新型コロナウイルスに感染し回復したあとも、後遺症によって元の生活に戻れない人がいます。
感染したときは軽症であっても長く続くことがあるという、厄介な後遺症の実態とは?
兵庫県に住む60代の男性。
4月に感染が確認され、8月末に退院しましたが、現在も病院に通っています。
【医師】
「レントゲン上は右の肺も左の肺もちょっとダメージが残っているかなという感じですね」
【後遺症が続く男性】
「スロープとか歩くと…ちょっとしたスロープでもフーフーなります」
【医師】
「やっぱり息切れは強いですか?」
【後遺症が続く男性】
「そうですね」
重症だった男性は一時意識不明になり、人工呼吸器をつけて治療を受けていました。
命の危機は脱しましたが、退院してからも息苦しさに加え、味覚障害などの様々な後遺症が続いています。
【後遺症が続く男性】
「味覚が、舌の上に砂が乗っているような。味わいがないです」
「こんなに長引くとは予想のしようがないです。不安ですよね」
男性の後遺症はいつ回復するのか。
担当する医師は…
【神戸市立医療センター中央市民病院・永田一真医師】
「完全に回復できるのかどうかというのが、まだわからない」
「長期的なところは予測は難しい。様子を見ていくしかない」
後遺症は、どれぐらいの割合でみられるものなのか。
全国で初めて病院で院内感染が起きた和歌山県では、保健所が調査を実施。
退院から2週間以上が経っている163人から聞き取りをしたところ、約半数の75人に、
後遺症とみられる様々な症状があることがわかりました。
75人(複数回答)の症状は(多い順)ーー
・嗅覚障害(30人)
・けん怠感(26人)
・味覚障害(20人)
・呼吸困難感(20人)
そのほか、脱毛(12人)や記憶障害(6人)を訴える人もいました。
年代別の『後遺症がある人の割合』について――
・30代…77%
・40代~60代…50%以上
・20代…39%
【和歌山県福祉保健部 野尻孝子技監】
「第一印象は、『厄介』。若い人や働き盛りの人に後遺症が多いということは問題」
後遺症を訴える患者約300人を診察する、平畑光一医師。
軽症だった人でも、後遺症が生活に深刻な影響を及ぼしていると話します。
【ヒラハタクリニック 平畑光一医師】
「軽く済んでいる方が多い。ちょっと微熱があったぐらいで終わっちゃったと」
「PCR検査が陽性でも。そのあとに悪くなっているパターンがすごく多いので。思っているほど、軽い病気じゃない」
「(症状で)圧倒的に多いのが、だるさ。非常に強いだるさが出て、動けなくなってしまう。日常生活もままならないぐらいになってしまう人もたくさんいます」
実際に、後遺症の影響で仕事に復帰できない人もいます。
平畑医師が診察している、兵庫県の50代の男性です。
【けん怠感が続く男性】
「気持ち的には(感染当初より)今回の方がつらいです。最悪です。今の状態は」
男性は4月に高熱が出て感染が判明し、入院しましたが、軽症だったということです。
しかし、退院した後から、強いけん怠感に襲われるようになりました。
一旦は症状が軽くなり、感染確認から約2カ月後に仕事に復帰しましたが、その4カ月ほど後にまた発熱し、けん怠感がぶり返しました。
今は休職に追い込まれています。
【けん怠感が続く男性】
「自分が勝手に無理してしんどくて、さぼっているのとは感覚が違う、倦怠感の。これは今回初めて経験しました」
「とにかく、とにかく横になりたい」
「頭の中ではいろんなことをどうしても考えてしまうので。会社員だったら、会社に行かなかったら、当然生活の糧も得られませんから。不安が広がっていくんです」
食欲もなく、日によっては、全く食べられないときもあります。
一日の大半を横になって過ごす日々。
自分の状況が、周りからどう見られているか、大きな不安を感じています。
【けん怠感が続く男性】
「社会から見る目がやっぱり、全然違っていて。『またぐずぐず言うとるわ』という感じだけで終わられていたらつらい」
「(そう見られると)後遺症の人は(社会に)いられなくなる」
平畑医師が診察する後遺症の患者の中には、会社を解雇された人も10人以上いるということです。
【ヒラハタクリニック 平畑光一医師】
「このまま放っていていいわけがない。(国や自治体がつくる)窓口が一つあった方がいい。後遺症の相談窓口が」
「オンラインなどで後遺症の診断や治療をやっているところに繋げてもらうように。サポートの体制を作っていかないといけない」