室・井上理マネージャー】
「痛手ですね。便数が減ってくると、お店のお客さまも比例して減ってしまう形になるので影響は大きいと思います」
【客】
「おにぎりがちょっといい感じですね、おしゃれな感じで買って食べてみたい」
「ピーチ限定のものがあるとブランドの強さを感じます」
利用客は少ないものの、この日用意した軽食の9割ほどが売れました。
【ピーチ事業戦略室・井上理マネージャー】
「シャッターが空いた瞬間にどんどんワクワクしてきて、厳しいスタートかと思うが、前向きに頑張ってやっていきたい」
手探りの運営が続くピーチ。
生き残りをかけ、攻めの戦略で難局を乗り越えようとしています。
(カンテレ「報道ランナー」2/16放送)