外出自粛が呼びかけられる中、中高年や子育て世代から注目を集めているのが…
【薄田ジュリア リポート】
「実はこちら。マスクの布なんですが、今、こういった様々な色や柄を使ってマスクを作る、手芸に注目が集まっているんです」
マスク不足の中、ようやく見つけたマスク。
でも、買うのに躊躇してしまったことありませんか?
【手芸店を訪れた女性】
「(近所の店で)60枚が5000円くらいだったので、それが果たして安いのか高いのかわからなくなってきてて…」
「それなら作ってしまえ!マスク作りが大人気」
ある調査会社のデータによると、手芸用品の需要が、前の年の同じ時期と比べ3月下旬には約2倍。4月に入ると約3倍に急増しています。
大阪府内にある手芸用品の専門店を訪ねてみると…
【手芸用品専門店の担当者】
「4月7日に緊急事態宣言が発令された翌日から、そこからさらに伸びたという感じです。今はマスク作りに関するものが多くでています。ガーゼとか、マスクのゴムとか。マスク(関連商品を求める客)が9割くらいいらっしゃるんじゃないか」
【手芸店を訪れた女性】
「マスクを作ろうと思いまして。あまり暗い(生地)もどうかと思って、少しかわいく作れたら気持ちだけでも少し上がるかなと思って」
【手芸店を訪れた女性】
「手芸は今までやったことがないんですけど、チェレンジしてみようかなと思って。ガーゼの布がなかなか売り切れてて無かったので」
この時店内では、マスク用に使うゴムの在庫はわずか7本。ガーゼは品切れ中でした。
そこへ店員がガーゼの入荷を知らせます。
【店員のアナウンス】
「本日ですね、Wガーゼの白色、1家族様限定50cm、入りました!」
瞬く間に売れていきます。
そんな中、大阪市西区のアパレル会社「ノーズ オブジェクト」が、4月、マスク作りの材料が揃った子供用のマスクキットを発売しました。
【薄田ジュリア リポート】
「デザインの種類とか多いですね。1枚1枚すごいかわいいんですけど。こういう水玉模様とかギンガムチェックとか。これまで白で無地のものが多かったんですけど、こういう柄のものでオシャレを楽しむっていうのも、今アリですよね。本当にかわいい…」
子育て世代に向けた婦人服を中心に製造・販売しているこちらの会社は、新型コロナウイルスの影響で休業中。
そんな状況でも、「子育てママを応援できないか?」「アパレル会社だからこそできることはないか?」そう考えて、余った生地を使い子供用のマスク作りに乗り出しました。
――Q:お客さんからの反応は?
【ノースオブジェクト・後藤洋美店長】
「(お客さんから)元々子どものマスクの数が少ないということがあったので、作れるのがいいなということとか。なかなか上手く作れないという声があったので、このキットをきっかけにおうちで作るのが楽しみです、という声もいただいています」
最初に作った30枚はすぐに完売したそうですが、4月27日から、この会社のグループのパン屋で限定60枚を再び販売しています。
そして、マスク作りにはかかせないのがミシン。
いま大ヒットを生み出している会社が大阪市生野区にありました。
初心者でもOK!注文殺到の簡単ミシン
【アックス ヤマザキ 山崎一史社長】
「こちらが先月発売したばかりの『子育てにちょうどいいミシン』です。これが予想を3倍上回るような売れ行きで…」
アックスヤマザキが製造・販売する「子育てにちょうどいいミシン」。
難しい機能を省いたシンプルな動作、本棚にも入るコンパクトな作りに1万円という手ごろな価格。
また、子どもが誤って触らないよう針にガードもついていて、子育てママに人気です。
さらにイマドキのニーズにも応えています。
【アックス・ヤマザキ・山﨑一史社長】
「スマートフォンでQRコードを読み込めば、専用の動画サイトに飛びまして、その中で例えば、マスクの作り方を見ることができます。これに針ガードとして使っていたものを、スマホスタンドにして、動画を見ながら、ミシンを使うことができます」
実はこのアイデアは、社長が“奥さんがレシピの動画を見ながら料理をする姿”を見て思いついたんだそうです。
――Q:ヒントはすべて奥様が?
「大感謝です」
生産が追い付かないほどの人気なんだそうですが、たくさんのアイデアと、それを実現する技術が詰め込まれたこのミシンが生まれた背景には、まるであの有名なドラマのような話がありました。
特許を守れ!下町企業VS海外大手企業
急激な円安の影響で赤字に転落した5年前、父親から事業を引き継いだ山崎社長が、業績をV字回復させるきっかけとなったのが、このこども用ミシンです。
【アックス・ヤマザキ・山﨑一史社長】
「これは市販の毛糸を使っていただくんですけど、本当に準備が簡単で、1本の毛糸をここに引っ掛けて…すっとこれだけで準備完了です」
ミシンは通常、上糸と下糸を使いますが、このミシンは1本の毛糸を引っ掛けるだけ。
さらに、5本の特殊な針を守るカバーがついているため、大人がそばにいなくても、安心・安全に子供がミシンを使うことができます。
【アックス・ヤマザキ 山﨑一史社長】
「目指したのは『究極のミシンごっこ』ですね」
毛糸を使って生地や紙も縫うことができるというこの会社オリジナルのこの技術。「特許」も取得したのですが、なんとこの特許が海外の大手玩具メーカーから狙われたのです。
【アックス・ヤマザキ 山﨑一史社長】
「(2018年に)ある大手企業からこのミシンの特許を使いたいというような依頼を受けまして、私共としてはこのミシンを自分のアックスヤマザキとして販売したかったので、お断りしたんですけど…正直、ウチがその要請を断るとはおそらく思ってなかったと思うんですけど、それで驚かれたようで…。結果的にはウチの特許を潰しにかかるといいますか…」
使用要請を断られたことで牙をむき、その特許を無効にしようとする訴えを特許庁に起こした海外企業。
【アックス・ヤマザキ 山﨑一史社長】
「正直、アリと象って感じでしたね」
大企業から派遣された知的財産のエキスパートたちは、「すでにある技術と同じで特許は無効だ」と主張しましたが、1年間に渡る争いの末、特許庁からその新しさや有効性が認められ、特許を守ることができたのです。
まさにドラマを地で行く「下町ミシン」!!
従業員20人に満たない小さな企業が守り抜いた技術への思いとプライドが、大ヒットを生み出す秘訣なのかもしれません。
【アックス・ヤマザキ 山﨑一史社長】
(子どもが) 嬉しそうな顔で作品を作って、それを見た親御さんがその顔を見てなんとも言えないような嬉しそうな顔をする姿を見た時に、これを作ってよかったと思いました。