長期の休校で…「言葉の壁」に悩む子供たちも
新型コロナウイルスの影響で、子供たちの「教育格差」が懸念されていますが、外国にルーツを持つ子供たちの中には「学習内容」だけでなく、「言葉の壁」にも悩む子供が多くいます。
そんな子どもの学びを支える取り組みを取材しました。
休校中、課題は「日本語での説明」…ママとは「ベトナム語で会話」
東大阪市に住む小学2年のニーちゃん(7)。
母親のホアさん(32)の仕事をきっかけに5年前、ベトナムから日本に来ました。
新型コロナウイルスの影響で休校となり、学校に行かずにインターネットを使って勉強する機会が増えました。
そんな彼女に立ちはだかるのが「言葉の壁」です。
――Q(母親が)日本語で教えることはできない?
【ニーちゃん】
「私が何か日本語で書いていたら、ベトナム語でママになんて書いているか言って、ママが(勉強を)教える」
【母親のホアさん】
「日本語わからない。だから教えられない。」
学校から配られる課題は日本語のものばかり。
聞きたいことがあっても、先生代わりとなった母親は日本語が十分にはわかりません。
【ニーちゃん】
「あ~、もうわからへん~」
外国にルーツを持つ子どもは全国で約5万人いるとされています。
【ニーちゃん】
「勉強遅れちゃうかもとか、私は思ってる」
留学生も協力…6カ国語まで対応の動画でサポート
今、日本語での勉強が難しい子どもをサポートする、多言語の学習動画が需要を伸ばしています。
作っているのは、京都教育大学の黒田恭史教授(55)です。
【京都教育大学・黒田恭史教授】
「緊急事態の時は、困難を抱える子供たちが非常に難しい状態になる。言語の問題と内容レベルの問題と、2つのハードルが子どもたちにはできてしまいますので、非常に学習が困難な状態になってしまいます」
黒田教授が作成した動画は6か国語まで対応した、小・中学生の算数と数学です。
動画作成に協力しているのは留学生です。
【黒田恭史教授】
「日本語版を韓国語に翻訳お願いします。」
【韓国から立命館大学に留学しているキムさん】
「かしこまりました~」
この日は算数の韓国語バージョンを作成中。
日本語を訳して、韓国語のナレーションも入れていきます。
【キムさん】
「私も日本語の勉強をしたのですが、やはり漢字の問題が私にもあります。日本語ができないからほかの科目を勉強できないという問題を、少しは解消できるのではないかと思って」
学習内容を理解しながら、日本語も学べる
これまでに作られた動画は約1800本にのぼります。
日本語と外国語の画面を比較すると、構成はそっくりそのまま。
両方の言語の映像を見ることで、自分のルーツの言語で内容を理解しながら、同時に日本語を学ぶこともできるのです。
【黒田教授】
「普段の授業でついていけない子供たちであったり、外国籍の子どもたちであったり、そういった多様な子供たちになんとか応える、そういったシステムを作りたいなという思いで作ってきた。それが今回の新型コロナウイルスの影響の中でも役立っているんじゃないかな、と考えています」
学習に大きな不安を抱いていたニーちゃんとホアさん親子。
ベトナム語の動画を実際に見てみると…
【ニーちゃん】
「え、どういう意味~?」
この動画だと、お母さんのホアさんも、ベトナム語で教えてあげることができました。
――Q:どっちが教えやすいですか?
【ホアさん】
「ベトナム語。
【ニーちゃん】
「…のほうが教えやすいって言ってる」
新型コロナの影響で、浮き彫りとなった教育での「言葉の壁」。
悩む子どもたちへの支援はこの先も続いていくのでしょうか。