今年2月27日。
【安倍首相】
「全国すべての、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校について臨時休業を要請します」
学校が一斉に休みになったことに伴い、大きな影響が出た給食事業者。
そんなとき…
「大根ほしい!」「大根何本?」「1本!」
余った給食用の食材を格安で販売したところ、長蛇の列ができ、売り切れ続出。購入することで困っている事業者を支援する“応援消費”が全国各地で広がりを見せています。
【薄田キャスター】
「いい香りがしますね、ここでパン焼いてるんですか!」
【原田パン 原田富男社長】
「ちょうど焼けてでてきましたね」
神戸市長田区にある「原田パン」。
市内の給食を受け持つこちらでもピンチをお客さんに救われたといいます。
――Q:学校給食は何校分ぐらい受け持っているんですか?
【原田パン 原田富男社長】
「今、神戸市の方が29校受け持っていまして、従業員に払う給料がなくなるなと困ってしまってね」
神戸市で休校が始まった3月2日から春休みまでの約2週間。県から支給される材料でパンを作る加工賃、400万円以上が入らなくなりました。こちらではパンのほかにごはんも提供していますが、工場は今も止まったまま。給食に関わる従業員には休んでもらっています。
そんな状況の中で…
【原田パン 原田富男社長】
「テレビとか新聞の報道とか見られて、お客様がわざわざ電話かけていただいて、『今(近くの)高速長田の駅にいるんだけどもどうして行ったらいいの?』ということでかかってきましてね。地元のお客さんでもたくさん来られましたしね」
状況を知った人たちが駆け付けたおかげで、お店の売り上げはコロナショックの中でも、去年の3月とほとんど変わらなかったそうです。
【お客さん】
「ちょうど出産したときに病院でも原田のパンが出てて、ニュースで原田のパンが出てたのを見てたので普通の買い物で少しでも助かるなら嬉しいですね」
【お客さん】
「小学校でパン食べてました。(パンを買って)自分が助けることができてるなら嬉しいし、今後も協力していきたいと感じます」
――Q:ここのパン好きですか?
「好きです」
【原田パン 原田富男社長】
「本当に我々からしたら嬉しい限りで、こんなに心の温かい人がたくさんいらっしゃるんだなあとよくわかりました。」
一方、感染の拡大による移動自粛で深刻な打撃を受けている観光業。
ふるさと納税サイト「さとふる」では、新型コロナウイルスが終息したあとに観光を楽しんでもらえる体験型の返礼品を用意することで、事業者にいまお金が入る仕組みを作っています。
そんな中、山口県にある「てしま旅館」が提供しているユニークなサービスが話題を呼んでいます。
【薄田キャスター】
「その旅館から豪華なふぐ料理が届くんですが、これをただ食べるだけではなくて、こちらのVRを使うことによって、まるで旅館にいる気分を味わいながらいただけるんです!」
スマートフォンを市販のゴーグルに取り付けて映像を見ると、まるでその場所にいるかのような臨場感を味わうことができるVR。
ちなみに私が見ているのは…
【薄田キャスター】
「この右手にお庭が広がっていて、こちらには小上がりの畳の部屋があります。」
【薄田キャスター】
「家のお風呂にいるはずなんですけど、気分は大浴場にいる感じですね。目の前には広いお庭が広がっています!」
宿泊のキャンセルが相次ぐ中、『お越しいただくのではなく、こちらから出向きましょう!』とVR映像の提供を始めたんだそうです。
【薄田キャスター】
「(ゴーグルを外し)…うわ、現実だ!」
たっぷりと旅館気分に浸ったあとは、お料理!
下関から届くとらふぐをおよそ2日間熟成させることでうま味を凝縮した旅館自慢のふぐ会席です!
【薄田キャスター】
「場所としては普通の家のリビングなんですけど、なんかこう旅館にいる気分を錯覚しながら味わえるっていう不思議な感覚なんですよね」
始めてから約1か月で、50組を超える注文があったそうです。
【てしま旅館 3代目 手島英樹さん】
「購入されるときのメッセージに『頑張ってください』と皆さん書いてくれるんですよ。本当に待っててもお客様が来れる状況じゃない中でこうやって私たちの商品を消費してくださるというのは、本当に命がつながっている感じがします」
そして、行事やイベントの自粛で苦境に立っているのが花の業界。
ここでも応援消費が広がっています。
【街の人】
「花は買う。花屋さん結構消費が少ないって聞いたんで、週一回ぐらい買うようにしています」
そんな中…
【薄田キャスター】
「定期的にお花が自宅のポストに届くサービスを利用されている方が今、増えているそうなんです」
季節に合わせた花を自宅に定期的に届けるサービス、『ブルーミーライフ』。
3月、生花店の売り上げを少しでも助けたいという思いから、1万本の花を買い取って、プレゼントするという企画を実施したところ、応募が殺到。利用者も大きく増えたそうです。
【Bloomee LIFE(ブルーミーライフ) 武井亮太社長】
「今までお花を買ってない人とか、お花そんな興味ないよっていう人も、今のお花屋さんの状況を多くの人に知ってもらいたいなっていうのがあった」
大阪市内にある生花店「グラシア」はBloomee LIFEの依頼を受け、サービスの利用者に実際に花を届けています。
【グラシア 西浦慶子社長】
「お花は私自身も色がすごい大事やと思ってるんです。家に飾ったらどんな感じに見えるのかなとか、どんな器に入れられるのかなとか、そういうことをイメージしながら組み合わせてます」
――Q:どれぐらいのお宅に発送されてるんですか?
「多い時で100件を超えたりすることもあるかな」
定期便サービスの利用者が増えたことで3分の1ほどに落ち込んでいた売り上げもアップ。さらに、SNSに寄せられるメッセージなどから改めてやりがいを実感することもできたそうです。
【利用者のSNS】
「お花屋さんも大変ってニュースで見て始めてみました」
「気分がどうしても沈みがちな今、嬉しい企画で心が和らぎます」
「お花からパワーをもらって、家時間を乗り切りましょう」
【グラシア 西浦慶子社長】
「全国の皆さんって言ったら大層かもしれませんけど、本当に花屋を応援してくださってるんだなっていうようなメッセージとかで感じることもあるので。私たちも逆に皆さんを元気にできるような、お花で何か伝えていければいいかなと思います」
人と人をつなぐ応援消費があたたかな好循環を生み出しています。