新型コロナウイルスの「重症患者」を受け入れている大阪市立大学医学部附属病院が、関西テレビに、病院内部の映像を公開しました。
先が見えない闘いが続く医療現場の「実情を知ってほしい」という思い、そして感染の有無に関わらず私たちに関わる「医療崩壊」の危険性です。
最悪のシナリオ…「2つの医療崩壊」
厳重な感染症対策を施された救急車が到着しました。
運ばれてきた男性は、別の病院に入院していたものの、急激に症状が悪化。呼吸がままならず、人工呼吸器を装着しています。
大阪府内では、集中治療室を持つ14の病院が重症患者の治療にあたっていて大阪市立大学医学部付属病院もそのひとつです。
重症患者のための病床は、各病院であわせて188床で61床が埋まっています。(5/1午後6時時点)。
【医師】
「今ECMO(人工心肺装置)を導入する方向で検討しています」
【救急救命センター長 溝端康光医師】
「了解しました」
刻々と変化する容体を管理する医師と看護師。
最前線で受け入れに対応する溝端医師は、懸念される医療崩壊について、「2つの危機がある」と指摘します。
【溝端医師】
「新型コロナ患者への対応における医療崩壊と、普段から行っている医療を継続していくことが出来なくなるという医療崩壊。その2つだと思います」
人員確保のため…一部の治療の「制限」も
1つ目に指摘した「新型コロナウイルス患者の治療の崩壊」。
病院内部の映像からも、それが起こり得ることだとわかります。
明らかなのは、患者に関わるスタッフの多さです。
例えば、普段の集中治療室では、2人の患者に対し1人の看護師がつきますが、新型コロナウイルス患者の場合、4倍にあたる4人の看護師が必要です。
市大病院では、人手が足りないため、他の診療科から応援を呼んでいます。
【溝端医師】
「人を集めてくるためには、一部の病棟を閉じたりあるいは一部の治療を制限したりといったことが必要になってくる。人を含めた医療資源には限りがありますので…」
マスクや防護服は、集中治療室に出入りするたびに消費するため、医療物資も不足しています。
【溝端医師】
「N95マスクはやはり数が少なくなっています。マスクに名前を書いて、滅菌できる装置の中にいれて、再利用するといったことで5日間程度はひとつのマスクを持たせることができるようにしています」
こうしたヒト・モノを含めた医療資源の投入は、2つめの医療崩壊「通常の医療の制限」につながり、それはすでに現実に起きつつあります。
脳卒中、心筋梗塞、高度ながん治療など…できなくなる恐れも
市大病院は「第三次救急機関」として、一刻を争う人の救急治療を担ってきましたが、現在受け入れを取りやめています。
さらに続けば、大学病院として行ってきた専門的な治療も制限せざるを得ません。
【溝端医師】
「具体的に言いますと手術の数は通常の7割程度に抑えてますし、必要とする医療を十分に受けることができないという状況が起こる可能性があります。例えば脳卒中や心筋梗塞に対する救急医療が十分にできない、あるいは高度ながん治療等が実施することができないという風なことがあります」
市大病院では、普段は、安全上の観点から病院内の撮影などは許可していませんが、奮闘する医療スタッフのために、今回、映像の公開に踏み切りました。
【溝端医師】
「常に感染の危険性を心配しながら医療を行っていますので、普段と同じような治療内容を行っていても、少しずつストレスが溜まってきているのではないかなという風に思います」
【溝端医師】
「我々はコロナ患者さんの治療をしないといけないという気持ちの中で、自分のストレスに気づかなくなってしまっている。ある時期になると、それが大きく影響が出てしまうのではないか。特にスタッフの中にそういった影響が出てしまわないかということは非常に心配している」
「2つの医療崩壊」を起こさないために
医療スタッフが倒れ、大阪で“2つの医療崩壊”が起こることが、最悪のシナリオです。
だからこそ溝端医師は、繰り返し強調しました。
【溝端医師】
「GWの間も出来るだけ三密を避けていただいて、外出を自粛頂いて、ぜひ医療崩壊が起こらないように、医療者とともに皆さんと協力して、コロナ流行を戦っていけたらと思います」