新型コロナウイルスによる大きな打撃から立ち直ろうとしているイタリアを応援しようと、兵庫県西宮市にあるイタリア料理店が動画配信を始めました。
懸け橋として選ばれたのは、イタリア名産のオリーブオイルです。
「チャオトゥッティ!」
「総領事に紹介、え~総領事に…」
「噛んでるしもう~」
「君もちょっと声ちっちゃかったて」
何度も失敗しながら、スマートフォンに向かって語り掛けているのは、荻堂桂輔さんと紀里さん。
兵庫県西宮市でイタリアンレストランを営む夫婦です。
行っているのは、YouTubeにアップする動画の撮影。
これは、イタリア総領事から直々に依頼されたものです。
今年3月。
【WHO テドロス事務局長】
「ヨーロッパは今やパンデミックの震源地になっている」
新型コロナウイルスが猛威を振るっているヨーロッパ。
その中でもイタリアは、これまでに24万人以上の感染が確認され、約3万5千人が死亡するなど、特に大きな影響を受けた国の1つです。(※2020年7月26日時点)
しかし、感染拡大の状況が落ち着いたとして、6月にはEU諸国との往来が解禁となり、今では日本を含む主要国に対しても国境を開放するに至りました。
【ルイージ・ディオダーティ イタリア総領事】
「イタリアは今や再出発を果たそうとしています。その再出発のシンボルとして、オリーブオイルを紹介したいと思いました」
経済活動を再開したイタリアのメッセージを伝えるため、総領事が選んだのは、イタリアに約500種類あると言われるオリーブオイルでした。
【ルイージ・ディオダーティ イタリア総領事】
「イタリアのオリーブオイルに詳しいという点で、このお願いをするのに紀里以上にふさわしい人は思いつきませんでした」
白羽の矢が立ったのが、オリーブオイルソムリエとして、イタリアで開かれる品評会の審査員なども務めている荻堂紀里さんでした。
オリーブオイルと夫の桂輔さんが作る料理をテーマに、日本とイタリアに向けた動画を作って公開してほしい、と依頼を受けたのです。
【荻堂紀里さん】
「イタリアがこれからもっともっと元気になっていくように、日本の食卓の皆さんにご家庭の中でイタリアを感じていただきたいって仰っていただいて」
料理の世界では一流のプロでも、動画制作は不慣れな2人。
機材を購入し、練習も重ねて撮影に臨みました。
まずは紀里さんが、家庭で簡単に作れる料理を実演します。
【荻堂紀里さん】
「お豆腐のスープを作りたいと思いま~す」
オリーブオイルと合わせるのは、なんと和の食材、豆腐。
「OK~」
「すごい」
「シュルルルル~とかけていきます。超簡単、オリーブオイルとお豆腐のスープです」
「本当に簡単ですね、面白いな」
続いて、シェフの桂輔さんに代わり、完成したスープにプロならではのアレンジを加えます。
「すごくいい香りがしてます」
「おいしそう」
「オマールを焼きます。生ハムを焼いたところに入れて焼きます」
「オリーブオイルを加えます。これがソースになります」
「完成です」
「すごいおいしそう~」
2人が営むレストラン「アルテシンポジオ」も、外出自粛の影響で、売り上げは大きく落ち込みました。
【荻堂桂輔さん】
「予約が入らないので何日間もずっと閉めるということになってました。本当に先が見えないことに対しての不安しかなかったですし、『色々な決断をしなければならないな』という判断もその中にはありました」
激戦区の人気店として、17年間育て上げてきた店を廃業することも、一時は考えたといいます。
席数を半分に抑えるなど、できる限りの感染防止策を取りながら営業を続ける2人にとって、救いとなったのは、「人とのつながり」でした。
【荻堂桂輔さん】
「お客さんも1カ月とか2カ月ぶりに来ていただけるじゃないですか。その時にお客さんも目をうるうるさせて『やっぱり外で食べる料理、アルテシンポジオで食べる料理がいい、一番』って言ってくださった時に、もう本当に嬉しくて、『頑張って良かったな、耐えて良かったな』って思いました」
【荻堂紀里さん】
「泣いてましたもんね、嬉しくて、ありがたくて、毎日」
制作された動画には、イタリア総領事からバトンを受けた2人の感謝と未来への希望も込められています。
【荻堂紀里さん】
「イタリアの皆さんに元気になっていただきたいし、これからも明るい未来を作っていきたいなと思って、イタリアに育ててきてもらったような感じなので、恩返しがしたいですね」