気が付けば5月も後半となり、気温30度を超える日も珍しくない。カリフォルニアの空はますます青く、何をするにも最高の季節になってきた。それだけに、外出制限が続く今の状況の異常さ、苦しさが際立つように感じる。アメリカは今や世界最大のコロナウイルス感染国だ。
【自宅待機を呼び掛ける、ロサンゼルス市内のウォールアート】
ハリウッドから「人が消えた」
全米の州として初めてカリフォルニア州に「外出禁止令」が出されてから2カ月以上が経った。今もほとんどの会社員が自宅勤務を余儀なくされ、観光客でにぎわうはずのディズニーランドやユニバーサルスタジオも閉鎖が続き、ハリウッドやサンタモニカの街もひっそりとしたままだ。
【人が消えたハリウッドの街(4月19日撮影)】
もちろん取材や食料品の買い物、公園の散歩など時々外には出ているし、そこに許可証がいるわけでもない。それでも、人と会うことが制限される生活がこれほど苦しいものだとは思わなかった。仕事も娯楽もほとんどが人と会うことで成り立っていたのだと痛感している。
【ビバリーヒルズ・ロデオドライブの高級ブランド店は入り口が板で封鎖されていた。(4月14日撮影)】
現地時間5月24日までに、アメリカ全体の感染者は約160万人、死者は約9万7000人(ジョンズ・ホプキンズ大学調べ)。
全米最多4000万人の人口を抱えるカリフォルニア州は、生活スタイルや人口密度など様々な要因があるもののニューヨーク州と比べて比較的感染増加を抑えられたと言われているが、それでも感染者は約9万2000人、死者は約3700人にのぼる(5月24日現在)。
感染者数の増加ペースはかなり低下傾向だが、今も一日に数十人が亡くなっていて経済再開への苦しい道のりが続いている。
【商品が撤去された高級ブランド店(4月14日撮影)】
ロサンゼルスの状況は…
現地時間5月24日現在で、以下のようになっている。
▼経済活動
・スーパー、ガソリンスタンド、ドラッグストア、行政機関、医療機関などの“エッセンシャルビジネス”
⇒営業中
・レストランやカフェ
⇒テイクアウトか配達のみ。店内での営業は禁止
・衣料品店、生花店、スポーツ用品店などの一部業種
⇒店頭での受け取りか配達のみ。
・美容院やネイルサロン
⇒休業中
・ゴルフコースやハイキングコース
⇒マスク着用などのルール付きで解禁
・ビーチ
⇒サーフィンや水泳などは解禁。砂浜で日焼けなどのためにくつろぐのは禁止。マスク着用義務。駐車場の多くは閉鎖中。
【スーパーに入るにはマスクの着用が義務。(4月10日撮影)】
▼主な観光地
・ディズニーランドやユニバーサルスタジオなどのテーマパーク
⇒休業中、再開は未定。
・ハリウッド
⇒チャイニーズシアターなどの劇場や土産物店は全て休業中。
・サンタモニカ
⇒ルート66の標識があるサンタモニカピアや遊園地は休業中。
・ベニス
⇒ビーチはオープン(サーフィンや遊泳は可能。砂浜でくつろぐことはNG)。
※ラスベガス(ネバダ州)
⇒全カジノホテルが休業中。客室数やカジノの席数を減らすなど安全対策を取り6月4日の一部再開目指す。
※ハワイ
⇒ショッピングモールやビーチなどは再開も日本からの直行便は全て運休中。「入島者は到着後14日間隔離」の制限が継続中。
▼主なプロスポーツ
メジャーリーグ
⇒春のキャンプが中断後、今シーズンまだ開幕せず。試合数を減らし無観客で7月上旬の開幕を模索中。
NBA
⇒3月にシーズン中断。7月下旬にフロリダ州のディズニーリゾートに全チームを集めての再開を模索中。
NFL
⇒今の所予定通り9月に開幕予定。
▼今後の主なイベント
アップルの新製品発表会(9月)、グラミー賞やアカデミー賞の授賞式(1~2月)、CES(1月)
⇒全て不確定
【ハリウッドの恐竜もマスク姿で手洗いを呼び掛け】
大統領選を前に…抗議活動も
アメリカは11月に大統領選挙が控えている。今の所、日程が変わるようなことにはなっていないが、事態は益々混沌としてきた。以前は好調な経済を背景にトランプ大統領優位という見方が強かったが、コロナウイルスによって経済は失速、アメリカではここ9週間で失業保険の申請件数が3800万件を超えた。焦りを見せるトランプ大統領は時に専門家の意見を無視して経済再開を強行しようとする。
それに呼応するように、「外出禁止令を早く解除しろ」と訴える抗議活動が全米で巻き起こり、特にカリフォルニア州など民主党知事の州で激しい。そこでは群衆がマスクをせず密集して大声を上げる恐ろしい光景が繰り広げられているのだが、集まった人たちの中にはやはりトランプ支持者の姿が目立つ。そうした抗議活動が起こる度、カリフォルニア州知事が「コロナウイルスは民主党ウイルスでも共和党ウイルスでもない。制限の解除は政治的理由ではなく、科学とデータに基づいて行う」と訴えるのがお決まりとなっていて、今のアメリカという国をよく表していると思う。
ロサンゼルスでは、制限緩和の次のステップ「レストランの店内飲食」などの再開に進むのが7月4日頃だと言われていて、その先の「完全解除」がいつになるかは全く見通せない状況だ。アメリカでは最近、スーパーでマスクをしていなかった客に注意した警備員が銃で撃たれる、といった心配な事件も度々起きている。長引けば長引くほど、恐ろしさが浮き彫りになるのはウイルスより人間の方かもしれない。
カンテレ「報道ランナー」 FNNロサンゼルス支局リポート