にしんの煮つけに、野菜のおひたし…
大阪府寝屋川市の配食サービス会社で作られている、この弁当。
新型コロナウイルスに感染し自宅で療養する人や、濃厚接触者として自宅待機をしている人に届けられます。
【配食サービス会社と利用者の電話】
「配達員がお弁当を(玄関のドアノブに)かけた後に、立ち去ってからのお取り込みをお願いしたいんです」
普段は高齢者向けの配食を行うこの会社では、寝屋川市からの委託を受け、今年5月から自宅療養者などへの配食サービスを始めました。
費用は寝屋川市が負担し、利用者は無料で弁当を受け取れます。
【配食サービス会社を営む男性】
「朝昼晩の食事で1日1500円税込みで対応させてもらっています」
限られた予算の中で、毎食日替わりのメニューを用意。
和食が中心ですが、若い世代の利用者も多いため、揚げ物も加えたボリュームのある弁当を届けています。
寝屋川市の配食サービスを利用する人は、11月14日で1日56人と、これまでで最も多くなっています。
■自宅待機の男性「食事が一番不安…」 配達は“置き配”で「安心」
【配達員の男性】
「おはようございます。寝屋川市の配食に来ました。玄関のそばにお弁当置いておきますので、受け取ってください」
配達は1日2回。
午前中に昼食、午後に夕食と翌日の朝食が届けられますが、利用者と配達員は全く接触しません。
自宅待機となり、配食サービスを利用していた40代の男性は…
【濃厚接触者として自宅待機の男性】
「(保健所から)できるだけ外出を控えてくださいと聞かされたときは、あれ、どうしよう、大丈夫かなって。食事が一番不安でしたね…。(配食がなかったら)こそっと夜、人の少ない時間帯に24時間スーパーとかに行って買い出しをしようと思ったかもしれません」
男性は職場で感染者が出て、濃厚接触者に。
PCR検査の結果は陰性でしたが、保健所からは経過観察のため「濃厚接触があった時から2週間外出しないよう」求められました。
日用品はなんとか備蓄がありましたが、不安があった食事は、同居する70代の母親と2人分の配食サービスを利用しました。
【濃厚接触者として自宅待機の男性】
「安心できますね。家から出ないようにという言葉には従いやすくなる。あまり期待できないなと思っていたんですけど、普通のお弁当で、すごくおいしいので驚きました」
寝屋川市はなぜ、いち早く、この配食サービスを始めたのでしょうか。
■大阪府も「配食サービス」支援 一方”人員確保”など課題も…
【寝屋川市新型コロナウイルス感染症対策室 長船章浩課長】
「この事業がないと、ご親族やご近所に知り合いがおられたら、ドアの前に食事を置いてもらったりできないかと。あくまで『自助』をお願いするしかなかった。どうしても無理な時は保健所にある物品をなんでも、それを保健所の職員で届けるというような対応をしていました」
大阪府は11月から、各自治体の配食サービスにかかる費用を、補助する制度をスタート。
【大阪府・吉村洋文知事(10月27日)】
「この冬に向けて、軽症・無症状の自宅療養者が増えてくるだろうと想定しています。毎日3食分を配食することで、療養期間中は療養に専念してもらい、自宅から出なくても過ごせるように…」
しかし、自宅で療養する人の数が刻々と変化するために、在庫管理や人員の確保などが難しいことから、手を挙げる事業者が見つからないという自治体もあります。
配食サービスを行う寝屋川市の会社でも当初、従業員の安全をどう守るかに、不安を感じていました。
【配食サービス会社を営む男性】
「最初に話を聞いた時に、やはり心配は心配だったんです。従業員の健康や安全を守るのも当然僕らの責任なので。そこをどうするのかというのは、市役所の方や保健所の方と相談しながら、指導も受けながら行いました。そこが一番心配で、気を使ったところです」
保健所の指導のもと、利用者と接触しない方法を丁寧に説明して、従業員の協力を得ました。
この会社では、従業員が感染したことは一度もありません。
一方、違った形で生活支援を行う自治体も…
■”トイレットペーパー”から”カレー”まで… 堺市では「自宅療養パック」を配送
【大阪いずみ市民生活協同組合 藤山聖彦常務理事】
「こちらが、堺市の自宅療養パックの商品の詰め合わせの作業場です」
堺市では5月から生協と運送業者に委託し、2週間分の食品などを自宅で療養する人や、濃厚接触者として自宅で待機する人に無料で届けています。
食中毒のリスクや配送のコストを考え、弁当ではなく、保存がきき一度に送れる療養パックを選択しました。
中には米やパン、レトルトのカレーや牛丼などに加え、トイレットペーパーやゴミ袋などの日用品も入っています。
【大阪いずみ市民生活協同組合 藤山聖彦常務理事】
「生鮮品がなかなか届けられないので、野菜の代替で野菜ジュースを入れています。健康的に過ごしていただくことも必要ですので」
11月に入り、利用する人の数は1日約20人に。
1日で50人ほどは配送が可能だということですが、今後、利用者の増加にどこまで対応できるかが課題です。
【大阪いずみ市民生活協同組合 藤山聖彦常務理事】
「出来る限り対応したいと思っています。作業工程を見直すことで、もう少し上積みは可能なので。日々課題を見つけながら進めているところです」