日々状況が変化する新型コロナウィルスの感染拡大で、情報入手や社会的距離の確保に 苦労する「視覚障害者」。
現状を取材しました。
感染拡大が…思わぬ場面で「弱視の女性」を悩ませる
目を凝らしてパソコン画面を見つめる女性。
その画面は、色や文字が少し変わってます。
女性は京都市に住む小林由紀さん(47)。
弱視でほとんど目が見えません。
【小林由紀さん】
「私は弱視なので、画面の色と文字の大きさを変えるのと音声を併用して使っています。長い情報を聞く時は音声。そうでもない時は目で見たり」
週の半分ほどは会社に出社していましたが、新型コロナウイルスの影響で今は在宅ワークが中心です。
日々更新される身近な情報をAIも活用してなんとか得ようとしています。
【小林さん】
「アレクサ!新型コロナウイルスの最新情報を教えて」
検索された情報が、音声で読み上げられますが…
(音声ガイドの読み上げ)
『新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、”東北”と”新潟”の知事は…』
小林さんのお住まいは「京都」。
欲しい「身近な情報」は思うように手に入りません。
【小林さん】
「自分で不安になって調べるといろんな情報が出てきすぎるので。本当に大事な情報が伝わっているか自信ない」
健康管理に必要な体温測定。
液晶画面の数字を読むのが難しいため、スマートフォンの文字の読み上げアプリを使いますが…。
(アプリ音声)
「しょうの598、じょうの559…」
【小林さん】
「(正しく)言ってくれないですね…。出来る時もあるんですけど」
変更告げる「張り紙」も…存在にすら気付けず
近所へは1人で出かけることも多い小林さん。
家から一歩外に出ると、情報を得るハードルはさらにあがります。
【小林さん】
「この間、(銀行で)窓口で払い込みをしようと思ったんですけど、窓口がなくってATMしかなくて。久しぶりに来た銀行だったのでどうしたんだろうと思って」
営業時間の変更を知らせる張り紙が読めませんでした。
紙の存在にも気付けませんでした。
【小林さん】
「自分がこの情報に繋がれていないということに気づかないことが多いんだろうな。何に気づいていないか気づいていないので」
介助も…接触しないよう「ロープ」でお願いを
視覚障害者にとって問題は「情報」だけでなく、人との適切な距離、「ソーシャルディスタンス」にもありました。
【近所の男性】
「こんにちは。元気そうやね。どこまで?買い物?」
会うと必ず声をかけてくれるご近所さん。
これまで小林さんが肩や肘に掴まって手引きを受けることも多かったということですが…。
【小林さん】
「普段マラソンに使っている”きずな”を持ってきたんです。これだったら、手引きしてもらいやすいかなぁと」
ロープを使った手引きで、「ソーシャルディスタンス」を取りながら、体が接触しないよう配慮するようになりました。
さらに買い物でも大きな影響が出ています。
【小林さん】
「触りながら確かめることもしていたけど、それがすごくしにくくなってしまったり…」
小林さんの手元を見ると、使い捨ての手袋が。
買い物をして、直接商品に触らないよう気を付けています。
【小林さん】
「(ラベルの)「小」という字が見えました。228円も見えたので、とりあえず買うことにします」
そして、レジを並ぶ時は前の人との2m距離をとることが一般的になってきましたが。
【小林さん】
「ごめんなさい。すいません…。もしかして並んでますか?」
どれだけ気を付けても、対応が難しい問題があるのです。
さらに、距離を取るのが難しい現状から、移動支援のプロである「ガイドヘルパー」の多くが、感染防止のためサービスを停止する事態になっています。
『近寄るな』と怒られるのは非常につらい
日本視覚障害者団体連合には、悲痛な声が多く届いているといいます。
【視覚障害者団体連合・竹下義樹 会長】
「コンビニやスーパーで『近寄るな』と怒られるのは非常に辛いこと。3密を避けろといわれる中で、ガイドヘルパーが活動できなくなった現状があって、視覚障害者の日常生活がままならないという状態が起こっている。」
この状況を受けて日本視覚障害者団体連合は厚生労働省に要望書を提出。
その結果「移動支援」だけが認められていたガイドヘルパーが、特例として買い物を代行できるようになりました。
【小林さん】
「何をしてもらえるかというよりも、自分になにが出来るかを考える方が前向きに乗り越えられる。お互いになんとかならないかなと考える機会になれば」
「届かない情報」「見えない距離感」に安心できない日々が続きます。
SOSの声に気づくことで、誰もが救いの手を差し伸べられるはずです。