休業要請が段階的に解除される一方で、学校は部分的な登校はあるものの、5月末までの休校が続いています。
そんな中、ずっと「再開」に向けての準備を繰り返しながら過ごしている教師たちを取材しました。
準備に追われていた教職員
池田市立北豊島中学校。5月14日、初めて分散登校が行われました。
【大坪真哉校長】
「みんなも、これから不安やしどうなるかわからへんけど、 今をしっかり生きてほしい。今どう生きるかがすごい大事」
終業式と入学式以来、生徒のいない日々が続いていました。
5月1日、教職員は仕分け作業に追われていました。
当初7日の登校日に渡す予定だったマスクや図書券、課題のプリント…登校が中止になったため家庭訪問で配ることにしたのです。
2年生の学年代表、湯井健史先生は度重なる変更に戸惑いながら、今できることは何か考えてきました。
【湯井健史教諭】
「子供達を直接顔見てないので。先週電話はしたんですけども、やはり顔見ないとどうしてるのかわからないので。会っていいのかな?というのもあるんですけど、早く顔見たいな、というのもあります。本当に何がいいのかわからない。」
【教師】
「今、5月7日からの分作ってもらってるけど、結局2週間くらいまた延長で作り直してまた…」
「楽しい行事全部削って授業だけになる。となると、学力保証してるけど、楽しくない学校生活というか。」
度重なる休校の延長で見通しを立てられなくなっていました。
「報道」で先に知る…現場教師の苦悩
【安倍晋三 首相】(2月29日)
「来週月曜日から春休みに入るまで臨時休業を行うよう」
【萩生田光一 文科相】(4月28日)
「中学3年生や小学校6年生については、段階的な再開など」
通知はいつも突然降ってきました。
【大坪校長】
「安倍首相の一斉休校についても、報道で『休校します。』え?まじで?メディアが先行ってそっから、僕らに下りてくるんで、僕らの方が遅いんですよ。」
【教師】
「まだ6月の行事予定も組めない?」
【大坪校長】
「そう。全く組めない。1週間刻みでしか学校現場に情報が入ってこないので。先生的に一番しんどいと思う」
5月7日、この日行う家庭訪問を前に職員会議が開かれました。
翌週から分散登校が始まるという情報も入っていました。
【大坪校長】
「多分ですけど、来週の後半あたりで分散登校という形になると思いますと。ただちょっと変わるかもしれませんけどと、お伝え願えれば」
【湯井先生】
「答えられないのが…『来週も分散登校予定して、15か14に必ずありますとか言えたらいいが。ある予定にもしてるがもしかしたら…』と含ませつつ言わないといけない。ずっと今までもそうだったので、ああまたかというのはあります」
1カ月でも…家庭訪問で感じる生徒の成長
<家庭訪問で>
【湯井先生】
「ご無沙汰してます。どうですか様子は?めっちゃ伸びてきましたね。早い。お兄ちゃんもうちょっとゆっくりやったのに」
【生徒の母】
「お昼寝するようになってしまったので」
【生徒】
「朝まで起きてて、そっからずっと起きておこうと思うけど、昼で眠気がきて。その前にちょっと勉強してるから、偉い」
【湯井先生】
「偉いね。確かに」
【生徒の母】
「『寝なさい』と言っても結局みんなストレスたまるだけなので、もうなるようにしかならないかな」
【湯井先生】
「起きても何かせなあかんというわけじゃないし。どっか行かなあかんわけでもないので」
<帰りの車中で>
【湯井先生】
「明らかにでかくなってる」
【教師】
「声も低くなって」
【湯井先生】
「大人の一年と子供の一年って、全然違うから。今日顔見れてよかったな。先生って子供らおらなあかんな」
「学校の外」で飛び交う議論、子供たちをどこへ導くのか
5月に入り、大阪府の吉村知事は矢継ぎ早に今後の学校について方針を示しました。
【吉村洋文 大阪府知事】
「5月31日までのこの間は臨時登校日として週に1回から2回程度。6月のチャレンジテストは中止。やり方はそれぞれの学校にまかせる。とにかく結論として6月末までにオンライン授業ができるように、やるように」
【教師】
「オンライン授業って具体的にしそうなんですか?急にモノは来て、オンライン授業進めてくださいとなるとそこの整備というか」
【大坪校長】
「市は5月下旬から6月中旬の間にオンライン授業をできるように整備したいと言ってる」
【教師】
「ネット環境が、家によって違うし、ほんまにどうなるんやろ」
【教師】
「高速回線とかいるらしいんですよ。それを市はどこまで配備を考えてはるんかっていうのは?」
【大坪校長】
「(市は)なんとかする」
【教頭】
「家庭によって、使い放題のところと、ギガの制限すごい抑えてる方やったら、ホームページ見るくらいならいけるけど、動画配信されたら現実味ない。高い“授業料”(通信料)を払って(オンライン)授業を受けろという、教育の格差をほんまに助長することになると思うので」
【大坪校長】
「こうなったら政治合戦になってきてるからさ、今。誰が子供のこと本気で考えとるねんという話や。生徒来ないことにはできへんて」
オンライン授業の大号令が家庭の経済力やネット環境の違いでさらなる格差を生むのではないか?家にいる生徒たちの実情を案じています。
北豊島中学校では5月14日から週に1~2回分散登校することが決まりました。
感染リスクを減らすため、初日に組んだ授業時間はわずか30分です。
【教師】
「初日は延びることは絶対避けたいな。心配してるやろうし」
【湯井先生】
「多分元気なんやろうけど。来てる時でさえ、『お前大丈夫か?』みたいな生徒はいたので。家庭環境が変わってしんどくなる子とかいると思う」
【教師】
「リラックスさせてあげたいよな。張りつめてるもんあるから」
5月14日の時間を分けた分散登校。
全学年の生徒が学校に来るのは約50日ぶりです。
マスクの下で多くの笑みがこぼれていました。
当たり前だったかつての学校に戻れるのか?
それとも学校そのものが変わっていくのか?
議論が飛び交うのは学校の外です。
その答えは今を生きる子供達をどこに導いていくのでしょうか?