中国は、政府発表で国内の新たな感染はほぼゼロになった。湖北省武漢の封鎖も4月8日に解除が決まった。上海の街も地下鉄の混雑も戻り始め歩く人の数も増えている。国内の観光地も続々と再開し人の流れが戻り始めている。
警戒は緩まず…”無症状感染者”が問題に
ただ、警戒は緩まず住宅地やマンションの出入りの規制は続く。配達の人の出入りは身分や健康状態を確認し許可されるようにはなってきたが。アプリで行動歴から感染リスクを示すQRコードを見せないと入れない施設も多い。(ビッグデータで行動した場所が分かるようだ)
街ではマスク着用と体温測定が求められるのは変わらない。専門家はマスクを外せるのは順調にいき4月末と話す。人々がマスクをするのは無自覚に他人にうつすリスクを避けるためだ。“無症状感染者”が問題になっている。中国政府は2月中旬、“検査で陽性でも無症状の人は、感染者と数えない”という指針を出した。感染を広げる確率が低いという理由だ。このところ国内の感染者発生がゼロだが、実際はまだいるのが現実だ。
武漢では新規感染ゼロになったと当局が喜んで発表する中、住宅街で「新たな感染者が出たので注意」との張り紙が出たり、ネットに「●●住宅地で感染者が」との情報も出回った。当局はすぐに調査し、一部は既存の感染者だなどとしたが、あるケースは「陽性だが無症状者は数えない指針に従う」とし、陽性だけど感染者と数えないとした。
香港のサウスチャイナモーニングポストは「2月末時点で中国は43000人以上の無症状感染者を計上していない」と伝えた。感染者はもっと多いということになる。上海でも、新たな感染者がゼロと言われても実は結構いるのか、と不安はある。日本でもそばに無症状感染者がいる可能性があるのは同じだ。
入国者への厳格な検査、自宅や施設での隔離も
安心できない理由はもう一つ。海外からの感染流入だ。中国政府の対応は日に日に厳しくなる。上海市は入国対応する空港を浦東国際空港に絞り「全員ウイルス検査」「全ての入国者は14日間の自宅か指定施設で強制隔離」としている(日本は一度、隔離対象から外れたが、また対象になった)。
到着し滞在国などを確認され各地区の施設に運ばれウイルス検査を受け、陰性なら自宅などに運ばれる。専用バスで防護服のスタッフが付き添う(ある意味VIP待遇)。知人の日本人親子は、到着し検査結果を待ち自宅に着くまで「25時間」かかった。
対象人数が増え、厳格に検査するため仕方がない面はある。例えば私の上海の自宅に、対象国に滞在歴がある家族が来たら私も14日間の隔離になる(避けるには別の場所に滞在するしかない)。日本も入国者に自宅待機要請をしているが緩いと感じる。“要請”で家族との接触に対し規制もない。家族に感染させ、家族が動き回れば他人にうつす恐れはある。
欧米などから…大量の帰国者であふれる空港
北京市は“首都防衛戦”の様相だ。海外からの航空便はいったん国内の別都市に着陸させ乗客のウイルス検査を行い、陰性なら同じ飛行機で北京に行ける。入国者全員のウイルス検査を行い、原則14日間隔離を求める。万里の長城など観光地も再開し始めているが、警戒は続く。
いま、感染が爆発的に拡大する欧米各国から、多数の留学生や働く人達が逃げるように中国に帰国している。北京空港が人で溢れたこともあり、この人混みで感染しそうという状態だ。14日隔離となるが、住宅地では続々と欧米帰りの人が現れ住民の不安も広がる。
いま国内の新たな感染者は大半が入国者だ。出発地はイギリス、アメリカ、スペイン、イタリア、フランス、ドイツ、などが多い。それだけ欧米の状況が悪いのだ。最近は、“アメリカ発日本乗り継ぎ上海着のアメリカ人“の感染が確認されるなど中国人にとどまらない。ちなみに上海市は乗客の感染が確定すれば、前後3列の乗客と客室乗務員も濃厚接触者として指定施設で隔離するようで、在上海日本総領事館は”巻き添え隔離“に注意を呼びかける。
中国政府も警戒する「帰国者からの二次感染」
不安なのは、帰国者からの国内での二次感染が出始めていることだ。中国政府はこの“第二波“を警戒し、隔離に従わない人には厳しく対応する。北京ではオーストラリア籍の中国系女性が隔離に従わずジョギングに出て、警備員などともめる映像がSNSで炎上。外資系企業の社員だったが解雇され出国を命じられた。
日本や欧米各国も、今後、海外からの感染流入にさらに警戒を高める必要に迫られる。人の流れがなくならない以上、感染者を送り出し、受け取って…、が続くことになる。国内をある程度抑えた中国がこの対応にかなり力を注いでいるのを見ると、感染収束は容易ではないと感じる。
欧米ではイタリアなど各国で医療崩壊や都市封鎖など、武漢の状況が再現されている。世界の大都市が武漢になるとは想像を超える展開だ。ただ、ここにいたってもマスクしない人は多く、外出したり、パリピの若者が遊び回るのを見ると、今後、感染収束が出来るのか不安だ。イタリアでは各地の市長が「毎日何百人も死んでいる!外出するな!」と呼びかける映像もみられ、中国でも話題だ。
中国は人権抑制もしながら強権的に抑えこんだが、中国人自身もかなり感染を恐れて外出を控えて集らず、身の回りの対策はすすんでしていた印象だ。高齢の中国人は、今もびびって高性能マスクをし、手を消毒し、私にも消毒を勧める。それまでろくに手も洗わないような生活をしていた人が、すっかりきれい好きになっている。
2月には日本の人から「中国、大丈夫?」と心配されたが、今思えばこっちの方が(良くも悪くも)対策が徹底し安心感すらある。アメリカやヨーロッパにいる人の方が心配だ。日本では、政府は旗を振るが市民の意識は中国人に比べ高いようには見えない。「自分は感染しない」「感染したらその時さ」「重症化しないでしょ」「インフルでもたくさん死ぬし、同じ」などの楽観的な声、危機感のなさは、世界中で都市封鎖している中、花見を楽しんだり繁華街で遊ぶ行動に表れている。沖縄で感染確認された10代の女子学生は、スペインに家族旅行に行き、帰国時に東京でウイルス検査の結果を待つ待機要請に従わず沖縄に戻ったというが、他人に感染を広げていたら中国なら拘束されてもおかしくない。
個人として「大丈夫」と言うのは自由だが、「命に関わるリスクがある高齢者にうつすかも」「どうあれ感染を収めないと、社会機能が麻痺し続けて経済への影響が拡大し、この先、自分自身や家族の仕事や生活にも影響してくる」という発想を持てないのか。もちろん政府の遅い対応や曖昧な対応に批判や不満はあるし、何でもかんでも自粛は良くない。ただ、現状はもはや感染を抑えて社会を元に戻す方向に進められるよう行動しないとどうしようもない状態だ。少なくとも個人個人が、自分が出来る範囲で“感染を広げない“行動をし、協力するしかない。
日本は”自粛疲れ“で気が緩んできたと指摘されている。中国でも徐々に社会経済活動が再開され、”気が緩んでいる“様子がなくはないが、彼らは日本の比ではない徹底した自粛や制限を2ヶ月やってきた。中国のネット上では「日本は五輪延期が決まり、本当の感染者数が出てきたね」「これから爆発するのでは」との声もあがる。首都圏で感染が爆発するかもしれない日本が気を緩めるのは早すぎる。
東京五輪は、この状況が続けば来年開催出来る保証はない。中国の専門家は来年春に小さなピークが来て感染は1~2年続く可能性もあると警鐘を鳴らす。ワクチン開発も1年で出来るか分からない。来年の今頃、また「感染は収まるだろうか」と悩んでいる可能性もある。